GARB DOMINGO今まで無かった上質の沖縄土産が見つかる店




しろくま、花、蝶、猫。
モチーフはどれもメルヘンチックなのに、
どこかぴりっと心地よい毒のある、
大人のウィットに富んだデザイン。
想像させるのは、
ハッピーエンドでは終わらない、
古い童話の挿絵。





「鹿児島睦さんの作品を最初に目にした時
何の知識もない状態で拝見したんですが
直感で
『あ、この方、沖縄にいたことあるな』
って。」


福岡在住の鹿児島さんは、確かに沖縄で活動していた時期があった。
店主の藤田さんのよみは、当たっていた。





「スーベニアショップ(お土産屋)」の名も冠しているが、
沖縄の一般的なお土産屋とは、その品ぞろえも雰囲気もまったく異なる。


例えばシーサー。
うるま市の山田義力さんの作品だ。
オーソドックスとは言えないそのユーモラスな形状は
「これ、ユニーク。良いかも。」
見ているうちにお土産だけではなく
自分用にも一対、どうしたって欲しくなる。


県産のうつわも、
沖縄風を過度に、全面的に押し出したような
「いかにも」なものはなく、
どこかに、さわやかに、沖縄を感じさせる、
自分でも使いたくなるものばかりが並んでいて、目移りしてしまう。


あれ?お土産を選んでいたはずなのに、
いつの間にか自分用のモノを選んでる・・・


「最初、旅行で沖縄に来た時に、
お土産を買うのが好きなのでいろいろ探したんですが、
欲しいと思えるものがなかったんです。」


沖縄は観光立県だ。
「沖縄風」な土産品は星の数ほどある。
しかし、
「沖縄の誇り」と胸をはって渡せるような、
上質で美しい土産品が
果たして巷に流通しているだろうか?


「地元の方が本当に欲しいと思うものでなければ、
観光客の方も買いたいとは思わないとおもうんです。
最初からお土産品として作られているものに、僕ははあまり興味が無くて。
沖縄で作られたものを、沖縄の方が
『プレゼント用に』なんて言って買ってくださると
本当に嬉しいですね。」





扱っているのは県産品だけではない。
機能美をあわせ持った世界各地のアイテムが、厳選されて並んでいる。


「良いもの」イコール「高額のもの」「有名作家のもの」とは限らない。
名だたる陶芸家の作品から、若手による新生ブランドまで、
様々なジャンルと作風の品が
藤田さんの目で見極められ、集められている。


客層はどちらにかたよることもなく、
沖縄県民と観光客が一緒になって商品を物色する。
どんな人でもここに来れば「連れ帰りたい」モノに必ず出逢える、
そんな店だ。



沖縄で生まれたジュエリーブランドLANTANA(関連記事:オランダ展 WHAT IS LIFE?



沖縄陶芸界の巨匠、大嶺 實清氏の作品も


確かな審美眼を持つ藤田さんは、
東京で建築デザイナーとして活動していた。
「子どもが小さいうちに、沖縄で子育てをしてみたい」と、
奥様の出身地である沖縄に移住を決意。


沖縄でも建築の仕事はできるのに、なぜお店を?


「もともと、建築の道を志したのは街づくりをしたかったからなんです。
街づくりにはもちろん人の流れが絡んでくる。
でも、実際に建築の仕事をしてみると、
人との関係性のほとんどは対クライアント、
建てた後はそのクライアントが中心となって人の流れができていくわけですよね。
都市計画に関わろうとしても、
結局、『建築ができるなら、建築を』と言われてしまって。
だから、遠回りするなら思いっきり遠回りしてやろうと思って(笑)
街づくりの中で何が重要かと言うと『発信する場所』。
自分の店がそうなれたら良いかなって。」


それって・・・意外と遠回りではないのでは?


