KI-KENSETSU Projects(株式会社 紀建設)豊かな空間と贅沢な光を感じる家、主役はあくまで人




惜しげもなく柔らかな光が降り注ぐ空間。
建てもののどこにいても見下ろせるたっぷりとした広さの中庭には木が植えられ、
自然の豊かさや息吹を感じながら過ごすことができる。


この贅沢な空間はなんと建築事務所の一角。


「二つの棟を廊下で結んだデザインになっています。提案型住宅なんですが、壁に窓が無く、外から見るとまるで要塞のような形。その分、中庭から風と光を採りいれています。中庭や吹き抜け空間は本来無くても良い空間ですし、中庭を作らずにひっつけて作れば予算は大幅にカットできますが、空間の豊かさを考えると、棟を離して中に庭を作ると上から光を採りいれられますし、木が育つ様子を一年中見られるので、心も豊かに過ごせます。」


豊かな空間と光を感じる家、
おそらく誰もが憧れる住宅のあり方だが、そうなると土地も費用も大幅に上方修正しなければならないのでは?


「当事務所が80坪、それを30坪で実現できないかというと、できるんです。」


30坪でもデザインをあきらめず、そのうえ心豊かに暮らせる空間を実現できるとは。
急に身近な話として聞こえてくる。



最上階からは空ものぞめる


数々の公共・商業施設等の建築を行う国建に25年勤めたあと独立、もとは工務店だった紀建設を先代の社長から引き継ぎ、11年前に設計部を立ち上げた。
設計と施工を分担し、別々の会社で行うという一般的な形態とは異なり、
お客に会ってから鍵を渡すまでの一連の流れをすべて紀建設が担っている。
設立30周年を迎え、建築件数は200件近くにのぼっている。


代表の佐藤圭吾氏について
「ものづくりに対する心意気や思いは誰にも負けない」と
設計部主任の伊波さんは言う。


「少しでもひっかかることがあるとダメ、納得いくまでとことんやるというのが私どものスタイルです。何か問題が起こったとき、職人もここまでやって家主さんも納得してるから、まあいいか、ということにはならない。とにかくしつこい(笑)妥協したりしません。ですから、職人も社長の姿を見つけると『わ〜っ!』って(笑)」


細かなところにも手を抜かず妥協をゆるさない姿勢に信頼を寄せ、依頼する客も多い。


しかし、そういうスタイルを貫けば、自ずとコストも割り増しになる。


「時間もコストもかかりますが、それをお客様にご負担いただくわけにはいかないので当社が負担します。一般的には6ヶ月で終わる工事に7〜8ヶ月いただき、完璧な状態でお渡しします。」


その洗練された建てもののスタイルから「高いんでしょう?」とよく訊かれるという。


「確かに安くはありませんし、安売りするつもりもありませんが、実は、べらぼうに高いということもないんです。」


オープンハウスで実際に坪単価をきき、想像よりかなり低い金額に驚いた。


「そう感じて頂ければ嬉しいですね。デザインや空間性をそこまで深く追求なさらない方は、他の建設会社にご依頼された方がお得ですが、ご依頼いただいたら精一杯全力投球で取り組みます。予算額はまったく関係なく、込める気持ちは同じです。」





着工するまでにかかる時間も年々長くなっているという。


「10年前は、初めてお会いしてから着工まで4ヶ月かからない方もいらしゃいました。今は初めてコンタクトをとってから入居まで平均2年かかります。インターネットが普及したので色々な情報を入手、選択肢も広がるので、そのぶん悩まれるようで。最長6年という方もいらっしゃいました。」


初めて事務所を訪れた人に必ず言う事があるという。


「家を建てようと思ったら早い方が良いと、お話しています。その一番の理由はお子さんの成長。産まれてすぐに家を建てれば20年一緒に住めるけれど、中学生のお子さんだと大学で県外に出られたら3年しか一緒に住めない。ある程度お金を貯めてから、という方もいますが、この話をするとみなさんハッとなさって。」


