fish & chips まるたまカギは茹で時間、味付けは最小限。じゃがいもの美味しさを最大限に引き出した、フィッシュ&チップス

まるたま

 

「実は、チップス(ポテトフライ)だけ下さいって言われると、嬉しいんですよね」

 

そんな意外なことを言うのは、フィッシュ&チップスまるたま店主、玉代勢 卓(たまよせ すぐる)さんだ。

 

「魚を食べてもらえなくなったら困るから、そんなこと言わなくていいよ(笑)」とキッパリ隣で諭すのは、奥様の藍さん。

 

「でもっ、僕は、やっぱりチップスが一番…。一番、チップスのことを考えてる。頭の中、チップスのことしかない…」

 

「もうこの人、じゃがいも大好きだから」

 

朴訥と、丁寧に言葉を選ぶように話す卓さんと、ポンポンと言葉が出てきてハキハキと明るい藍さん。そんな話すテンポも(きっと性格も)、正反対の夫婦の掛け合いが楽しい。

 

まるたま

“まるたまプレート”。フィッシュまたはチキンが選べる。チキンの唐揚げは、藍さんのお母様直伝の味付け

 

チップスだけ下さいと言われて嬉しいのは、それだけ卓さんがチップス作りに情熱を傾けているから。

 

「ポテトは自分の手間暇で、美味しくしてる。魚は、魚自体の味の美味しさってあるけど、もちろんポテトもあるんだけど、ポテトの方が、自分がうまさを引き出してる気がする。なんか自分がこだわってやってるものを食べてくれるのが、嬉しくて。『美味しい』って、『家でやってみたけど、おんなじようにできないよ』って言ってもらえるのが、嬉しくて」

 

まるたまのチップスは、ただじゃがいもを揚げただけではない。お店で出すまで何時間もかけて下準備をするのだ。

 

「じゃがいもは、1度茹でてから2度揚げするんです。朝7時から、茹でて1度揚げてっていう作業を11時くらいまでやってます。だからフィッシュ&チップスを出せるのは11時以降。揚げてから冷まして水分を飛ばす時間が必要なんで。7時からお店開けてますけど、朝まるたまメニューは、たまごサラダホットサンドだけになりますね」

 

チップス作りで1番難しいのは、意外にも茹で加減だと言う。

 

「本当は長く茹でたほうが、外はサクサク、中はふんわりで美味しいんです。でもあまり長く茹で過ぎると、湯を切るときに形が崩れてしまったりするんです。だから、形が崩れるか崩れないかギリギリのところで。今ここで上げるのがいいのか、あと30秒待とうかとか。ちょっとの差で味が違うんです。じゃがいもの種類によっても茹で時間が変わるから、茹でている間は目が離せないんですよ」

 

まるたま

 

もちろん、どの種類がチップスに適しているか、卓さんは研究済みだ。

 

「熊本のホッカイコガネという種類が一番美味しかった。外はサクサクで、中がトロッととろけるんです。他のじゃがいもは中がふんわりするけど、トロリとはならない。でもこのホッカイコガネは期間が限定されちゃって。それ以外では、男爵系がポテトフライにはいいよって言われてるけど、メークインのほうが中がもっちりして、美味しい気がする。甘い感じなんですよ。男爵とかはそこまで甘くない感じがする」

 

するとすかさず藍さんが、「じゃがいもソムリエのようでしょ(笑)」と茶々を入れる。

 

「塩加減も難しいですね。味付けは最小限にしたいから、塩は茹でるときしか入れません。小麦粉も使わないです。小麦粉をまぶして揚げると確かにサクサクになるんですよ。でも使いたくなくて。そのままのほうが絶対いい。ポテトだけで美味しくしたいんです」

 

魚にまとわせる衣も、余計なものは入れずに最小限の材料で。

 

「衣の材料もなるべく少なく、小麦粉と塩、こしょう、あとはビール。卵やベーキングパウダーは入ってないです。衣がサクサクしてるのは、ビールが入ってるから。オリオンのサザンスターです」

 

魚もチップスも、揚げるのは注文が入ってから。歯がサックサクの衣を通過すると、水分がしっかり保たれて、とってもジューシーな魚が。フワッフワで身が崩れてしまいそうに柔らかい。

 

まるたま

魚は、沖縄近海で穫れるシイラ(定期的に放射能検査を実施)か、ニュージーランド産ホキ。両方あるときは、1切れずつ

 

ここまでこだわる卓さんだから、当然フィッシュ&チップスの食べ方にもお勧めがある。

 

「まずは、チップスにモルトビネガーをかけて、ケチャップをかける。カップも用意してるんだけど、それは使わず直接ダーッとかけて。それで魚にはタルタルソース。あとコーラ。このセットが多分最強です。でも一番お勧めなのは、チップスだけとコーラ(笑)。フィッシュよりもチップス。みんなそうだと思ってた(笑)」

 

まるたま

 

卓さんは、チップス&コーラが大好きだが、もっと好きなものがある。フィッシュ&チップスサンドだ。柔らかな食パンに、フィッシュとチップス、タルタルソースが挟まっている。

 

