消太郎:今回の東北地方太平洋沖地震では、津波により多くの方が亡くなりました。
東京大学地震研究所の現地調査によると、岩手県宮古市の田老地区では津波が高さ37.9メートルまで山中を駆け上がっていたことがわかりました。
37.9メートル・・・。
恐ろしい高さですね。建物で言うと約10階建てに相当する高さです。
国内最高記録は明治三陸地震(1896年)が発生した際、大船渡市で観測された国内最高の38.2メートルです。
10階建ての高さにまで津波が来たということですか?
消太郎:10階建ての高さの津波が来たわけでなく、海岸から内陸へ津波がかけ上がった高さ「遡上高(そじょうこう)」(標高)が、37.9メートルに達したということです。
下の説明図を見るとわかりやすいでしょう。
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なるほど、よくわかりました。
ということは、「津波の高さ」より高いところにいても危険ということですね。
消太郎:そうなんです。
津波の「遡上高」は、気象庁から発表される「予想される津波の高さ」と同程度から、高い場合には4倍程度までになることが知られています。
ですので、例えば、予想される「津波の高さ」が3mで、標高4mの高さの位置に避難していても安全とはいえないのです。
ご自分が住んでいるところの標高がどれくらいか把握していますか?
上の説明図を見てもわかるように、「津波の高さ」とは、津波がない場合の潮位(平常潮位)と津波によって海面が上昇した場合の潮位の差を指します。
自宅は海からは遠いけれど近くに川がありますし、川からの標高はあまり高くないような・・・。うーん、よくわかりません。
消太郎:良いサイトがあるのでご自分の住んでる地域を確認してみてください。等高線を見れば標高が確認できますよ。
http://watchizux.gsi.go.jp/index.html
たとえ海からは離れていても、近くに川があると津波は川を遡上してきますので、内陸部でも注意が必要ですよ。
確かに、今回の地震でも津波が川を逆流する映像を見ました。
消太郎:津波とは、普段の波の大きなタイプだと思っていませんでしたか?それは津波ではなく「高波」です。説明図で見てみましょう。
思っていました。でも違うんですよね。どんどん水かさが増していって・・・。
消太郎:そうなんです。津波は海底から海面までのすべての海水が巨大な水の塊となって沿岸に押し寄せるのです。
巨大な水の塊なのでパワーが非常に大きく、高さ数十cmでも足元をすくわれ、波にさらわれてしまうのです。
怖いですね・・・。津波注意報で予想される津波の高さが数十cmだからといって見物に行くのは危険ですね。
では、海岸近くで地震にあったときはどうすればいいですか?
消太郎:地震の揺れを感じたり、緊急地震速報を見たり聞いたりした際に、海岸周辺や海岸近くの河川周辺にいたら、津波警報とみなして直ちに高台に避難しましょう。
避難の指示や勧告を待たず、自主的に高台や避難地を目指してください。
津波や洪水は「早期避難に勝る対策無し」です。
小さな揺れだからといって油断せず、ラジオやテレビで情報を確認してください。明治三陸地震津波のときは「震度3」の小さな揺れでしたが、その30分後に大津波が襲ってきて、2万人以上が犠牲になりました。
その際、車で避難するのは危険です。北海道南西沖地震(1993年)のとき、奥尻島では車で避難しようとした人たちが続出し、狭い道路が渋滞しているときに津波に襲われて車ごと飲み込まれ、多くの犠牲者が出ました。
以前も書きましたが、近くに高台などがない場合は、鉄筋コンクリート造の頑丈な3階建て以上の建物の3階以上へ避難してください。
今回の津波では4階にいた方も被害にあっています。念には念をいれ、できる限り上階へ、高い建物へ避難しましょう。
海水浴中の場合は、監視員やライフセーバーがいる海水浴場では指示に従って避難しましょう。
川の側にいた時の対応は、川の流れに対して直角方向に素早く避難してください。
津波は川を遡上するので、流れに沿って上流側へ避難しても津波は追いかけてきます。
津波は繰り返し襲って来て、第一波の後にさらに高い波が来ることもあります。
今回の津波でも第一波が収まり、その間に再び貴重品やお金、通帳、大切なモノなどの荷物を取りに戻り第二波の津波に襲われた方が多数います。
いったん波が引いても、警報や避難勧告・指示が解除されるまで絶対に戻ってはいけません。
津波警報が解除になるまでは「念のため避難」を続ける必要があります。
沖縄も過去に起こった「明和の大津波」により1万人ちかくの犠牲者が出ています。
沖縄でもいつ起こってもおかしくありません。
地震だけでなく、津波に対する正しい知識を身につけておきましょう。
テレビや警報といった第三者からの勧告を待たず、自分で素早く避難することが何より重要なんですね。結果、津波が起きなければそれにこしたことはありませんが、津波が発生してから逃げても遅いですもんね・・・まずは自宅や職場の標高をしっかりチェックします!