PIZZERIA ONDA(ピッツェリアオンダ)創作はしない。本場ナポリの味を忠実に再現したピッツァを。

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これが一人前? と、思わず目を見張るほど大きなピッツァ。
モッツァレラチーズ、生ハム、たっぷりのルッコラをのせた「モンテビアンコ」だ。

 

「本当はもっと大きい。これでも少し小さくしたくらいです」
と、オーナーの鈴木学さん。

 

フォークとナイフで切り分けて口に運ぶ。
生ハムが主張するピッツァかと思いきや、意外にも最初に香るのはルッコラ。
その独特な匂いがツンと鼻をつくのだが、これがモッツァレラチーズの風味と最高にマッチする。
それにしても、ルッコラってこんな香りだっただろうか? 存在感の大きさに少々面食らいつつ、まじまじと見ると、葉のサイズもなんとなく大きい気がする。

 

「新鮮なルッコラを厳選して買いつけています。元気に大きく育ったものは、甘みと苦みがしっかり出るんです」

 

瑞々しいルッコラは、甘みのある生ハムとの相性も抜群だ。

 

「イタリア産の生ハムを使っています。塩加減が絶妙で、日本のものと違ってしょっぱくない。逆に甘いんですよ」

 

そんなこだわりのピッツァを焼き上げているのは、厨房の中央に鎮座するイタリア製の薪窯(まきがま)。
ナポリのピッツァ窯職人、ステファノ・フェッラーラ氏によるものだ。

 

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オーダーが入ると、生地を収めた木製ケースの蓋を開ける。
もっちりと膨らみ、つやつやと光る生地は、焼く前といえどいかにもおいしそうだ。
その中から、ほどよく発酵し、今がベストと言える状態のものを一つ選ぶ。

 

「発酵が少しでも足りなかったり逆に進みすぎたりすると、おいしく焼き上げることができないんです」

 

素人目にはどれも同じように見える。目をこらしても違いを見つけることは難しいが、鈴木さんは迷いなくひとつの生地を手に取った。

 

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選んだ生地をリズミカルに伸ばしていく。

 

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トマトソースを塗り、モッツァレラチーズとフレッシュバジルを置いていく。

 

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パルミジャーノレッジャーノを惜しみなくふりかけ、いざ窯の中へ。

 

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窯は生きていると、窯を扱う人々は言う。
ピッツァ職人、パン職人、陶芸家、ガラス職人…。
窯の内部の状態だけでなく、その日の天候や、薪一本の位置によって、窯の状態はがらりと変わる。自分ではどうすることもできない要素も関連してくる。窯は難しい、だから楽しいと。

 

「一枚一枚が真剣勝負ですよね。
ピッツァの種類によっても焼く時間を変えています。マルゲリータは粉の香りを引き立て甘みを出すため、一分半前後焼きます。モンテビアンコの焼き時間はもっと短い。焼きすぎると、ルッコラの苦みと生ハムの甘みが飛んでしまうのです。だからといって生焼けではいけない。軽く、でもちゃんと焼く。
また、窯の中でピッツァを置く位置も、のせる具材によって細かく変えています」

 

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窯に入れてから焼き上がるまで1〜2分。あっという間だが、鈴木さんはその手を休めることはない。
薪の位置を微妙に変え、焼き上がる直前まで調整し続ける。

 

「当店一番人気のマルゲリータです、熱々のうちにお召し上がりください」

 

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濃厚なモッツァレラチーズに負けじと、生地が強く香る。
鈴木さんの狙い通り、絶妙な火加減で焼き上げられたことで、粉の匂いが引き立っているのだ。
さくっとした歯応えのあとにモッチリ感がやってくる生地は、これが本格的なナポリピッツァだということを証明している。

 

イタリアの味を覚え、その技を身につけるため、ナポリに短期滞在したこともある鈴木さんは、イタリアンの料理人として14年の経歴をもつベテランだ。
本場の味にこだわり、素材も週3回、イタリアから空輸便で取り寄せている。

 

 

「ソースを添えるフレンチと違い、イタリアンはシンプル。だからこそ、素材選びで手を抜くことはできません。粉、生ハム、モッツァレラチーズなどはイタリア産のものを使っていますが、野菜は自然農を貫く、沖縄の『モリンガファーム』さんのものを使用しています。野菜が本来持つ甘みが引き出されていて、とてもおいしいんです。例えば、セロリは全然えぐみがないんですよ。苦手だという人も食べられると思います」

