「クロワッサンって、生地が層を成してるんだ…」
一口食べて、そのことを強く実感した。
外はカリッと香ばしく焼かれ、幾重にも重なった生地には弾力がある。
「サクサク・フワフワというより、外はザクっ、中はモチモチとした食感になるよう、皮は厚めに作っています」
確かに噛みごたえはあるが、硬いわけではない。
ほどよい歯ざわり。
生地の食感を楽しんでいると、次第に「じゅわっ」と何かがしみだしてくる。
生地と交互に重ねられたバターだ。
「パサパサした食感」というイメージを覆す、ジューシーなクロワッサン。
「バター100%で作っています。
バター以外の素材にもこだわっていて、例えば、チョコレートはカカオから自分で作っているんです」
「板状のチョコレートを溶かして使うのではなく、カカオを使って手作りしているので、苦みや甘みの度合いを自分で調整できるんです。使用するパンによって大人っぽくビターに仕上げたり、甘めにしたり。
アップルクランブルデニッシュはりんごを煮ることから始めますし、スウィートポテトデニッシュでは市販の芋あんは使いません。さつま芋から作った自家製スウィートポテトを乗せて焼いています」
レモンデニッシュという珍しいメニューについ手が伸びた。
爽やかな酸味のあるクリームが、コクのあるデニッシュ生地によく合う。
「シチリアから取り寄せたレモンジュースを使い、レモンクリームを手作りしています」
手間を惜しまず、おいしさを追求する。
安全性も折り紙付きで、添加物は一切使用していない。
天然酵母パンなどのナチュラルブレッドも人気だ。
店のコンセプトは「自分へのごほうび」。
「うちのパンがお客様のお気に入りの一つになったら嬉しいです。
『明日はお休みだから、maybe bakery でパンを買って帰ろう』という風に」
2012年10月にオープンし、わずか4ヶ月。
すでに足繁く通うファンも多く、リピート率も高い。
「沖縄は、東京に負けずとも劣らぬパン屋の激戦地区。
2年ほど前に旅行で沖縄を訪れたのですが、その頃と比べると格段に店舗数が増えているので驚きました。
どのパン屋にもそれぞれの個性があると思うので、当店の個性とお客様のニーズとのバランスを考えながら店づくりをしていきたいですね。
『私の求めているパンがここにある』と思っていただけるように」
オーナーの大澤正之さんが東京から沖縄に移住してきたのは2012年2月。
ベーカリーショップをオープンさせる土地として北谷を選んだのには理由があった。
「東京でもヨーロッパスタイルのパンを中心に作っていたので、北谷という土地だと受け入れてもらいやすいのではと思ったんです。特にアメリカの方に好みを合わせてパンを作っているわけではありませんが、外国人のお客様も多くいらしています」
ビビッドカラーで彩られたアメリカンスタイルの店が立ち並ぶ北谷において、maybe bakery の店構えや店内の雰囲気は異彩を放っている。
落ち着いた色調の欧州風の内装、ハイセンスな空間に並んだ数々のヨーロッパスタイルのパン。
「店内にはイートインスペースも設けました。
お子様連れのお客様や、コーヒーとともにゆっくりパンを味わいたいという方にもお勧めです」
アラハビーチまで徒歩数分という立地で、朝7時からのオープン。
焼きたてのパンを片手にビーチまで歩き、朝の静かな浜辺を散歩しながら味わうという楽しみ方もある。
「僕も浜辺で食べたことがあります。
沖縄ならではですよね、すごく気持ちがよかった」
ドリンクも販売しており、ホットコーヒーは1杯180円で提供している。
食事系のパンも大好評だ。「はみ出すほどの大きさのベーコンを挟んだバゲットも人気なのですが…売り切れちゃいましたね」
ラズベリーショコラやブルーベリーベーグルなど、オープンしてから考案された新作も多いが、今後は県産品を使ったパン作りにも取り組みたいと言う。
「スウィートポテトデニッシュを、紅芋で作ってみたらおいしそうだなぁと考えていて。
また、米粉のパンやごぼうサラダのサンドイッチ、チョコレートのクグロフなども新作として登場予定です」
リピーターになる人の気持ちがよくわかる。
種類が豊富なので、一度で全種類を制覇するのは難しい。厳選して購入するも、その全てがことごとくおいしいので、「やっぱりアレも買えばよかった…。次こそは!」と、その日買ったパンを頬張りながら、すでに次の機会を待ちわびてしまう。
求めやすい価格も嬉しい。
毎日だって自分へのごほうびを買いたくなる。
北谷に佇むヨーロッパスタイルのベーカリーは、今日もあなたのためにこだわりのパンを焼いている。
写真・文 中井 雅代
maybe bakery(メイビーベイカリー)
北谷町北谷2-18-6
098-911-6923
open 7:00〜19:00
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