むい自然農園 益田航 「僕が一番伝えたいのは、自然栽培ってこんなに楽しいんだよってこと」

むい自然農園

 

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「日々思いますね、『ああ、生きてるな』って。畑で、夜明けの太陽の光を浴びて、地面から、土から、ワーッとエネルギーがあがってきて。『おおー、来てんなー!!』って(笑)。畑にいると毎日、『いいなー、楽しいなー』って思いますね」

 

むい自然農園の益田航さんは、夜明け前から夕方まで1人っきりで畑作業をしていても、全然寂しくないと言う。大自然の中でそのエネルギーを余すところなく全身で受け取っているからだ。沖縄に来てから始めたという自然栽培は、もう8年に。最近は、畑仕事以外でもやりたいことが明確になった。

 

「結局自分は何がしたいんだろうって思うと、自然栽培の素晴らしさを伝えたいって思うようになって。こんなに楽しいってことを、もっとみんなに広げていきたいっていう」

 

農薬や化学肥料を使わなければ、それだけ労力が増えて大変なのでは?と単純に思っていた。けれど、益田さんの生き生きと輝いた目を見れば、苦労だけではないことは明らか。その自然栽培の素晴らしさ、聞かずにはいられない。

 

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そもそも自然栽培って、不耕起であったり、農薬や肥料を一切使わない農法、ということですか?

 

益田さん(以下略):これが自然栽培だよって言うんじゃなくて、人によっても違うだろうし、多分土地によっても違うのが自然栽培だと思うんです。色んなやり方があっていいと思うんですね。

 

ただ「自然をお手本にする」っていうのが自然栽培だと思います。自然をお手本にすると、なんで土を耕すんだろうってところから入るんですよね、自分なんかは。自然に生えてる木とか草ボーボーのところとか、誰も耕してないのに、あんなに元気に健康に育ってる。なんで肥料あげるんだろう、農薬かけるんだろうって。誰も肥料や農薬をあげていないのに、あんなに立派に育ってるし、虫食いだらけになってない。

 

どうも自然をお手本にしてるとわかってくるのは、人間が余計なことをしているんじゃないかって。土が固いところに根を伸ばすから、丈夫に育つのに、耕して甘やかしすぎるから、作物がひ弱になってしまう。そうすると肥料をあげないと育たないから、肥料をあげる。すると肥料に寄せられて虫がいっぱいやってくるから、農薬かけないといけない。農薬かけるから、更にひ弱になってって、全部悪循環になってしまうんです。

 

自然栽培って結局先生は、自然しかないというか。作物と会話して初めて自然栽培かなって。

 

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なぜ益田さんは、自然栽培を? 自然栽培を始めたきっかけは?

 

自然農法の提唱者である福岡正信さんの「わら一本の革命」っていう本に出会ったのが衝撃的で。直感で「ああ、これだな、自分のやりたかったのは」って。それまで農業関係の本を読んだり、畑にバイトに行ったりしてたんですけど、これだっていうのを感じたことはなかったんです。

 

例えば、バイトでオクラ農家に行ったときは、朝から晩まで、オクラ。そこに石灰やら肥料を担いで撒いて。これだったら工場で働いてるみたいだなって。自分が思い描いてた、自然と調和したいという仕事ではないような気がして。そんな時に福岡さんの本を読んで、もう目からウロコというか。この本を読む前に、仏教や禅を学び、インドを放浪していたんです。そういう経験から自分が考えていたことが、そのまま仕事に結びつくんだと思って感動しました。自然農法って、仕事というより、生き方だったんだなと思って。

 

自然農法って、農業の一つのやり方にとどまらず、”自然と調和する生き方”なんですね。太陽や土のエネルギーを感じる以外に、何がそんなに楽しいんですか?

 

畑からも、そこでできた作物からもエネルギーをもらえるし、何より野菜が美味しい! 単純に美味しいってことが一番。自分で食べてみて、全然違う、美味しいってこういうことだったんだって、初めてわかりましたね。

 

ただ甘いとか、単純な味ではなくて。トマトだったら、甘くしたいんだったら自然栽培じゃなく、違う方法のほうが甘くなったりするんです。自然栽培の甘さっていうのは、甘さの中に酸っぱさもあって、ちょっと渋みもあったり、色んな味が交じり合って、そのハーモニーで美味しいというか。味も濃くて、これがトマトの味なんだっていう感じがする。そのものの味としか最後は言いようがないかな。

 

今、ゴーヤーだったら、苦くないほうがいいとか、そういう風に改良されたり、そういうのの人気が出たりするけど、でもやっぱり苦くて美味しいゴーヤーを食べると、やっぱりこれがゴーヤーの味だよなって思うんですよ。だいたいうちは夏の間4,5ヶ月は毎日ゴーヤーを食べるけど、全然飽きないですよ。旬のものってこんなに飽きないんだっていうくらい(笑)。

 

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黒くなった四角豆は、来年に向けての種採り用だ。

 

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でも自然栽培をしている農家さんはとても少ないですよね。やっぱり自然栽培を始めるのは難しいのではないですか?

