「目覚め」trippen展 毎日を旅するように歩きたい

写真・文 田原あゆみ

 

shoka

 

 

trippenが人間工学に基づいて設計、デザインされている靴ということは知っている人も多いだろう。
私もこの4年間、外出の際にはほとんどtrippenの靴を履いて過ごしてきた。

 

そのお陰で、どのシリーズの靴が自分の足に合っているのかが分かったし、最初多少きつめに感じるくらいのサイズを選んだほうが後々しっくりと足に馴染むことも分かった。

 

それなのに、今回のイベントのDMを作成しながら改めて実感し感心していることがある。

 

それはtrippenが先見性に富んでいて、国レベルの視野をもってものづくりに挑んできた素晴らしい会社であるということ。
以下は、創業者の二人が書いたtrippenのアイデンティティだ。

 

 

shoka

 

trippen(トリッペン)では人間工学に基づいた長くご愛用いただける靴を責任を持ってお作りしております。

 

イタリアでは毎週のように、伝統ある靴製造業者が廃業の憂き目にあっています。ドイツでも、伝統ある靴製造業者が人員削減を行なったり、倒産に追い込まれたりしています。その原因として、コスト削減による生産拠点の海外移転が挙げられます。しかし、工房や工場の移転により靴の伝統的な製造ノウハウまでが失われ、靴を製造する際に用いられる機械もその製造業者も姿を消してしまいます。このままでは近いうちに伝統あるヨーロッパの靴製造業界自体が消滅しかねない事態に至っています。trippenはこのような環境の中で、品質を落とさず、靴の基本と考えられる優れた機能を備えた靴を製造する事に最も力を入れ、お客様のご要望にお応えする努力を続けております。

 

trippenは人間工学に基づいた履き心地の良さを追求し、他では得る事のできない製品を製造しております。また、多くの賞を受賞した洗練されたデザインにより、流行に左右されずお履きいただけます。長年のご使用により傷んだ場合でも、修理により新しく生まれ変わり、末永くご愛用いただくことができます。

 

trippenは海外の工場へは移転せず、自社工場とイタリアの限られた工房のみで、自分たちの目の届く所でお客様一人一人からのご要望にお答え出来る製造に密着した生産体制を維持しております。それは多種多様な製品をお客様にご満足いただける品質でご提供し続けるには、遠く離れた大工場では不可能だと考えているからです。

 

一つ一つ手作業で丁寧に作られるtrippenの製品は大量生産をする事はできません。そして、模造品が出回ったとしてもその品質・性能までを真似る事も出来ないのです。
より安い大量生産品が出回っている中、多くの職人の手作業によって作り上げられる高品質な製品こそが、お客様に末永くご愛用いただけると信じています。』
ー trippen japan ホームページより引用 ー

 

なるほど、読んでみると以前より深くこの言葉が入ってくるのがわかる。
履き心地や、服と合わせたときのバランスの良さの中に彼らの語るその理念を実感できるのだ。
これは履き込んできたからこそわかる満足感だ。こんなものづくりをしている人がいて、その靴を履くことができるのはしあわせだ。

 

 

shoka

 

 

デザインのソースとなるスケッチもなんともいい。
彼らの創業当時から変わらない姿勢や、スケッチににじみ出ているセンスの良さに触れて、私の中からなんとも懐かしい感覚が蘇ってくるのを感じていた。
むくむくと、なんだかこそばゆい感覚、懐かしいこの感覚。

 

 

それを一言で言うならば、「おしゃれゴコロ」。
健全な物欲、とも言いたい。

 

 

 

shoka

 

 

 

 

「毎日を旅するように歩きたい」そんなタイトルをつけた私に、この船のスケッチはただただ嬉しかった。

 

きっと違う意図を持って描かれたものだろうが、靴は一番小さな船のようだと感じている私にとってはとてもキャッチーなイラストだ。

 

春に目覚めた蕾が少しづつ膨らんで、硬い膜を脱ぎ捨ててゆくようななんともこそばゆいような感覚。
それが、あの「おしゃれゴコロ」

 

久しぶりに目覚めたそのココロさんが、私の扉をノックしているのだ。

 

 

 

shoka

 

 

それから2週間ほど経った2月の末のこと。

 

trippenの2016年秋冬物のコレクションを訪れて、驚いたのは、今までと違うシリーズに目がいってしまうこと。

 

デザインが入っていても、作りがいいので品があること。なんだか自分がわくわくしていること。

 

どうやら次のステージのドアは開いたらしい。

 

スタイリッシュにかっこ良く靴を履きたい!そんな気持ちがむくむくと湧いてきた。

 

健康な物欲。いいものに対価を支払うことができる喜び。この中から、今までとは違う感覚で靴を選ぶんだ。

 

shoka

 

 

 

これは今までに私が履き込んできたtrippenの靴たち。

 

この靴たちのお陰で、この4年間の私の出張や旅は快適だった。どこまでも歩けたし、安心して出かけることができた。ありがとう、私の日常の船たちよ。不恰好な形になってしまったのは、私の足の形の悪さのせい。ありがとうね。これからもよろしく、ね。

 

 

可愛くて健気な彼ら。愛おしくなるそのすがた。
が、しかし、彼らを一見するとわかることがある。

 

そう、めちゃベーシックで品行方正な感じ。一足だけ黒いヒールで先細のleafという靴が、他のものよりデザイン重視で買った靴。2週間はびっこをひきながらならした靴だ。

 

色もなんだかコーヒーやお茶や、影の色。ぬぬぬぬ。
今度選ぶ靴は、脱ベーシック!