家を建てるまでに支払う賃貸料や土地にかかる税金など、金銭面ばかりを気にしていたので、子どもの成長という新たな視点にまさにハッとする。
いったん家を離れれば、子どもにとって家は「住む」ところではなく「帰る」ところになってしまう。
家を建てることそのものが目的になってはいないか?
主人公はあくまでも「家族」、家はその背景に過ぎない。
資金繰りに頭をいため、理想の家を追求しているうちに、いつのまにか主人公の影が薄くなっているというのは、よくある話のようだ。


と言っても、「焦って建てろ」という意味ではない。


「ご夫婦の考え方が一つでないと家はできないし、どちらかが突っぱしっても絶対にうまくいかない。お二人の意思が合ったときに良い土地がふっと見つかったりといった巡り合わせもありますし。」


最近は土地から購入する人も多い。


「土地選びも色々と難しいので、同行することも多いです。この土地だとどういう家を建てられるかという専門的なことまではお客様は判断できないので。」


県内どこへでも土地選びに同行してくれる建築会社は多くない。
設計が始まる前からお付き合いを始めてくれるのは、何とも心強い。


「建築会社選びというのは恋愛と一緒、巡り合わせもあります。初めてお会いするときはいわばお見合い。フィーリングもありますので、良いなと思って頂ければお付き合いさせて頂きます。」


依頼の大半が紹介によるものだという。
誠実な対応と、できあがった家に満足した施主が、知人友人に勧めてくれるからだ。


「ご紹介は一番ありがたい。宣伝・広告にそれほど力を入れていないので、口コミで広がるのはとても嬉しいです。」





紀建設のデザインする建てものは、どれもスタイリッシュで洗練されているが、個性が強いかというと、そういうわけではない。


「私たちが建築するのは箱でしかないんです。その中に好きな家具やインテリアを入れてご自分の好みに仕上げていくもの。しかし、人の好みは5〜6年で変わることが多い。アジアンが好きだからといって雰囲気を統一して作り込みすぎると、好みが変わってしまった時に対応できなくなります。」


建てものそのものだけでなく、家具や将来の好みの変化のことまで考慮しているという。


空間表現に個性はあるが、仕上げ材に個性を持たせない事で、どんな家具やインテリアも調和する、フレキシブルな家になる。


最近ではリノベーション(建物の大幅な改修)にも力をいれている。


「20~30年前にご両親が建てたものをリノベーションしたことがあるのですが、新築よりも割安で、しかも高級な家ができました。躯体を作らないで済む分費用が浮くので、キッチンも新築よりだいぶ良いものを入れられますし。」


一戸建てだけでなく、中古マンションのリノベーションも?


「行っています。二戸を一戸にまとめたことも。
リノベーションは機会があればどんどんやりたい。スタッフも若いですし、様々な可能性を追求していきたいですね。」


あちこちに建つ古いマンションの中に、紀建設の手によって美しくよみがえった物件が、ひっそりと潜んでいるかもしれないのだ。
自分の目指す空間を、より低価格で手に入れられるリノベーション、
検討の余地は十分にある。





紀建設が目指すものとは?


「かっこいいとかおしゃれといったことではなく、お客様にどれだけ満足していただけるかが第一。こういうスタイルの会社なので、『この手のひとたちの物件しか建てないんだろう』と思われがちなんですが、そういうことはありません。お客様のご要望はすべてとりいれたいと思っていて、あくまでも満足が第一。
そして、私たちを選んでいただいたからには、空間をどれだけ豊かに表現できるかといった付加価値をつけることが2番目。
家は竣工した時点で完成ではなく、その先を作って行くのはお客様ご本人。私たちは箱の提供者でしかないので、10年〜20年後、どうやって幸せに、豊かに暮らして行くかというのはお客様の課題といえるかもしれません。建てたその後を見届け、時が経てばメンテナンスや塗装なども引き受ける、それが使命だと思っています。」


機能美にあふれるシンプルなデザインの裏には、家に、施主に対する熱い想いが隠れている。


実際に紀建設が設計、施工し、すでに暮らしをスタートさせているお宅へも取材に行ったので、近く掲載予定。
それはまさに、どんな細かいところにも手を抜かない、隙のない「ものづくり」を具現化したおうち、お楽しみに。

写真・文 中井 雅代

 

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