Lunasunchi(ルナサンチ)タイでも継承者の少ないマッサージ法「ナーブタッチ」でからだの声を聞く。


 
「タイ古式マッサージ」という単語から連想されるような、
身体をえびぞりにしたり、
両腕をぎゅっとひっぱったりというような
アクロバティックな技は一切登場しない。
 
むしろ、指圧やオイルマッサージと比べても、さらに穏やかな手技。
ゆっくりとゆすったり、優しくさすったり。
一番強くても脚をグッとひっぱる程度。
それも痛みは一切感じない。
 
「殆どの方が半覚半眠の不思議な感覚なんです。」
 
と、セラピストの上原ルナさんは言う。
 
私は身体にいくつかの慢性的な不調を抱えているが、
中でももっとも頭を悩ませているのが偏頭痛。
ひどい時には週に何度もひどい頭痛に見舞われ、痛み止めは常備。
同様の症状を訴えて訪れる人は多いと言うが、
「あくまでもリラクゼーションなので症状改善を大々的にうたってはいないんですが、症状改善に繋がる方が多いです。」
 
結果的に私の場合はどうだったかというと、
確実に改善がみられた。
施術を受けて1ヶ月以上、一度も偏頭痛は起こらなかった。
頭痛の予兆はあるのだ。
このまましばらくすると痛み始めるぞ、という確実な予感まではするのだが、
実際の頭痛にまでは至らない。
薬を飲まずにこんなに長く過ごせたのは久しぶりかもしれない。
 
「施術後3日目くらいから、実際の効果を実感できると思います。
殆どのお客様がリピートしてくださいます」
 
というルナさんの言葉が腑に落ちた。
 

 
– – – 触れること、相手が喜んでくれることに魅せられて。 
 
最初からタイ古式マッサージをしていたわけではなくて、
これまで色んなマッサージの勉強をしてきました。
もともと自分もマッサージを受けるのが好きで、
疲れがたまったら行くという感じだったんです。
 
それを仕事にしようと思ったきっかけは長男のぜんそく。
薬ばかり飲んでいたので自分にも何かできないかと。
自然療法スクールで勉強したり、アロマの学校に通ったり。
オイルは勉強して7年になります。
もともと精油とかまったく興味はなかったのですが、
アロマの授業で実習があったんですね。
そのときに触れることの心地よさを知り、
また、相手にも喜んでもらえることが嬉しかったんです。
実習の相手になってくれる人が
「すごく気持ちがいい」「優しさが伝わる」
なんて言ってくれて。
それに魅せられたんですね。
 
あれよあれよといううちにハマって、
東京に行ったり、柔道整復師の先生についたり。
色んなセラピーを試していた時に、タイ古式マッサージに出逢いました。
 

 

「痛くないのに気持ちがいい、何度受けても不思議です。」 
 
– – – 初めて受けた手技に一目惚れ、その場で受講を申し込みました。 
 
私の手技にはストレッチが足りないと感じていたので、
タイ古式マッサージを取り入れようと思っていました。
子供が3名いることもあり、
自宅から近いところじゃないと受講しないというのが私のポリシーで
難なく勉強に通える場所のお店をすでに決めていたのですが、
タイ古式マッサージに詳しい方に
「今まで色々と行ったけれど、沖縄市の『サマディ』が一番」
という話を聞いて。
遠いから通えないけれど、そんなに言うならとマッサージを受けにいって、
結局、「受講させてください」とその場で申し込みました(笑)。
 
今まで受けたことのあるタイ古式マッサージとは感覚がまったく違ったんですね。
不思議な感じが面白くて。
指圧やストレッチですっきり感をだすのではなく、
弱い指圧の中にふわふわと浮くような。
終わったときには「え? 終わったの?!」という感じだったんですが、
それから爽快感がやってきて。
 
そうやって、沖縄市まで2年間通いました。
 


 

霊感は一切ない、霊視ももちろんできないと断言するルナさんだが、施術しながら「どうしてそんなことまでわかるのだろう?」というようなことを時々口にし、その全てがズバリ当たっている。「お客様の風を探っていくと、時々ギフトが降りて来ることがあるんです」とだけ明かす。
  
– – – 第三者も共有できる、曖昧ではない手技 
 
タイの医学理論では、リンパ管や中国医学の経絡(けいらく)のように、
体中にSen(セン)と呼ばれるエネルギー経路が流れていると考えられています。
そこにLOM(ロム)と呼ばれる風が流れていると言われていて。
それはもちろんレントゲンにも映らないし科学的証明はなかなか難しいけれど、
私が行う「ナーブタッチ」という手技ではそれをつかむことができるんです。
また、体内の風に触れることで人間本来の治癒力や免疫力を高めることが可能だといわれています。
 
ナーブタッチの特徴の一つは、その効果を第三者も共有することができるということ。
例えば、気功だったら気を入れますよね。
それは気功師と施術された人は「温かくなった」とか「元気になった気がする」という感覚を共有できるけれど、見ているだけの人、第三者には実際どうなのかというのはわからないですよね。
ナーブタッチでは手に触れると風を感じることができるんですけど、
そこに触れている術者(私)と受けている人と、その人の腕を触る第三者も
今ここにしびれがきたというのをちゃんと共有できるんです。

風が集まりすぎたり少なすぎたりすると症状が起こると言われています。
例えば腱鞘炎だと手首のあたりに風が集まっている。
それは血液でもリンパでもないんですね。
ツボともちょっと違う。
 