 

周りからある意味、プレッシャーがかかるっていうのはあるかもしれないです。自分なんかは、わざと草を生やすんだけど、特に田舎では畑に草を生やしてるのは恥ずかしいことと見られがちなんです。きれい〜に草を刈って、もしくは除草剤をかけてやってるほうが、立派な仕事をしてるって。草を生やしてるのは、仕事をさぼってるんじゃないかって(笑)。「沖縄はこんなに雑草が生えるし、虫が多いんだから、除草剤や農薬使わないと無理だよ」って言う農家さんもいっぱいいます。

 

確かに沖縄は雑草や虫が多くて、そういう面は否めないんだけど、そう言ってしまうと沖縄で自然栽培やる人が出てこないから(笑)、自分はなるべくポジティブなことを言いたくて。沖縄は冬でも栽培できるし、なんといっても、エネルギーがすごいですよね。太陽のエネルギーにしろ、雨のエネルギーにしろ。だから木でも草でも育ち方がすごいじゃないですか。だからやり方によっては、沖縄でもできるのは確かだと思うんですよ。

 

あと「形が悪いと売れないさ〜ね〜。農協も買ってくれないし、市場にも出せないし、そしたら生活できないし、借金も返せない」ってね。うちは作物の種も自家採種してるけど、最近はF1の種が大半じゃないですか。1世代だけで子孫を残さない種ですね。笑っちゃうのは、トマトとかのF1の種って、決まった大きさになるよう、そういう計算のもとに作られているんです。それは箱詰めしたときに、ぴったり収まるように。いかに流通させるかが大事で、味は二の次。普通に考えたら、味が美味しい方が売れるから、そういう風に改良すると思うんだけど、そうじゃないんですね。子供心で素直に考えたら、その野菜の種を蒔いても芽が出なくて子孫が残せないものを人間が食べるって、なんかおかしいって思います。

 

むい自然農園

 

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自然栽培は、始められたとしても、続けていくのも難しそうです。

 

福岡正信さんとか、りんごで無農薬栽培に成功した木村秋則さんの本とか出てるし、マニュアルもあって、講演でいらして、やり方も教えてくれる。でもその通りに沖縄でやっても失敗すると思うんです。皆さんの失敗している例を聞くと、そのまま当てはめてしまっていることが多いですね。やっぱり北国でやってる方のやり方を、沖縄でやったって、自然の環境は全く違うし、土の質は違うし、気候も違うし、種蒔く時期も全然違う。マニュアルをそのままここで当てはめると失敗して、ああ沖縄は難しんだっていう結論にすぐいってしまう。沖縄では沖縄のやり方でやればきっとできるはずって、自分もそれを試行錯誤しながらやっているんです。自然栽培の本は参考にしつつ、でも究極は自然と向き合わないと、必ずどこかで失敗してしまう。自分も失敗しながら、はっと思い出して自然に戻るってことを繰り返しています。

 

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沖縄でのやり方は自分で試行錯誤しないと? 何かヒントにしたりするんですか?

 

身近なところでは、地域のオジイとかオバアのやり方が一番参考になります。農薬を沢山使う人がほとんどなんだけど、その中でもちょっとしたやり方とか。例えば、ゴーヤーとか棚作りでやっているのしか見たことない人もいると思うんだけど、オバアとかはあたいぐゎーで、地這いでやってる人がちらほらいるんです。昔のやり方はそうだったんですね。やっぱり参考にするのは、沖縄で昔からやってるやり方。だって昔は肥料も農薬もなかったわけだし。うちも地這いでやってて、その方が自然の理に適ってるかなと思うんです。垂直に登らせて、途中の横に伸びる葉っぱとか脇芽を切ってって人間がやって、上に来たときだけ脇芽を伸ばす。ゴーヤーは好きなように伸びたいのに、横を切られてしまって、真っすぐ上にだけに登れっていうのは、あまりのもゴーヤーのエネルギーをムダにしてると思うんですよ。肥料をいっぱい入れないとそういう風に育たないし。それに垂直に育ててると、台風が来た時に全滅してしまう。地這いだと、台風の後でも実が取れますよ。その代わり、収穫が大変ですけど。草をかき分けて実を探さなきゃなんない(笑)。

 

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自然栽培をしてみて、益田さん自身はどんな変化がありましたか?

