立秋が過ぎ、暦の上ではもう秋。
まだまだ夏の空の広がる沖縄では、秋といってもすこしピンとこない。
けれど、秋という響きは郷愁があって切なくて、もうしばらくしてすこしずつ涼しくなるであろう景色を想像しては、心地よい気持ちになる。
七月も終わり、八月もなかば。
企画展が終わり、常設でも手仕事の美しい器やカトラリーが充実しています。
そのなかには、あゆみさんの目を通してShoka:へやってきたアンティークも。
古いものには、私たちのみたことのない景色が記憶されている。
小さな銀の匙、滑稽な表情の動物たち、手のひらサイズのものたちに100年の時間が確かに存在しているのだ。
このこたちを眺めていると、その表情がおもしろくて笑いかけてみたくなる。
これは19世紀のカトラリーレスト。
木の実を食べているあたりリスだろうか。
左の子の足がすこし短くて、愛嬌があるのもいい。
ものにも、愛嬌があるとより愛おしくなるように思う。
横顔もなかなかの愛らしさ。
くまのワイン栓。
ものの存在には、いつも余白があって面白い。
ワインを栓するために作られたものでも、誰かの手に渡ったときにまた新しい存在価値ができるのだと。
まるで踊っているようなこの子にきれいな指輪やブレスレットをもってもらうと、きっと愛らしいだろうと思い浮かべてみる。
細やかな細工が美しい銀の匙。
古くから銀の食器は祝福の贈り物とされることもおおく、佇まいに幸せがふくまれているように感じる。
きっといろんな場所でいろんな人の幸せをみてきたであろう、可愛い可愛い双子の銀の匙。
象牙の柄のバターナイフとフロマージュナイフ。
細やかな彫りがとても贅沢。
食事のひとときに、このナイフがあればもうそれだけで豊かな心持ちになる。
19世紀 フランスの吹きガラス。
古い硝子のゆらめきは、ほんとうに特別なものだと思う。
光を放ったときのこの整然とされていない影も、ほんとうに美しい。
そこには、100年以上前の息づかいがとじこめられているよう。
ゆらめきのある硝子越しの景色も、また味わいがあって人間味を感じる。
使うたびに、小さな時間旅行へ。
いつか誰かが憧れて愛したものを、暮らしのなかに置いてまた愛しつづける。
そして、その価値はまた手にとった私たちがつくっていくという楽しみがある。
アンティークには、たまらないほどのロマンがつまっているのだ。
Shoka:のオリジナルの入れ子になった「マトリョーショカグラス」
再生ガラスで作られたグラス。
独特な歪みや細やかな気泡、ここにも人間味にあふれたあたたかな手仕事。
この気泡のなかにはきっと、むせかえるような南国の空気がとじこめられている。
重ねても愛らしい佇まい。
どこに居ても、暮らしの中のいい景色の一部になってくれるだろう。
透明なグラスにはソーダ水がよく似合う。
泡が南国の空気をふくんだ気泡に混じって、グラスのなかで踊っている。
グラスに耳を澄ませてみると、プチプチと空気が小さく弾ける音が聞こえてきた。
まるで夏の音だと思った。
まだまだ夏は終わらないよとグラスの泡が言っているような気がした。
写真・文 桑田さやか
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9月15日(土)~24日(月)
赤木明登の漆の器展
「21世紀民藝」を書き終えた赤木さんは一体どのような視点で自身の創作活動を見つめているのでしょうか。塗師として四半世紀あまり木と漆で作る「うつわ」を通して世界に向き合ってきた彼の新境地に触れるのがとても楽しみです。
今回の展示で白漆の器たちが見ることができるのも心待ちなのです。
*トークイベントなど決まりましたらまた詳細をアップいたします。
暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
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