ナーブタッチ最大のポイントは、イメージを一切使わないんですよ。
例えば気功でも気をイメージしますよね。
瞑想も「誘導瞑想」などは「今目の前に草原がありますよ」というふうにイメージするように促します。
タイマッサージにはそれがない。
そこにあるものだけをつかみ、みていく。
なので、施術する側としても曖昧ではないのです。
 

「お腹に触れると色んなことがわかります。ほら、中井さんはドクッドクッと脈を打っているようでしょう?これが風です、脈ではなくて。」確かにドクドクと感じたし、その後自分で手を当てたらそれが脈ではないことがわかった。「こちらの方は脈のような風ではなく、熱をもった感じ。人それぞれ出方が違うんですよ。」
 
– – – 関節や首、肩の痛み、目の疲れ・・・すべてにアプローチし、妊婦も子供も受けられる。
 
今の主流はアクロバティックな技を重視したタイ古式マッサージ。
それももちろん腱を伸ばすので気持ちがいいですが、
ナーブタッチで得られるのはまた別の爽快感です。
「なんだかよくわからないけど気持ちがいい」とか、
「身体だけじゃなくて心も軽くなった感じがする」など、
感想は人それぞれです。
 
ナーブタッチは2500年前から口伝によって受け継がれてきました。
タイ本国でも受け継いでいる人が少ないらしく、
消えかけているかもしれないという技法です。
 
身体の様々な症状、
関節の痛み、首の痛み、肩の痛み、目の疲れなど、すべてにアプローチしていきます。
妊婦の方やお子様、ご高齢の方、どなたでも大丈夫。
熱がある方でも受けられます。
 
お子様の場合、皆様様々な理由でいらっしゃいます。
小学生くらいですと発達障害、多動性障害、アスペルガー症候群、夜眠れない・・・
症状は様々です。
感覚が鋭いと、「ふわふわしてきた」「熱くなってきた」と、敏感に感じとる子もいます。
みなさん「気持ちが良い」と言ってくれますね。
それが実生活でも良いふうに影響したり。
ぜんそくの子は鼻のつまりが改善したりとか。
 
一番最近の例で言うと、私の娘がぎっくり腰したんですよ。
私が施術してもいいんですけど、親子だと甘えが出ちゃうのでサマディまで行ったんですね。
すると、施術直後から
「すっごく気持ち良かった〜」
と元気になっちゃう。
 
現代人は忙しいので、
サッとやってサッと帰るというのももちろん大事だと思いますが、
風をとらえて最後までしっかり施術するとなるとどうしても最低90分かかるんです。
できれば120分。慣れていただけると3時間とか。
タイでは4時間くらいかけているみたいです。
 

「右の腰に風が集中してますね。左の首に何かがあるのかもしれません。」
 

「膝の裏にコリコリするものがありますよね? この感じを覚えておいてください、これは腰の神経と繋がっているので、これを解除すると腰がラクになります。こうやってしばらく膝の上に手をのせておく。これだけなんですよ(笑)。」 施術したあとに再度膝裏をさわると確かにコリが消えている。
 
– – – 忙しい現代人、ONとOFFをしっかり分けて、本来のリズムに気づいてほしい。
 
ナーブタッチは、その方本来のリズムに戻していくことも目的の一つです。
今は何もかもがスピーディーですから、
「ゆっくりでもいいんだな」
というのを、ご本人が改めて理解し直せるように。
 
みんな昔からこんなにはハタハターしてないですよね?
働く女性すべてに言えることは、ONとOFFをしっかり分けること。
仕事は何時まで、何時からは家族との時間、この日は絶対休む、というふうに。
「休めって言われてもどうして良いかわからない」
という方も多いんですが、
休むというのは何もしないということじゃなくて、好きなことをするということ。
例えば映画を観に行く、大好きな本を読み直す、散歩にでかける、という風に。
 
人生って短いけれど、せっかくだからすべてやりたいんですよね。
仕事も家事も育児も。私だってそう。
でもキャパは決まってますから、
今日はこちらをONにして家族DAYにしようという風に時間を配分する。
なにごとも塩梅が大事なんですよね。
それを、ナーブタッチを通して再認識して頂けたら嬉しいです。
 

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ルナさんは、
「最低これくらいは来てもらわないと・・・」
というような頻度の制約を一切口にしない。
 
「好きな時に受けるのが一番良いんです。
それに、『今まさに痛い!』っていう時の方が効果もわかりやすいですから。」
 
本人がそう言っても、リピーターになる人は後をたたない。
大体1ヶ月くらいで再度訪れるという。
 
 
施術が始まってすぐ、私の脚を持った瞬間、
 
「ほら、今ここに力が入っているの、わかりますか?
普段からこれくらいの力を常に入れてお過ごしなんです。
脱力しても良いんだってことを忘れて、
いつも自分に緊張を強いて毎日を過ごしてらっしゃる。
ずっとこうだと普通に考えて疲れますよね。
だから、楽にしていいんですよ。」
 
と言われ、思わず涙が溢れそうになった。
 
私たちは忙しい。
今日もやることリストはいっぱい。
仕事を終えて帰宅しても家事が山積み・・・
 
本当の意味で自分にお休みを言い渡せるのは自分しかいない。
風をつかむルナさんと、自分の中の風がそれを教えてくれる。
 

写真・文 中井 雅代

 

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