布の中の形を探る

文/写真  田原あゆみ

 

 
 
安藤明子のサロン展「はたらきものの衣服」が始まって5日目。
 
自分が好きな布を探したり、初めてのサロンの付け心地を体験したり、
持っているサロンの着付けのおさらいをしたりと、平面の布が様々な人々の身体のラインを包むのを手伝っている。
 
こちらはminä perhonenのテキスタイルのbirdを使った巾着スカート。
中に着ているのは裾にもふもふとしたあたたかな布がついていて、これからの季節にぴったりだ。
 
サロンの着付けを体験される方達は、平面の布の中に自分の形を探すように手と感覚で着方を覚えて帰ってゆく。
私もその人の身体のラインを生かした巻き方を心がけながら手を添える。
色んな方の着付けを手伝っていて、平面だからこそその中にたくさんの可能性があるのだと改めて感じ、布の魅力に惹き込まれてゆく。
 
 
安藤明子さんの提案するサロンの着付けには「創意工夫」という言葉がぴったり。
基本を覚えたら、サロンの仕上がりをタイトにしたり、Aラインを作ったり、頭からかぶってボレロにしたり、旅行の時には風呂敷にだってなってくれるのだから。
裁断されてダーツを入れたり、タックを入れて形が決まった洋服になるとこんなに形の変化は楽しめなくなる。
 
そんな魅力に溢れるサロン。
基本的な着付けに関しては、先週の関根の記事に写真付きで掲載しているので興味のある方はご覧くださいね。
今日は妊婦さんのサロンの着付けをご紹介します。
 
 

 
 
モデルはRoguiiのミカちゃん
 
ミカちゃんは1歳児の母。
もう妊婦さんではありませんが、今日はクッションをお腹に巻いて即席妊婦さんになってもらいました。
 
 
 

サロンの下には、三河木綿の中履きを履きます。
中履きはパンツタイプとサロンと同形のものと二タイプがあります。
 
肌にも心地いい素材で出来た中履きは汗を吸ってくれて、どんどん洗って乾きも早い。
そして、その中履きのおかげで表地に直接身体がつかないので表のサロンの洗濯の回数をかなり減らすことが出来、色や風合いを長持ちさせてくれるのです。
 
妊婦さんがこの中履きのパンツを履く時には、お腹のふくらみの下の方にゴムが来るようにします。
その方が血流も良くて、用をたす時にも楽ですし、お腹はサロンが持ち上げてくれるので脱ぎ履きもしやすいのです。
 
 
 

 
 
妊婦さんのお腹はどんどん大きくなります。
そのお腹を下から布で支え上げるようにサロンを巻きます。
その時にしっかりと支えられるように、サロンを折り返して二重にして写真のようにウエストの上あたりからお腹の下に斜めに布を沿わせます。
 
 

 
お腹の上に巻くのではなくて、お腹の下から重みを持ち上げるようにしっかりと巻きます。
 
丁度お腹の中心に折り返しが来るようにサロンの余った布をたたんでぎゅっと巻き付けます。
写真だと右寄りに見えますが、おへその丁度中心あたりから折り返しています。
 
 
 

 
自分の感覚で締めてゆくので、締めが足りないと感じたら写真のように返しの部分に手を差し込んで更に締めます。
サロンの面でお腹をしっかりと持ち上げられていると、腰がとても楽になります。
これは感覚で分かるので、自分で着る時にも布できゅっと持ち上げながら丁度心地の良い感覚を探ります。
 
 
 

 
布の場所が定まり、腰や身体が楽になるように巻き終わったら、紐の登場。
前から後ろにまわして、もう一度前に紐が来たら、
 

 
 
紐も下からお腹を支えるように固定して、後ろからかえって来た紐を二回くぐらせると、それを反対の方向へきゅっと引っ張ります。
着物の長襦袢を着る時に紐で留める時と同じ方法です。
 
紐は妊婦さん用のL~LLサイズのものが準備されていますのでこれからお腹が大きくなってゆく方がいたらお声をかけてくださいね。
 
 

 
余った部分を紐の下に巻き込んで動かないように固定したら出来上がり。
 
この着方をして布でしっかりとお腹を支えていると、コルセットや腹巻きが要らず下着も普通のもので大丈夫だそう。
買っていかれた臨月の妊婦さんは、とても気持ちが良いと喜んでいました。
 
 
 
 
 
 

完成図
 
横から見るとこんな感じです。
サロンの折り返し部分も、紐もお腹のふくらみの下から持ち上げるように巻かれているのがよくわかります。
中味はクッションですが、丁度一年前はこんな風にまんまるになったお腹の中に娘が居たんだと思い出しているのか?
ミカちゃんの表情は愛おしげ。
 
それにしても、このクッションちょっと大き過ぎたかしら・・・
 
 

 
その膨らんだお腹に、今はもうお腹から出てすくすくと育っているノアちゃんの手が伸びて。
 
妊娠と出産は本当に神秘的で不思議。
私たちはみんなその過程を経てここにいるのです。
 
 
 
 
 

 
 

 
 
サロンの他にも、三河木綿で出来た和のタオルや手ぬぐい、スタイ・子ども服などいろいろあります。
竹にかかっている藍染めと白の子ども服は、布の特性を生かした優れもの。
赤ちゃんの時にはおくるみに。
育つサイズに合わせて紐で調節してワンピースにして着ていって、最後はスカートに変身します。
1~2年生くらいまで着れるのだそう。
その頃にはきっとうんと柔らかくなって肌になじんでいることでしょう。
 
 
 

 
kittaさんの草木染めは、奥行きがあり深い色合い。
素材の風合いも柔らかく仕上っていて、手に取らずにはいられない。
 
 
 

 
 
さわやかな風が吹くようなものから、暖かで深い色合い、渋くきりっとしたものまでたくさんのサロンがShoka:に並んでいます。
この機会に「常服」としてのサロンの着心地を体験しに来てくださいね。
 
 
 
それから、以前買っていらした方も、今回買って帰ってもう一度着方を習いたいという方がいらしたらいつでもShoka:までどうぞ。
身体や手が覚えるまで何度でもサポートいたします。
 
 
 

 
はたらきものでお茶目な関根も待っていますよ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
安藤明子のサロン展 「はたらきものの衣服」
  

  
安藤明子のサロン展 「はたらきものの衣服」
10月6日(土)~14日(日)
 
Shoka:
沖縄市比屋根6-13-6
定休日 月・火曜
営業時間 12時〜19時
098-932-0791
http://shoka-wind.com