 

 

 

 
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ショートパスタにはBARONIAのリガトーニを使用。イタリアから届くモッツァレラチーズはパッケージも愛らしい。

 

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使用している粉は、ナボリの老舗メーカー「CAPUTO」のもの。ナポリのピッツァ屋スタッフがそうであるように、CAPUTO のロゴ入りTシャツとエプロンがユニフォーム。

 

鈴木さんのこだわりは、「創作しないこと」。
あくまでも、本場ナポリの味を追求する。

 

「長年イタリア料理を作り続けていますが、一番好きなのがナポリピッツァなんです。材料が同じでも、作る職人が変わると味がまったく違う。窯の扱い方もそうですが、繊細で難しい。好きな理由は、やはりそこにあるのかもしれません」

 

料理だけでなく、店内の雰囲気にもナポリを感じさせるよう、工夫をこらしている。例えば、店内で流れているイタリアのラジオ。

 

「ナポリのピッツァ屋って大衆食堂みたいな感じなんです。そこでは常にラジオがかかっているんですね。それを再現したくて」

 

ナポリピッツァの専門店としては珍しく、テイクアウトも可能だ。

 

「ナポリでもあるから、というのも理由の一つですが、小さいお子さんがいるご家庭でも味わっていただきたくて。当店も家族連れ大歓迎なのですが、外出できないくらい小さいお子さんがいらっしゃるとか、子どもが風邪を引いたから外で食べられないとか、そういう時にも楽しんでいただけたらなと」

 

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1936年創業の老舗メーカー「フィオレンツァート」のエスプレッソマシーン。

 

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ピッツァを手に持つ道化師の名は「プルチネッラ」。ナポリピッツァの協会に認定された店舗に掲げられる認定マークには、このプルチネッラがピッツァを焼いている図柄が使用されている。

 

ランチセットのドリンクとして、ワインを注文できるというのも珍しいサービスだ。

 

「イタリアでは、おいしいものは酒と一緒に味わうという習慣があります。良い酒が料理を引き立てると考えられているんですね。そういう価値観や文化も楽しんでいただけたら」

 

また、夜はバール(=バー)をオメージし、ビールやイタリア産ワインに合う肉料理も提供している。

 

「ワインは今10種類ちょっとあるのですが、いずれ100種類くらいまでは増やしたいと思っています」

 

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鈴木さんが目指しているのは、「ナポリピッツァが沖縄そばのように身近な存在になること」だと言う。

 

「沖縄の方って、かならず行きつけのそば屋さんがありますよね? 『自分はあっちのそばが好き』という風に。ナポリピッツァもそれくらい店が増えて、好みの店を選べるくらいになったらいいな、と」

 

県内ではまだ数少ないナポリピッツァを食べに、同業者が訪れることもよくあるという。その際、「どういう材料を使っているのですか」といった質問があれば、鈴木さんは快く粉などを分けている。

 

「ナポリピッツァが好きだからこそ、沖縄にもっと広まってほしいんです。そしていつか、ピッツァ職人協会沖縄支部を作るのが夢。イタリアには実際そういう組合があるんです。みんな夏になると1ヶ月ほどバカンスをとるのですが、その間店を閉めるのではなく、組合が職人を店に派遣するんです。そうやって店を手伝いあったり、情報交換したりする。沖縄でもそういうことができたら素敵だろうなーって」

 

名字と間違われるという「オンダ」は、イタリア語で「波」の意。「いい波に乗って末永く愛される店となるように」との願いを込めた。
誠実で一本気な鈴木さんの人柄、そしてもちろん本格ナポリピッツァはきっと、これからも多くの人を惹きつけるだろう。

 

写真・文 中井 雅代

 

PIZZERIA ONDA PIZZERIA ONDA
PIZZERIA ONDA(ピッツェリア オンダ) 
浦添市港川2-13-7 41番
098-943-2960
open
11:30~14:30(LO.14:00)
18:00~23:00(LO.22:00)
close 水

 

HP http://www.pizzeriaonda.com