暮らしの中の旅日記   「誰かのために、誰かがしていること」

写真/文 田原あゆみ

 
Shoka:
 
 
手のひらに載っているのは、フードムードのココナッツチョコクッキー。
東京の国立市にあるこのお店のクッキーは、
包みを開ける時にもどかしくなるほどおいしくて、即日完売の人気というのも納得です。
 
しかもこの手のひらの上のクッキーは、私にとっては特別なものとなったのでした。
 
 
 
私たちの身の回りにあるもの。
食器や、服や、珈琲豆や紅茶の葉、ノートや、鉛筆、ボールペン、弁当箱や、クッキーや、ほうれん草に到るまで、どれも全部誰かの手を経て私の家へやってきている。
 
 
仕事はお金をもらう為にやっている経済活動だ、ライスワークだと割り切っている人もいるのかもしれないけれど、立ち止まって見渡すと、私たちの生活は誰かのした仕事のお陰で成り立っている。
 
顔を見たことも無い誰かが、どこかで生活していて、家族がいて、食品を詰める工場で働いている。
その人の手を借りて、私は沖縄の家で珈琲を飲む。
 
この珈琲豆はどこかの国で、あるおかあさんが背中にあかちゃんをおんぶしながら摘んだものなのかもしれない。
もしかしたら、大きな摘み取り機でごーっと摘まれたものかもしれないけれど、その機械だって誰かが操縦しているのだ。
 
 
そうやって思いを馳せると、私たちはそんなに遠くへいかなくても、誰かがどこかではたらいているお陰で色んなところから、まるで磁石のように身近にものを引き寄せているかのようだ。
 
夢の生活を送っているのではなかろうか?という気持ちになる。
 
 
 
Shoka:
 
 
「このクッキー知ってる?とてもおいしいんだってね。友達が送ってくれたのよ」
 
むふふ、と笑いながら私たちをもてなしてくれた赤木智子さん。
去年の夏にShoka:で「赤木智子の生活道具店」を開催した時にその楽しく暖かな人柄に触れた人もいるでしょう。
 
今年の3月1日から数日間、赤木夫婦のお招きを受けて輪島におじゃやましたときのこと。
 
 
夜のおしゃべりタイムに智子さんがこのクッキーの箱を一箱開けて、みんなに出してくれました。
私はチョコクッキーの魅力にそわそわ。
人数と、クッキーの数が気になります。
 
一個丸ごと食べたいけれど、でも、そうしたら誰かが食べれないのでは?
悪いからチョビット割って、もう少し割って、これおいしいのよたおも食べる?と、聞いて、相手がいらないと応えるとその分も食べたり、もぐもぐしているうちに、智子さんにチョコクッキーが好きなことがばれたのでした。
 
 
えへへ、と笑って照れ隠し。
大人げなくてばつが悪かったのです。
 
「智子さん、これとっても貴重なクッキー無くなっちゃうけど大丈夫?家族の分ある?」
自分の食欲が、クッキーを全部飲み込んでしまいそうで、心配になって聞いてみたら、
 
「うん、大丈夫よ。もう1箱あるから」
 
 
良かった、と安心して、夜はクッキーのもたらすしあわせとともに更けていったのでした。
 
Shoka:
 
 
翌日帰ろうとしていると、智子さんからお土産の小さな袋を娘が受け取った。
多治見に向かう道すがら開けてみたら、そこにはあのチョコクッキーの一包みが。
 
家族用のもう一つの箱の中から、これを分けてくれたのだ。
 
 
ああ、こんなところが、「赤木智子の生活道具店」のエッセンスなんだな。
そう感じて、じーん。
 
 
そんな智子さんの料理は、育む料理。
 
Shoka:
 
 
飾らず、素朴で、素材がのびのびとしている。
智子さんの仕事はその料理のように、家事や道具店に到るまで、誰かを育んでいるのだろう。
 
 
Shoka:での「赤木智子の生活道具店」はまだずっと先の、2015年の3月です。
まだまだ遠いですが、東京在住の方は gallery fu do kiにて明日から開催されています。
 
2013.4.5(fri)→4.14(sun)
赤木智子の生活道具店+しあわせの素
 
 
智子さんの「しあわせの素」は、おもいやりとユーモアなんじゃないかな?
クッキーの一件で、ますます智子さんのことが大好きになった私はそう感じているのでした。
 
 
 
 
 
Shoka:
 
 
 
あっという間に4月も二週目。
 
先週は東京出張へ、今週が過ぎて半ばにはまた東京。
 
写真はミナ ペルホネンの今年の秋冬物のコレクションを見に行ったときのもの。
 
 
 
ミナ ペルホネンの展示会場には、立ち止まって見つめていたくなるようなディスプレイや、花が飾られています。
 
コレクションから伝わってくるものと、お花たちが一緒に呼吸しているような感じです。
 
 
 
Shoka:
 
 
 
桜が満開の東京で、2シーズン先の季節を覗くのは不思議な気がします。
 
いつか誰かが着る服を、その時の時間を未来から引き寄せて作っている人達がいるのです。
 
考えてみたら、どんな仕事でも誰かの必要のために、誰かが働いているのですね。
 
 
 
誰かのために何かが出来るって、大人になって仕事をするって素敵なことだと感じます。
 
 
 
ものの色や形、質感、空間全体を満たしている空気。
 
とても細かい光の粒子が、にこにこ笑っているような、そんなコレクションでした。
 
 
 
出会いと、始まり。
 
終了と、旅立ちの春ですね。
 
 
 
しあわせって、当たり前だと思っていることが、違って見える時感じられるのかもしれません。
 
Shoka:
 
