small changes

 

淡い空色のしずかな海に、白い、杼(ひ)のかたちをした砂洲が、ほっそりと横たわっている。
(『地図のない道』須賀敦子/新潮社)

 

 

潮が引き始めた浜辺を歩いていると、ふと須賀敦子さんの一節が頭をよぎった。
今年は、なかなか暑さが抜けないけれど、朝夕になれば思い出したように涼しい風が吹く。
夏の海風と違って、この時期に吹く風は優しくて気持ちが良い。
波のように揺れるススキの穂も日に日に色づいて、そして影は長くなる。
毎日の散歩道も懐かしい風景のように感じるのは、何故だろう。

 

 

これからの季節は温かい飲み物が美味しい。
レモンを買って久しぶりに紅茶を飲もう。
僕はどちらかというとミルクよりもレモン派だ。
少し渋めの紅茶にレモンの爽やかな香りと酸味が好きなのだ。
だからレモンはスライスされたものより、半分にカットしてギューッと絞る位がちょうどよい。
気に入りのマグカップにたっぷりの紅茶を用意して、前からちゃんと読みたかった本をセッティングする。

 

 

 

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「JAZZ CAFE NEWYORK」(LD&BOOKS)

 

お店でも取り扱っているこの本、正確にはBOOK+MUSICです。
つまり、本とCDがセットになっている。
ジャズをテーマにニューヨークを巡るガイドブックで、ジャズ好きの方には興味の湧く1冊と思う。
CDに収められている曲はルイアームストロング、ナットキングコール、チェットベイカー、、、と、ジャズボーカルの名曲が中心に構成されている。
スタンダードは何度聴いても良い。
座り心地の良いソファーに身をゆだねるように、安心して曲に浸ることができる幸せ。
ほとんどが知っている曲に対して、本に掲載されているニューヨークのカフェやバーは(当然だけれど)知らないところばかりだ。
そのバランスも良いのかもしれないね。

 

読み進めるうちに、ニューヨークの喧騒までが音楽のように聞えてきそうな本だと思った。

 

 

 

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そしてもう一冊。

 

「Ghist Knigi おばけのニギ」(Nieves)

 

誕生日の夜に、本をプレゼントされたニギ。
でも、開いてみると絵も文字もない、まっさらのページばかり。
子供のおばけのニギはこの本をどうやって読もうか困ってしまう。
さて、ニギは、、、

 

意味深で少し哲学的なストーリーのこの絵本は、アートブックを数多く手がけるスイスのNieves社から出版されていて、大人の絵本といったところです。
読むたびに自分の答えを見つけたくて、ついつい考えこんでしまう。
夕飯の準備の時間だけれど、テーブルセッティングを横目にしながら、う~んう~んと子供のように頭をひねる。
いや、案外子供のほうがすぐに正しい答えを知っているのかもしれない。

 

 

 

*
季節が変わると食べたり飲んだりするものが変化する。
同時に着るものが変わっていく。
それを自然に楽しめればよいけれど、慌ただしい毎日にある日突然気づく。
「今日着ていくのどうしよう?」と。
よくありませんか?僕はよくあります(笑)。

 

特に沖縄の秋と冬は本土の季節感とは違い、朝晩が肌寒くなっても、日中陽がさすと汗ばむほどの陽気になったりする。
だから、一枚でも羽織のようにも着ることのできるシャツはとても便利なアイテムだ。

 

 

 

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チェック柄が袖にパッチワークされているシャツは、大胆な切り替えと色使いがシンプルなシャツを存在感のあるデザインにしている。
ひねりあるデザインは着るのに少しの勇気がいるけれど、気持ちがシャンとして背筋が伸びる気がする。

 

 

 

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透け感を楽しむことの出来るガーゼ素材のシャツは、Tシャツを重ねて爽やかに着たい。
どんなTシャツを合わせるかによって印象が異なるのを楽しめそうだ。
無地の白いTシャツであれば、爽やかこの上ないし、ボーダーのTシャツに合わせればオシャレ感がさり気なくアップする。

 

インパクトの強いボーダーとドットのシャツは、ボトムスをシンプルにしてコーディネイト。
どうしても無地や控え目なストライプになりがちなシャツのバリエーションに、今年らしい1枚を加えるのであれば印象的なデザインにチャレンジするのも良いと思う。
色がネイビーなので案外コーディネイトしやすいのもポイントだ。
真面目な印象になりがちなシャツをあえて外してみる。

 

 

 

この季節だからこそ、小物使いも楽しみたいですね。
今、キャップタイプの帽子がとても新鮮です。

 

 

 

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これまでどちらかというとメンズのアイテムだったキャップも、今年なら男女関係なく被りたい。
ツイード素材のキャップは、これからの季節にぴったりだ。
シンプルなシャツとデニムにこのストライプ柄のキャップを被ってみる。
うんうん、想像するに良い感じだ。

 

 

 

 

*
そして衣替えをするように、家の中の小物や器も変えると気持ちが変わって楽しい。

 

普段、白やシンプルな器を使っているのであれば、色のついた器やガラスを使ってみる。
テーブルクロスを無地から柄のタイプにしてみる。
小さくても花瓶やキャンドルを置くのはどうだろう。

 

 

 

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全部が全部取り替えたり、買い替えたりしなくてよいと思う。
ゴソゴソとクローゼットや棚の中を覗いて、今の気分や季節に合ったものを探し出すだけでもいい。

 

シャツ一枚、お皿一枚が変わる。
例え小さな変化でも楽しいものだ。

 

気持ちがリフレッシュして、明日からの毎日がさらに楽しくなる、おまじないのようなもの。

 

 

 

 

 

text&photo 宮城博史
photo(fashion) Lim
model(fashion) Ashida

 

 

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