ピッチャーが好きだ。
その佇まいが好きだ。
作り手や素材、シーンによって、時に饒舌、時に寡黙な存在となる。
水差しや花器として使われる道具でありながら、オブジェとしての美しさも発揮する。
miyagiya-bluespotにはオープン当時から様々なピッチャーが並んできました。
作り手や工房によって陶器やガラス、その大きさもいろいろです。
沖縄らしい柄が絵付けされている伝統的なタイプもあれば、作家独特の世界観が表現されたものもあります。
お皿やお椀と違って自由度が高いからだろうか、作り手の個性をギュッと堪能できるのがピッチャーの面白いところと思う。
芝原雪子さんの作るピッチャーはその静かな存在感がとても魅力的です。
素朴な雰囲気ながら、その存在感にいつも心を奪われる。
派手さはないけれど安定感のあるフォルム、陶器ならではの土の風合い、絵画を眺めているような佇まいが印象的だ。
芝原さんの陶器作りは沖縄の素材や製法にこだわっている。
サトウキビから釉薬を作ったり、古い陶器を研究したりと余念がない。
一方、伝統や過去の製法をそのまま受け継ぐのではなく、ひとつひとつがよく吟味されて作られている。
例えばピッチャーの持ち手。
芝原さんのピッチャーは小さいものも、大きいものも扱いやすく安定感がある。
それは持ち手が握りやすく、多少の重さがあっても不安を感じない作りになっているから。
主張しすぎることなく、機能的でおさまりの良いバランスで作られているのだ。
日常の中で使われる道具としての陶器作りが、その安定感ある形に繋がっているのだと思う。
慌ただしい日常の中でピッチャーの出番が限られることもある。
それでも、棚やテーブルに在る気配がとても気持ちを豊かなものにしてくれる。
凛とした空気感を作ってくれる。
象嵌(ぞうがん)という技法がある。
線彫した溝に化粧土を塗り、柄を浮き立たせる方法だ。
芝原さんが得意とする技法のひとつでもある。
土そのままの煉瓦色に、化粧土の白いラインが浮き立つ様は陶器特有の重々しさがなく夏にもぴったりだ。
冷たいサンピン茶(ジャスミンティ)にぴったりじゃないかと思い立ち、板橋亜弥さんの鳥の手拭いをランチョンマットの代用にしてテーブルセッティ ング。
濃いめに作って、氷たっぷりのグラスに注いでミントを添える。いつもの飲み物も格段と美味しい。
一人の時も、机で集中して仕事をしたり手紙を書く時はピッチャーに飲み物を数杯分を用意しておく。
ペットボトルを置くより格段に気持ちが良いと思う。
芝原雪子さんの作るピッチャーの人気が高いのもうなずける。
日常品の一つとして、道具としての使い良さに加えて、その存在感が物語の挿絵のように印象的だからだ。
Doucattyさんの虹のクロスの前に矢羽の線彫のピッチャーを置いたら、
もうすぐ訪れるだろう夏の眩しい日差しを思い出した。
text&photo 宮城博史
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