「サンドイッチに使うチップスと、ポテトフライとして出すチップスは、同じじゃがいもだけど、使う部分が違うんですよ。サンドイッチに入れるのは、じゃがいもの端っこの細々したところで、ポテトフライとして出すのは、きれいなスティック状になる中心のところ。端っこのほうがサクサクしてて、僕は好き。自分が食べるのはいつも端っこのところです。このサンドイッチはチョーオススメ。これが一番好きかな」

 

このメニューは、パンやご飯と一緒に食べたいという客の要望から生まれたんです、と藍さん。

 

「『フィッシュとチップスだけじゃ、ご飯にならない。パンかご飯をつけてくれ』ってお客様からすごく言われて。じゃ、パンに挟んでみようかと、苦肉の策からできたオリジナルメニューなんです。私も主人も、フィッシュ&チップスって完全食だと思ってて。ポテトが主食で、それに魚がついて。これだけで、ご飯になるし、おやつにもなるし、お酒のおつまみにもなるって。だからご飯かパンをつけるのは、最初はすごく抵抗あったんですよね。でもやってみたらサンドイッチも美味しいし、ご飯にも合う。主人もまかないで、ご飯の上に魚とタルタルソース乗せて、お醤油垂らして食べてますもんね」

 

こうして、ご飯が添えられた“まるたまプレート”も生まれた。「主人は、フィッシュ&チップスで満足しちゃって、新しいメニューを開発しないから(笑)」と藍さんのアイディアだ。

 

まるたま

 

まるたま

 

「フィッシュ&チップスって、僕が住んでたニュージーランドでは、決しておしゃれなものじゃない。魚もやたらでかくて、新聞を大きく広げて、真ん中にボンって置いて、それで包むみたいな。ポテトと魚と塩、それだけ。シンプルでそれだけの方が絶対いいなと思ってる。だから飾りみたいなのも付けたくない。素っ気ないくらいがいいんです」

 

お店も同じく、おしゃれじゃないのが好きで、ちょっと鈍臭いくらいにしたいのだと言う。

 

「チップスだけとかだと小さい紙コップで出すんですけど、学生さんや近所の人たちなんかが、200円とか300円で気軽に買って、食べながら帰るような。町の駄菓子屋さんみたいな店になったらいいな」

 

実際、駄菓子屋のように小学生が通ってくる。ここ曙という土地は人との距離が近くて、子供たちもみんな人懐っこいと藍さんは目を細める。

 

「そこにウォーターサーバーがあるでしょ。近所の小学生が学校帰りに5,6人でゾロゾロとお店に入ってきて、水を飲んでるの(笑)。何度か来てて、あるとき水飲んだ後、1人の子が『えーと、チキンでも買おうかな』って、急にお客さんになっちゃって(笑)。そうやって小学生がお客さんになってくれるのは嬉しいですね。チキンって2ピースで売ってるんですけど、なぜか3ピース買いに来る子もいて。『うちね、2ピースずつなんだよー』って言っても『3ピース』って。3人兄弟なのかなと思いつつ、3ピースで売ってあげたりして」

 

1日に何度も来られる気軽さも駄菓子屋のよう。昨日は3回来てくれたお客さんがいたと嬉しそうな卓さん。いつも声をかけてくれる常連さんとのふれあいも楽しみの1つだ。

 

「隣の酒屋のお客さんがさ、ここでチップスだけを注文して、酒屋の店主とおしゃべりしながら缶ビール飲んでる。隣におじさんの席があるわけ。昨日もお店閉めようとしてシャッター下ろしてたら、『ひとつ〜!』って言われて。『はいはーい』ってチップス持って行った。隣だけは配達してます(笑)」

 

まるたま

 

卓さんがフィッシュ&チップスの店を始めた1番の理由は食べて美味しいなと思ったからだが、2番は生まれ故郷である宜野座の名産、じゃがいもを使えるからだ。

 

「勝手に宜野座のアンテナショップにする。誰にも頼まれてないけど(笑)。宜野座、じゃがいもの産地指定受けたけど、あまり知られてないでしょ。そのうち、ホッカイコガネとか紫色のじゃがいものシャドークイーンの種芋見つけて、宜野座で農家やってる父親や他の農家さんに育ててもらいたいな。あ、じゃがいも入りサーターアンダギー、食べたことあります? サクサクでフワフワでチョー美味しい。大好きで僕達の結婚式の引き出物にしたくらい。今度宜野座で見かけたら是非食べてみて下さい。ここでも出したいんだけど、反対されてるから。『揚げ物に揚げ物のスイーツはいらないんじゃない』って」

 

そう言って、藍さんを見やる(笑)。

 

宜野座出身だし、王道じゃなくてマイナー、その上ちょっと鈍臭い。これが僕の生き方だと言う卓さん。そうだとすれば、この店は、卓さんの生き方そのものだ。

 

素朴だけど、味があって、ドスンと構えていて、誰からも好感を持たれる。これが卓さんだろう。あれ、とここで気がついた。これってまるで卓さんが愛してやまない、じゃがいもそのものじゃない、と。

 

文/田中 えり(編集部)

写真/青木 舞子(編集部)

 

まるたま
fish & chips まるたま
那覇市曙2-15-12-102
098-955-2093
火〜木 7:00~20:00
金 7:00~21:00
土 9:00~21:00
日 9:00~19:00
(LOは、それぞれ閉店時間の30分前)
close 月

 

http://marutama.ti-da.net