消火器のエトセトラ。キッチンに置くのは良くない?

火災を発見したときの対応も教えていただけますか?


消太郎:わかりました。
初期の火災を消火するのに有効なのは、みなさん良くご存知の消火器です。
消火器の使い方についてはご存知ですか?


ピンを抜いて、レバーをひいて・・・


そうですね。使い方はとても簡単ですが、いざという時にはパニックになって使えないこともあります。
病院で火災が発生し、看護士さんが早期発見するもパニックに陥って消火器本体を火の中に投げ入れ、消火することができずに乳幼児が死亡するという痛ましい事例も過去にありました。
実際に私が出動した火災でも、幼児がライターを使っていたずらし、お母さんが早期発見するも消火器の使い方がわからなかったため全焼してしまったという事例もあります。簡単なようで、いざとなると難しいんですよね。


気が動転してるときでも使えるようにしておかなければいけませんね。


消太郎:その通りです。
消火器の正式名称は「ABC消火器」といい、普通火災・油火災・電気火災と、ほとんどすべての火災に対応する万能な製品です。
油火災とは油鍋などによる火災、電気火災とはトラッキング現象(コンセント等に長期間電源とプラグを差し込んでいると、たまったほこりが湿気を呼び、プラク両極間で火花放電が繰り返され、絶縁状態が悪くなって発熱し、ついには発火する現象)などによる電気が原因の火災で、どれも水を使って消すことはできません。


消火器って意外と優秀な製品なんですね。中は粉が入っているんですよね?


消太郎:魔法の粉が入っています。
と、子供たちには説明しています(笑)
リン酸アンモニウムという粉末が入っており、人体には無害といわれています。
ところで、この粉末自体が火を消すと思っていませんか??


えっ!!違うんですか?!


粉末自体に火を消す能力はありません。
燃焼している物体を粉末が覆うことで、空気を遮断し、消火にいたるのです。
火は酸素がなければ燃え続けることができませんからね。


ということはつまり、壁や天井の火を消すことはできない(一時的には消えても粉が落ちるためすぐに再燃する)ということになるのです。噴射しても、粉が落ちてしまって、発火部分を覆うことができませんからね。
消火器は、壁や天井ではなく床面などで燃えている火災に有効なのです。
壁や天井に火が移ってしまった時には、消火栓で消火するか、すぐに避難してください。





消太郎:では、消火器の使用方法を確認しましょう。
1、火災を発見したら大きな声で「火事だー!!」と叫ぶ
2、消火器を火の近くまで持ってくる
3、ピンを抜き
4、ノズルの先端を持ち、火に向ける
5、ほうきで掃くようにしながら近づき燃えている物体にかけていく


1)大きな声で叫ぶことにより、周囲の人の避難を促し、また火を消す助けが来るかもしれません。とても重要な行動です。
2)消火器は一度握ってしまったら使い切るまで止まりません。人間は物を持つとき無意識に握ってしまいます。火から離れた場所でピンを抜いて持って行き、火災現場に着く前に誤ってレバーを握ってしまったら・・・。消火器は必ず火の近くまで持って行き、ピンを抜いてください。
4)レバーを引くと、非常に強い勢いで消化剤が噴出します。ノズルの根元を持ってしまうと勢いでホースが暴れ、火に命中させることができません。


シンプルながらもやはり注意しなければならない点があるんですね。


消太郎:使用距離は熱気を感じるくらい、噴出時間は約12秒、消火器の大きさで変わりますので消火器に貼られてある表示を確認してください。


消太郎:ところで、消火器はどこに置いていますか?


火の気が多い台所での火災に備え、ガスレンジの横に置いています。


消太郎:ガスレンジ横ですか・・・。
油鍋火災を起こしてしまい、ガスレンジに置いた鍋から火柱が立っています。その状況で消火器が取れますか?


ハッ!!炎が怖くて取れません。近すぎてもいけないんですね。
消太郎:その通り。ですので、消火器は退路に置きましょう。誰もがわかる場所が良いですね。
次に、消火器を使うときの注意点・アドバイスをいくつか挙げたいと思います。


*消火器を使うときは、背中側に自分の退路を確保する
消火器を使うと粉が舞って視界が悪くなります。逃げ道を必ず確保して消火にあたってください。


*消火器を使って消火したあとは、水でとどめを刺す
再燃の恐れがありますので、必ず水をかけてください。特に、布団やコタツの掛け布団などは、消火したように見えても内部で無煙燃焼していて再燃する可能性が高いです。水をかけるだけでなく、湯船に水をためて浸けておきましょう。


*損傷の激しい消火器は使用しない
腐食・亀裂などの損傷がある消火器は危険です。死亡事例もありますので気をつけましょう。


*油鍋火災の時は、直接鍋に向かって噴射しない
噴射の勢いで油が飛び散り、火災の拡大、やけどの恐れがあります。直接噴射せず壁やレンジフードに当て間接的に粉をかけると安心です。



消火器には使用期限のようなものがあるんですか?


消太郎:通常8年くらいですが、保存状態などにもよります。
時々、消火器を逆さにして、中の粉が固まらないようにするといいですよ。


ありがとうございました。早速、ガスレンジ横の消火器を移動させます!

消太郎