potohotoコーヒーが苦手だった店主、自家焙煎豆の美味しさの基準は「甘さ』

 

カプチーノ。可愛いくまのラテアートに、わっと歓声があがる。「すごい!きれい!可愛い~!」「うちの主人もやってくれたらいいのに~。こんなコーヒー出してくれたら朝から主人に優しくできそう(笑)」カプチーノを囲む人々はみな、笑顔、笑顔。

 

「ここはなんのお店かね〜と前から気になっていたさ〜。だあ、私も一杯いただこうかね。」

 

通りすがりのおばあも足を止める。

 

店主の山田さんお勧めのカプチーノは、これまで口にしたことがないほどのまろやかさ。ほのかなコーヒーの苦みは一瞬で消え、口の中には淡く柔らかなコーヒーの後味と優しいミルクの風味だけが残る。その、身体を内側からぎゅっと包み込むような味わいに、思わずほっと息をつく。

 

 

こだわりの豆を自家焙煎するコーヒー専門店「potohoto(ポトホト)」があるのは、栄町市場の中。老若男女、様々な人々が店の前を通り、そして時に立ち止まり、店の前で飲んだりテイクアウトしたりと流れが途切れない。

 


抽出にかける数秒でも味は変わる。コーヒーを淹れる目は真剣そのもの。

 

「コーヒーは元々は好きじゃなくて、むしろ嫌いなほう、美味しいと思わなかった。それが、焙煎したてのコーヒーを初めて飲んだ時にコーヒー自体が持つ甘さを感じて。それまで飲んだコーヒーは苦いか酸っぱいかで、甘さを持っているなんて信じられなかった。それがコーヒーに興味を持つようになったきっかけです。」

 

一生情熱を傾けられるものを模索していた時の出逢いだった。それから、コーヒーにのめり込んでいった。 

 

「元々コーヒー好きな妻は良い豆をネット注文したりしていて。それを、ネルドリップ(布製フィルターを使う抽出方法)とフレンチプレス(コーヒープレス器を使った抽出方法)で淹れたら本当に甘く感じて。」

 

自宅でゴマを煎る道具で豆を煎って自家焙煎を始め、その後、小型の焙煎機を購入して改造したりと試行錯誤を繰り返した。

 


毎日のように来てくれるという常連さん、笑いが絶えない

生の豆を自分で焙煎して味をみてから仕入れる

「ケニアのコーヒーは素晴らしい。他の土地に無い酸味と甘さがあり、ケニア産だとすぐにわかります。評価も高いので数年後は高価な豆になっているかも。」

 

どんな豆を仕入れているのですか?

 

「生産している農園が明らかであることが仕入れの第一条件。そうしないと良い豆と悪い豆が混じっている場合があるので。」

 

豆の向こうに顔が見えるくらいに?

 

「そうです。標高がどれくらいで、どういった土壌の農園で、いつ作られたかがはっきりわかる豆です。同じ品種でも土地柄でまったく味が変わってくるんです。」

 

コーヒーの美味しさの基準を尋ねると、「甘さです。」と、即答してくれた。「コーヒーというのは果物なんです。その果実の持つ『甘さ』にこそ、それぞれの産地特有の味が出ます。焙煎することでそこに苦みや酸味を付け加えていく。肉や魚がレアな状態の方が質の良さを吟味しやすいように、コーヒー豆も火を殆ど通さない状態で味をみます。」

 

乾燥・脱穀といった一連の作業を終えた生豆を焙煎してミルで器におとし、熱いお湯を注ぐ。その上澄みを口に含み、鼻と口に神経を集中させて味と質を見極める「カッピング」という作業をおこなう。

 

 

口に含むが飲み込まない。ワインのテイスティングに似ているという。「舌全体に霧状に吹き付ける、独特のやり方があるんです。」「これ、私はできないんですよ」と奥様。

 

「喉を通さなくても舌だけで味がわかるんです。判断基準としては、甘さ、酸味、味のバランス、全体的な後味、コク、とろみと色々あって。」

 



