暮らしの中で

文/写真 関根麻子

 
 

 
 
 
 
 
 
久しぶりの休日。
梅雨の晴れ間の気持ちよい陽。
風を孕んだシーツを眺め、好きなピアノのCDを聴く。
 
お昼ごはんをどうしようか。
野菜不足だった最近。
手に入れたばかりの三谷龍二さんの漆の器。
ちぎっただけの野菜を、がばっと盛る。
自分の暮らしの友人にと、ずっと欲しかった白漆の施された三谷さんの器。
 
野菜むしゃむしゃ、器の肌を親指でなでなで。
 
何とも愛おしい。
 
 
 

料理を盛った三谷さんの白漆の肌。彫りの跡を何度も何度も触りたくなる。

 
 
 
 
すばらしい作品との出会い、それを生み出す作家さんとの出会いは、暮らしを豊かにする。
普段慌ただしく日々を送っていても、自分が風景の一部となる暮らしの時がある。
そこに、必ず心地よい器があり、心地よい服があり、心地のよい道具がある。
それらと自分が一つの風景となって馴染んでゆく、そんな暮らしの中の時間を大事に思う。
 
好きなものと暮らす毎日。
何とも贅沢なひびきに感じるが、それは「たくさんのものと」という意味ではない。
本当に自分に必要なものだけでいい。
ある意味、恋におちるくらい好きなもの。
 
自分にちょうどいい、だけれども心が動くもの。
 
 
 
 
 

先日の企画展から。安藤雅信さんと、皆川明さんの手と手、心と言葉のキャッチボールから生まれた大皿

 
 
 
 
最近気づいたことがある。
 
今年はじめに買ったカメラの中の写真を整理していた。
展示の際に撮ったものと、少しだけ暮らしの中の瞬きを撮った写真。
 
少し驚いた。
その写真たちは、全体のフォルムよりもこれでもかと作品にひたすら寄ったものが圧倒的に多かった。
 
なぜだろう?首をかしげる。
 
 
 

安藤さんの銀彩皿。何ともいえない渋い光とともに浮かび上がる模様たち。

 
 
 
ふと思いあたった。
 
すごく好きな作家さんが、Shoka:での企画展が決まった!となれば、わくわくが溢れ出す。
会ったらこんなこと聞きたいな、などとたくさん想像する。
しかしながら実際お会いする段階となると、心がヒートアップしすぎてもじもじと。
どうしてか緊張屋に変身してしまう。
聞き手としては耳がダンボとなるのだけれど、いざ自分からは質問できずにいることが多い。
作家さんのことを好きすぎて話したくても話せないとお客様が言っているのをよく聞きますが、そのお気持ちがすごくわかるのだ。
 
 
だからなのだろう。
作品を通して、その人となりをもっと知りたいと思うのだった。
そうした想いから、シャッターを切るのだろう。
作品の肌の深み、表情から、作ったひとの顔が浮かびあがる。
 
すばらしい仕事をされている方は、軸がしっかりとある。
その時代時代に合わせて変化していっても、軸は変わらない。
その軸を感じる作品には、人となりが表れ出る。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
そして、さらにそれを使う人達の暮らしをも想像してみる。
 
その器には何を盛るのだろう、その服を着てどこへ出かけるのだろう。
 
風景が浮かんでくる。
とても豊かな風景だ。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
Shoka:で働くようになって、はや10ヶ月。
関わってから、開催してきた展示会は8つにものぼる。
今年に入ってからはほぼ毎月のペースで、すばらしい仕事を見て、触れることができた。
いずれも暮らしを豊かな気持ちにするものたち。
 
 
そして先週までは、木工作家三谷龍二さん、陶作家安藤雅信さん、ミナ ペルホネン デザイナー皆川明さんによる
NO BORDER, GOOD SENSE を開催した。
 
 
服を着て、頬を染め、こんなときめくのは久しぶりと、とあるお母さん。
木の肌をじっと長い時間眺め続けている、若い木工作家のかた。
ご年配の夫婦は、ちょうちょの陶器に何を料理しようかと相談。
 
訪れた人達からはそれぞれの熱をおびた喜びが伝わり、空間いっぱいに広がっていった。
そして作家さん、いらした方々、そして私たち、皆が一体となってるような感じを覚えた。
 
 
 
今回のタイトルにもある「境界線」というもの。
三氏やそこから生まれたすばらしい作品たちを目の前にし、当たり前の事に私は気づかされた。
境界線とは、実は自分自身で作ってしまっているものなんだと。
とても新鮮だった。
境界線を解放すると、どれだけのことが広がっていくのだろうと想像し、どきどきした。
 
私も心の熱を感じ、いまだ覚めていない。
湧き出た感覚を、今静かにすくいとる作業をしている。
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
さて、これからのShoka:は、どんどん変化をしていきます。
 
8月3日から12日までは、赤木智子さんが日々の暮らしの中で選んで来た、
使い勝手の良い道具たちの企画展「赤木智子の生活道具店」を開催します。
沖縄へやってくるものたちのリストを見ましたら、これまた胸躍る楽しそうなものばかりでした。
 
 
8月の後半からは常設の店舗へと。
企画展でも開催しているミナ ペルホネンやヨーガンレール、
また沖縄で初のアーツ&サイエンスなどのお洋服と雑貨達が並びます。
さらに県内の作家さん達と一緒に素敵なものづくりを考えている最中で
いろいろな風が吹いてくると感じています。
 
 
それまでは改装工事や常設準備などで一旦お休みしますが、みなさん少しの間お待ちくださいね。
常設や、今後の展示会については、こちらのカレンドの連載や
Shoka:のブログ http://shoka-wind.com にてお知らせしていきます。
 
 
 
 
軸を変えずに変化を楽しむ。
私も自分の軸を意識しながら、暮らしの中の豊かな時間を楽しんでいきたいと感じています。