 

作物と同じで、自分も余計なことをしないほうが楽しいんだって、気づかせてもらいました。今までは、何か余計なことやって問題が出てきて、さらに余計なことやってまた問題がややこしくなってって、次から次へと問題だらけで、問題をいつも抱えてた。そうやって生きていく、人生ってそういうもんだっていう感じがしてたんだけど。でももっとシンプルに余計なことさえしなければ問題自体も起こらないっていう考え方に変わったかな。例えば、なんだろうな。わざわざ塩っぱいもの食べて、お酒飲んで、今度は甘いものが欲しくなって。それで食べ過ぎて具合悪くなって、病院行って薬もらって、更に悪くなってしまう。そんなののくり返し。最初から旬の地の野菜を食べれば、余計なものがなくても満足できて、病気にもならないから病院に行かなくていいし、イライラすることもない。

 

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シンプルな状態で充分足りていて、もう何も足さなくていいと?

 

例えば、土には土着の微生物がいて、全部繋がり合って、完璧なんですよね。完璧なハーモニーがあるから、自然の木とか森って美しいし、人間が感動する。「土作り」ってよく言うけど、土こそ人間の作れないものだと思うんですよ。土は作るんじゃなくて、いかにそこを活かすか、恵みをもらうか。いかに余計なことをしないか、じゃましないか。足し算じゃなくて、全部引き算なんですよね。足していくと次から次へと必要なものが増えて、問題がどんどんややこしくなる。

 

土を見てると人間も同じかなって。人間の体だって、自分の細胞より多くの微生物が住んでいて、それで成り立ってる。自分のものであっても、自分のものじゃない、微生物だらけで、生かされているんですよ。大地の全部が土なのに、ここだけ作って、「土を作りました」っていうのはおかしいじゃないですか。それと同じように、人間の内臓を見て、「ここが悪いからここを切ったら治ります」っていうのもおかしい。全部がつながっていて、全部が影響しあっているのに、ここだけ切れば治るっていうのは人間の傲慢さというか。土と同じように、人間もそのまんまで完璧なんですよ。

 

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益田さんの畑の100種以上の野菜、野草を細かくして煮詰めたコンフィテューレ。新月の日に仕込んだ「新月仕込み」の他に、満月の日の「満月仕込み」も。

 

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そうすると自分はありのままでいいんだって自分を肯定できるし、世界もこのままでいいんだって。足していくと、足した分だけ争いが起きたり、ややこしい問題が起きたりするけど、自分がこのままでいいんだったら、他人もそのままでいいんだし、認めないといけない。「そう言ったってお互いの利害があるんだから、こっちがいい、そっちがいいって言ったら戦争になるでしょう」って人は言うんだけど、自分はそうはならないって信じられるようになってて。本当にお互いを認め合っていたら、お互いが「自分はこれがいい」って言っても争いは起きないはず。そういう世界になったらいいなって、自然を見ていると思いますね。

 

でもね、そんな大袈裟なことじゃなくても、自然栽培の美味しい野菜を届けて、「美味しいね」って。自分が楽しそうにやってたら、相手も楽しそうになってって、そういう身近なところを自分はやりたいなって思うんですよ。

 

インタビュー・写真/田中えり(編集部)

 

むい自然農園
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http://mui.ti-da.net
https://www.facebook.com/mui.shizen.nouen

 

むい自然農園の野菜を食べられるお店
浮島ガーデン(那覇) 
 (ハルサーズマーケット(毎月第二日曜日開催)にも出店)
カフェこくう(今帰仁)
◆sanctuary-void(名護)

※こちらの3店舗で薬膳コンフィテューレの販売もしています。

 

 

新規のご注文、ご予約の受付につきまして
「現在、新規のご注文、ご予約の受付は休止中です。長くお待ちいただいている方に空きができ次第ご連絡させていただいているところで、ご予約もお受けすることができません。せっかく当農園をみつけてくださった方、ごめんなさい。また受付再開できるときには、お知らせしますので、そのときにご縁がありましたらご連絡いただけたら幸いです。」