レイ・ブラッドベリ著 中村融・訳 ¥880(税別)/OMAR BOOKS
これを書いているのは「大寒」。一年で最も寒い時期。
炬燵が恋しい。ついでに猫もいるといい。
タイトルに惹かれて手にした、レイ・ブラッドベリの短編集『猫のパジャマ』。
巨匠レイ・ブラッドベリといえば、SF作家としての地位を確立し、その後はジャンルを越えてたくさんの作品を生み出し、2012年に亡くなる91歳まで現役だった。
絶筆となった自伝的エッセイ「連れて帰ってくれ」が特別に収録されている。
前回、このブックレビューでご紹介したのは、上下巻ある長編小説だった。長編がメインディッシュに向けて段取りよく進んでいく、ディナーのフルコースのようだとすれば、ファーストフードのような気軽にさっと入っていけるのが短編集。
が、一見軽いように見えて奥が深いのが短編作品。
この本でもブラッドベリの初期の傑作といわれる「さなぎ」他、「粋(いき)」と思わせるストーリーやセリフが並ぶ。
表題作の「猫のパジャマ」のこの”the cat’s pajamas”は「素晴らしい人やものを意味する俗語だそう。
この「猫のパジャマ」のストーリーはなんともロマンチック。
ある猫好きの男女の出会いが唐突に訪れ、面白いように転がっていく。
不器用な男女のとても微笑ましい場面が描かれ、読む人は優しい気分に包まれる。ラブストーリーでありながら、甘すぎないのは熟練のSF作家だからこそ。
ほどよいところで止めてくれる。
この余韻を味わいたくて、また次の作品を読んでしまう。
屈指のストーリーテラー、レイ・ブラッドベリもまた「猫のパジャマ」だ。
カバー装画は「チーズはどこへ消えた?」などを手がけてきたイラストレーター・長崎訓子さん。
年齢を重ねれば重ねるほど違った風に読める良質な短編集。
寒い夜、猫を膝にのせながら読んでみてはいかかでしょう。
OMAR BOOKS 川端明美
OMAR BOOKS(オマーブックス)
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