» 『 105にんのすてきなしごと 』「奏でる」とはその人自身の「音」を出すこと。105人がしごとに向かうまで。


カーラ・ラスキン 文 マーク・シーモント 絵 なかがわちひろ 訳 あすなろ書房  ¥1,300(税別)/OMAR BOOKS 

 

「奏でる」という言葉には、「音楽を演奏する。楽器を鳴らす。」というほかに「手足を動かして舞う」という意味もあるようだ。前者からはメロディが流れ出て、後者からは何が生まれるのだろう?

 

いい仕事をしたときに場に生まれるあの調和のとれた空気。力を出し切ってくたくたでも心地のいい疲労感。その場に居合わせた人たちとの言葉を介さなくても共有される永遠のような一瞬。こうして大袈裟に言わずとも、普段の仕事の中でも大なり小なり見られるこれに近い場面をこの絵本を読み終えて思い起した。

 

この『105にんのすてきなしごと』の始まりに描かれるのは、日が暮れて「しごと」へ行く準備を始めるたくさんの老若男女。シャワーを浴び、いい香りのするパウダーを叩き、それぞれの衣装を身につける。
燕尾服(えんびふく)姿の男や思い思いの正装が完了すると、それぞれの家からある一つの場所へ向かう。

 

たくさんの人が関わるあるひとつの仕事に向かうまでには、表には出ない準備期間がその裏に確実に存在している。やり方や好みはそれぞれ違う。
この本の帯びにあるように、「おふろの入りかたも服をきる順番も、年齢も、家族も、趣味や考えかたも、ちがいます」それがとても大切だと納得するところがあった。仕事でもその人のペースや、得意不得意など違ってあたり前。異なるところを認めたところから生まれる自由さが、肝心の本番によりいい影響を及ぼす。自立の理想のかたち。そのことが登場人物が105人いるこの絵本にはよく描かれている。

 

彼らの準備が整って、シャンデリアの輝くホールでは美しい音楽が鳴り始める。「奏でる」とはその人自身の「音」を出すことでもあるよう。
そこから生まれるのは、互いの音に反応し合う一度きりのセッション(やりとり)だ。それはきっと全身の動きを伴う美しいダンスのように思えなくもない。そこから溢れ出すのは反射するいくつもの生の輝きだ。

 

カバーを外すと真っ赤な表紙もまた素敵。あなたの大切な、働くお友達へのプレゼントにもおすすめの一冊です。

 

OMAR BOOKS 川端明美

 


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