「そうなんですよ、意外と遠回りじゃない。
でも、結構、勇気がいるんですよね(笑)
まあ基本、なんでもやりたがりなんで(笑)」



店舗前の並木道が気に入って場所を決めた。店の前のベンチで通行人も憩う


ガーブドミンゴは国際通りから少し奥に入った壺屋にある。


「道に迷った人が困って入ってくることが多くて(笑)
うちの店を知らずにふらっと入って来るのが逆に嬉しかったりします。」


土産物も扱う店をオープンさせるには少し不利では?と思う立地だが、
建築デザイナーとしての知識を活かし、
驚くほど綿密な計算のもと、場所を決めた。


まずは、人の流れを見極め、地理条件と人間の性質を元に
国際通りの中でも中心地となる「点」をもとめ、
その点を中心とした半径400mの円を描く。


「この円内であることが絶対条件、
あとは場所の雰囲気。
沖縄には並木道が少ないんですよ。
世界を見るとどこの国でも木がある所に人は集まります。
シャンゼリゼ大通りや、セントラルパークもそうですよね。
那覇の、とくに中心街にはそういう場所が少ない。
そういう条件を満たしている場所がここだったんです。」


藤田さんのもくろみは見事に成功したと言えるだろう。
並木道にはゆるやかながら確かな人の流れができ、
店の前に置かれたベンチに腰かけてゆったり休むひとの姿も見える。


さらに、店の外壁の色は


「お向かいのお店が黄色なので、
その補色である紫に。」


このオーナー、タダモノではない。





店舗の二階部分はギャラリーになっており、
アート作品の展示会が定期的に行われている。


最初からギャラリーを併設する予定だったのだろうか?


「ゆくゆくはギャラリーもやろうとは思っていましたが、
まさか最初からやることになるとは。
オープニングの日にやることが決まったんですよ。
それが、やってみたら意外や意外、評判で(笑)
最初は半年でやめるつもりが1年続き、
ここまできたらもうちょっと長く続けようかな、と。」


当初、二階は家具を販売するスペースにする予定だったが、
諸々事情があり、今はまだ実現に至っていない。


家具販売の予定が完全に無くなったわけでは無いんですよね?


「はい。でも・・・
流動的に、色々なことやりたいんですよね。」


やりたがりですね?(笑)


「やりたがりなんですよ~(笑)
ほら、街づくりするためにはね、色々知らないといけないから(笑)
本当は食べ物屋もやりたいし。
最初はね、ホテルやりたかったんですよ、本当は。」


やりたがりである。



「沖縄には切り紙好きな人、多いですよ」切り紙作家、矢口加奈子さんの作品





並べられている商品の持つ雰囲気や色合いはさまざま。
藤田さんが選ぶ作品に、何か共通点はあるのだろうか?


「うーん・・・作ってる人の人柄が良い、好き。
みんな物腰がすごく柔らかくて・・・
うん、人柄が良いっていうのが共通点(笑)
あとはやはり、長く使えるデザイン、カタチであるということ。
今の時代に合っていないというわけではなく、
時間を経ても古臭くならず、
逆に味がでてくる。
そんなものが多い気がします。」


作品に人柄が表れるように、
ガーブドミンゴにはやはり、藤田さんの人柄が表れている。
通りがかる人たちが、みな吸い込まれるように店内に入ってくるのだ。


目指しているのはどういう店の在り方なのだろう?


「脇役的なお店でいい。
散歩の途中に見つけちゃった、
そんな『ちょっとした店』になりたいですね。」


この藤田さんのもくろみは、
珍しく外れてしまったと言えるだろう。
ガーブドミンゴはすでに、
「ちょっとした」存在どころではなくなっているからだ。

写真・文 中井 雅代

 

GARB DOMINGO(ガーブドミンゴ)
那覇市壷屋1−6−3
tel/fax 098 988 0244
open 9:30〜13:00/15:00〜19:00
close 月・水
HP http://www.garbdomingo.com/
blog http://slowfish.seesaa.net/