『 ナマケモノのいる森で 』森が飛び出すポップアップ絵本。クリスマスプレゼントにも。

ナマケモノのいる森で
しかけ/アヌック・ボワロベールとルイ・リゴー
ぶん/ソフィー・ストラディ   やく/松田素子 アノニマスタジオ ¥2,310/OMAR BOOKS
 
― 前から、横から、真上から ―
  
 朝夕はだいぶひんやりするようになった。もうすぐ12月に入り、冬がやって来る。
「冬の森」をテーマにした企画展をやることになり、この2、3ヶ月というもの「木」「植物」「森」についての本を時間を見つけては読んでいた。
詩集、エッセイ、学術書、絵本、写真集、図鑑、そして小説、。それはもう限りがなく、枝葉のごとく広がってそれこそ森の中に分け入っていく感覚があった。 
そんなときにこんな本があるよと教えてもらったのがこの「ナマケモノのいる森で」。
 
細長い、ちょっと変わった製本のフランス生まれのポップアップ絵本。
いつも素敵な本を出している出版社のアノニマスタジオから出た翻訳版。
  
ナマケモノのいる森で
 
表紙を開くと「わっ」と声をあげてしまうような、木があふれた森が飛び出してくる。これはもう見てもらわないと。
 
森の中では、鳥もヒョウも、アリクイも人も、ナマケモノも一緒に生きていて、木々のあいだのあちこちに隠れていて見つけるのも楽しい。
前から、横から、真上からも眺めてナマケモノを探しながら大人と子供が一緒になって遊べるような一冊。
 
ストーリーはその木々にあふれた森にあるとき冷たい金属音が響いて、木が切り倒されていく中でナマケモノが取り残されてしまう。その痛々しい様が立体で表わされる。
そのあとに広がるのは木々がすっかり切り倒された、裸の地面が見える寒々しい光景。そこに見えるのは現実の森だけじゃない。同時に、それを目にする私たちの心の中の森にもきっと悲しく冷たい風が吹いている。
 
みんなが一緒になって生きていたあの豊かな森を取り戻すにはどうすればいいのだろう?
この絵本はそれをごく自然に読む人に投げかける。
 
木々の世界では、彼ら独自のネットワークが、まるでインターネットのように世界中で、国境を越えて張り巡らされていると聞いた。
 
この本もまた多くの人の手に渡ってその様々な垣根を越えて広がってくれたらなあと思う。
 
年代問わずクリスマスプレゼントにもなるポップアップ絵本。
おすすめの一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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