 

 

shoka

 

 

基本形を履いてきたこの4年があるからこそ、次のステージに漕ぎ出せるのかもしれない。

 

 

今trippenの本社のあるドイツでは、若い世代のデザイナーたちがtrippenの靴をコーディネートしてコレクションを発表する人が増えているという。

 

モード・デザイン・職人魂・素材・環境・・・何かを作るときに、意識が高く時代に敏感な人々は、全体美を求める時代になっているのだ。
私は勝手に確信しているのだが、30~40代の次世代の先端を担う若手の人々の見つめる社会は成熟社会だ。

 

形が美しいだけで、履き心地の悪いものよりは、その両面を満たすもの。
コストを落とし、大量生産するときに見捨てられがちな職人魂や、一手間が生み出すディテールの美しさをもう一度呼びさましたい。
そんな人々がtrippenのものづくりの姿勢や、そのデザインの良さに共感して注目しているのは嬉しいことだ。

 

もっと素直な言葉で言うと、
私、見る目があったのね。

 

そんな気がして、実はそれが一番嬉しい。

 

shoka

 

 

 

この下駄のようなソールのシリーズは「Happy」と名付けられている。

 

 

shoka

 

 

 

裏返すと「福」の文字が彫り込まれているからだ。

 

 

正直このソールの靴を履きこなす自信はないけれど、履いている人のことは羨ましい。

 

 

 

shoka

 

 

今まで避けてきた紐靴もすごくかっこよくてドキドキしてしまう。前に見たときにはちっともぐっとこなかったのに不思議だ。

 

 

実際に足を入れてみたら、甲高の私の足だと紐が開きすぎたりするかもしれないけれど、それでもこの靴の中に足を預けてみたい。試足することをイメージするとドキドキしてくる。

 

 

 

 

shoka

 

 

2016年の秋冬のシリーズにはニーハイロングブーツも久しぶりに登場。
これから春と夏がやってくるのに、ブーツのことを考えるのはとても現代的なことだと思う。
ドキドキとウキウキが膨らんだ今、全てがポジティブに感じられる。

 

 

shoka

 

 

指一本を使ってささっと履ける、スニーカーをコンセプトにした新シリーズ。
シルバーのメタリックな色は意外にあわせやすい。

 

 

shoka

 

 

 

感触は軽くて、本当にスニーカーのように普段どんどん履くのにいい感じだ。

 

他にも、指一本で履ける靴は色々。

 

 

 

shokashoka

 

shoka

 

 

簡単に脱ぎ履きしやすい靴はやはりとても便利で、車社会沖縄のようなdoor to doorの環境では探している人も多いだろう。
確かに私も一足欲しい。
今履いている便利靴は、とてもくたびれてきているからだ。

 

3月5日(金)から始まるtrippenの企画展で、じっくり選ぶことにしよう。

 

 

しかし、忘れ難いのが、一手間かけても履きたいスタイリッシュな靴。
私にときめきをプレゼントしてくれるその靴に私は会いたくてたまらない。

 

 

 

shoka

 

 

山羊の柔らかな毛をフサフサとつけたショートブーツは、ハッピーのシリーズ。
とてもハンサムな馬面な横顔。
愛着も感じる。

 

 

shoka

 

 

今ここで公言するのは、

 

一手間かけて履く靴。
この靴に合わせて、私らしくかっこよく服をコーディネートする。

 

これが今年の春の私の目標です。

 

この春は行事が多くて、東京都沖縄を行ったり来たりになるけれど、きっとフルコーディネートを新鮮な「おしゃれゴコロ」で選んできっとこの連載で報告します。

 

 

というわけで、とりとめのない旅日記。

 

今回は「日常を旅するように歩きたい」trippenの機能とデザインのどちらも満たす靴と私の欲望のお話でした。

 

 

 

いかに今までのtrippenの記事と、お手入れの情報を添付しておきます。
trippenは修理も受け付けています。
Shoka:以外で買ったtrippenの靴も是非、持ち込んでくださいね。

 

 

 

trip! trippen!
靴とバッグの展示会「毎日を旅するように歩きたい」前編

 

trip!trippen!
毎日を旅するように歩きたい 後編

 

 

trippen pan のお手入れをしましょう

 

暮らしの中の旅日記 「いいお天気ですね お靴のお手入れいたしましょう」

 

↑一番最後の記事は永久保存版。なかなか体を張った渾身の記事。

 

 

 

 

 

::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

 

 

 

shoka

 

trippen展 毎日を旅するように歩きたい
2016年3月5日(土)~3月21日(月) 12:30~19:00 (会期中火曜定休)

 

靴は私たちの船のようなもの。なかなかフィットしない船に乗ること 40 年あまり。その放浪の旅路の中で出会った職人魂を持つブランド trippen はドイツ国内の自社工場と、イタリアの限られた工房のみで 作られています。海外生産にしてコストを落とすと、国内の職人たち の技術が失われてしまい次世代に継承できず廃れていくことになるか らです。人間工学に基づいた履き心地の良さと、時代に左右されない デザイン、痛んだ時に修理ができる体制を持つ trippen の靴は、私の 暮らしに安心感をもたらしました。普段 Shoka: に無いデザインのも のもたくさんやってきます。2 足目、3 足目もお試しあれ。  
メンズもやってきます!

 

 

 

 

shoka

 

暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http://shoka-wind.com/
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~19:00