今年の春夏のミナ ペルホネンのテキスタイル「dandelion 」
色んなところに咲いているタンポポには、生命力とたくましさ、それから屈託の無い明るさを感じます。
クレヨンで描かれたタッチに、何だか胸がキュンとしてしまいます。
 
 
 
 
 
 
Shoka:
 
想像していませんでした。
私の人生が
こんなに絵を描くことになり
そこから溢れるほどの
生き甲斐をもらうとは。
偶然のように始まったこの仕事を
今は情熱の全てを尽くして
続けたいと思います。
私という存在が私の絵を
もって記憶されたなら
なんて幸せなことでしょう。
 
 
 
 
 
ミナ ペルホネンから届くletterに載っていた、皆川明さんのことば。
 
自分から溢れるものを形にして、それが誰かの喜びに繋がっていることを体感した時、
 
人は自分一人のうつわを越えるような力が湧いてくるものかもしれません。
 
 
 
ミナ ペルホネンの服に心が触れた人は、ぱっと笑顔が広がるのを私は何度も見てきました。
 
それは皆川さんが、この仕事を通して人の繋がりの中に居ることの喜びを見つけた人だからだと感じています。
 
偶然のような必然と、思いもよらなかったギフトに気づいたときの喜び。
 
 
 
それは、皆川さんや私たちが普段特別な人だと思っている人だけに与えられたものではなくて、私たち一人一人の暮らしの中にちりばめられているものです。
 
 
 
それを発見したり、暮らしの中で気づいていけたとしたら、それはなんて素敵なことなのでしょう。
 
 
 
Shoka:
 
マーメイドの刺繍が裏に施してあるミナ ペルホネンの always のデニム。
履き込むほどに、表地にマーメイドの模様が出てくるのが楽しい服。
 
古くなるのが待ち遠しいなんて、とても新鮮。
私たちもそうやって、味わいのある歳を重ねて行きたいものです。
 
 
 
 
 
 
 
Shoka: 
 
そして翌日は、ARTS&SCIENCEの秋冬の展示会へ。
ARTS&SCIENCEのものづくりのスピリットは、着た時に体感することが出来ます。
私は去年パンツを履き込んでつくづく実感しました。
 
不思議なほど何度も履きたくなるパンツなのです。
身体のラインが奇麗に見える、履きやすくて決めやすい。
そして、自宅で洗えて、洗濯後の風合いが良いのも大きな魅力です。
 
私の憧れはARTS&SCIENCEの肩のラインが落ち気味のブラウスや、ワンピースをかっこ良く着れること。
残念なことに、私の方は錨肩。
自分に似合わないことがほんとうに残念ですが、ARTS&SCIENCEのブラウスやワンピースのラインのうつくしさといったら、見ているだけでもため息がでます。
 
 
 
Shoka:
 
 
関根はとてもよく似合うので、コレクションの会場で2人で盛り上がって楽しみました。
 
ソニア パークさんのセンスの良さと、ディテールへのこだわりには感慨深いものがあります。
自分の着たい服を徹底的に追及した究極の形が、ARTS&SCIENCEの服のラインには表れているのです。
 
ソニアさん自身が気にいっていたアンティークの服のラインを基本にして、現代の生活の中での「道具としての衣服」というコンセプトを元に編集した形。
 
素材選びもすばらしい。
日本の職人技で織り上げた、とても細い上質のコットンやリネンの服は着る人に、時間軸を越えた特別な感覚をもたらすのを感じます。
生活の道具としての日常着であるとともに、形の中に気品が息づいていて、着ている人を見ていても心ひかれる。
 
余韻のある服たち。
 
 
 
自分のために追求した形や素材選びが、誰かの日常の中に愉しみを運んでいく。
ソニアさんの仕事からは、質を追う気高さを感じました。
 
 
 
 
Shoka:
 
 
出張や移動の多い春でした。
 
出かけるたびに、大好きな人に会って、その人のしている仕事に触れる。
こんなにも、誰かのしている仕事に感銘を受ける日が来ることを私は想像したことも無かった。
 
 
仕事って自分を開いて、社会に差し出すものなのかもしれない。
私はこんなことが出来ます、と、才能を差し出す。
それは計算力、整理する力、企画する力、まとめる力、我慢強さや、伝える力や色々、ありとあらゆる能力を社会は必要としているから。
 
そしてお金をもらって生活出来るということは、何だかとても素敵なことなんじゃなかろうか?
どうせなら思いっきり、出し惜しみなく仕事をした方が、楽しそうだ。
 
 
 
 
さあ、4月13日(金)から「初夏のお出かけ展」が始まります。
私たちShoka:チームも、みんなで才能をシェアし合って働こう!
 
 
どんな空間を作ろうか?
どんなことを伝えたいか?
 
 
感覚を伝えあいながら、明日は肉体労働にはげむつもりでございます。
誰かの笑顔や、暮らしの中の愉しみへ繋がってゆくように。
 
 
 
 
 
 
Shoka:
 
「初夏のお出かけ展」
4月13日(土)~28日(日)月曜定休、月曜が祝日の場合は翌日の火曜がお休み
 
じゃぶじゃぶ洗えるリネンやコットン素材。
誰かに会いにいきたくなるような、うきうきするようなワンピース。
お洗濯すると乾くのが待ち遠しくなるような、履きやすいパンツやデニム。
日常の中で活躍するアイテムと、ちょっとお出かけ気分で着たい服。
 
日常をより楽しく過ごせるような、お洋服や雑貨を揃えてみなさんをお待ちしています。
 
 
 
 
 
暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
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