ケニアの豆をフレンチプレスで

 

そうして厳選され自家焙煎した各国の豆の中から、自分で好きな豆を選び淹れてくれるホットコーヒー。

 

口に含んで最初に感じるのは、山田さんが言うように「甘さ」。無論、砂糖の甘さではない、果実の持つ酸味と隣り合わせの甘さだ。その次に爽やかでほのかな酸味が香る。苦みはカーテンの向こう側にひっそりと隠れている。しかし、確かに存在する。コーヒーの概念を覆す味に思わず驚嘆の声を上げてしまう。

 

本当に甘い!コーヒーって、フルーツなんですね。

 

「そうなんですよ。」

 

得たり、とばかりに山田さんが微笑む。

 

「丸みが出るように淹れているんです。苦みが出てもすぐ消えるように。」

 

これだけこだわりぬいた豆、さぞや高価なのではと想像するが、コーヒー1杯の値段は200円と破格。
「試飲感覚で飲んで頂きたくて。」

 

「3杯飲んでも600円、安いもんでしょう。」と言う常連さん前には、飲み終えたコーヒーのカップがひとつ、またひとつと増えていく。

 

 

焙煎が追いつかなくなり、店の近所に専用のスペースを借りて焙煎室を設けた。

 

 

部屋を借りるほどの焙煎機とはいかなるものかと思って入ると、工場にでも置いてありそうな大きさの機械が姿を現し、度肝をぬかれる。

 

「みな驚くんです(笑)こんなに大きいのか!って。ね?potohotoに置けるような機械じゃないでしょう(笑)」

 


これまでの焙煎記録を詳細にノートに記し、より美味しい焙煎を目指して微調整をおこなっている

くすんだカーキ色をした生豆

30分ほど炉を温めて高温にしてから豆を投入する


徐々にローストされていく豆の様子をチェックし、細かい記録をとる


ついに焙煎完了、一面に漂うのは香ばしいコーヒーの香りではなく、お菓子屋さんのような甘い香り。袋につめ、愛おしそうに抱き抱える山田さん

 

コーヒー屋なら、地元でも出来たはず。なぜ沖縄で?

 

「夫婦で栄町市場の居心地の良さにすっかり惚れ込んでしまって。市場があったからこそ沖縄で開いたようなもの、ここ以外でやる気は今の所ありません。」

 

沖縄でも、普通に過ごしていればスーパーで買い物をし、誰とも話さずに1日を過ごすことができる。
しかし栄町市場は違う。

 

「とにかくみんな親切。初対面でも野菜がおいしいお店を教えてくれたり、料理の仕方を教えてくれたり。市場の食材はとにかく美味しくて安いんだけど、行きつけになるとおまけまでつけてくれて、そのおまけが多すぎて半分以上おまけになってたり(笑)歩いてるとパンや天ぷらと次々手渡される。夜も面白いもんだから夜な夜な出かけて・・・」

 

常連のお客様が話す市場の魅力を語るのを、ご夫婦も頷きながら嬉しそうに聞いている。

 

potohotoに向かう道中、方向音痴の私は市場の中で道に迷った。困った様子をみてとったのだろう、衣料品店のおばさんが店の中からわざわざ出て来て「どこに行きたいの?コーヒー屋さん?ああ、あそこはとっても美味しいのよ。そこの天ぷら屋さんを左に曲がってね・・・」時間をさいてわかりやすく教えてくれた。

 

ここには繋がりがあり、交流がある。古き良き沖縄で、日本で、普通に交わされていたふれあいが残っている。

 

「是非、夜の市場にもいらしてください、本当に面白いから。」

 

本土から移住した2人をトリコにした栄町市場と、栄町市場の人々に愛されるコーヒーショップ。ぜひそのふれあいの輪の中で、甘いコーヒーを堪能して欲しい。

 


COFFEE potohoto
那覇市安里388-1(栄町市場内)
open:9:00〜19:00
close:日
*コーヒー豆の購入も可能
HP:http://potohoto.jp
blog:http://coffeepotohoto.ti-da.net