『 EGON SCHIELE LANDSCAPES 』身を委ねる心地よさ。エゴン・シーレの風景画(landscapes)を集めた作品集。


Rudolf Leopold・著 PRESTEL ¥2,980(参考価格)/OMAR BOOKS 

 

自慢じゃないけれど絵心がない。よく絵の上手い人が言うには、「それは思い込みで、誰でも描こうと思えば描けるもの。」らしい。そうかなあ、と言いながら内心いつも納得はしていない。だって実際描いてみても、うーんと唸ってしまう出来映えだから。たぶん私が言う「絵心」と相手の言う「絵心」は微妙に違う。

 

今回ご紹介するのは、風景(ランドスケープ)を描いた作品のみが集められた画集『EGON SCHIELE LANDSCAPE』。クリムトと並ぶ、オーストリアの早世した画家、エゴン・シーレの作品集だ。ドイツの美術書などを専門とする出版社PRESTELから出ているこのシリーズは、手頃で日常的にページを開きたくなるのもおすすめ。

 

どの作品にも人は出てこない。自然の景観や町並みが遠く近く、自由な角度から描かれている。どの絵も観ていると不思議と気分が落ち着く。その理由を自分の内に探ってみると、いくつかある中でまず「うるさくない」というのに行き当たった。車窓の外に流れ去る風景を眺めているような感覚。だからずっと見ていても飽きない。知らずにその風景に自身も同化したような気持ちになる。そこには、表現には不可欠な強い自意識も影を潜め、人間関係についてまわる思惑などもなく、ただ風景に身を委ねる心地よさがあるのだ。もし私に絵心があれば、こういう絵が描きたいなあと思う。

 

で、話は最初に戻って「じゃあ描けばいいじゃない」と言われても、やっぱり描こうとは思わない。思うように描けるようになるには、それなりの過程が要る。
ただデッサン力や色のセンスなどがあるだけでなくそれを苦もなく、自然に、心のままに描くのを楽しむことが出来るのを含めて「絵心がある」というのだろうなと最近思うようになった。そしてまた、「絵心」にはもう一つあってもいいんじゃないか、とも。それは絵を観る(理解する)心。同じ「楽しむ」ことをベースにしていても、その方法の違い。その点で言えば、少しはこの私にも絵心がある、と言えるかもしれない。
実際、この画集を見ているのは心安らぐ楽しい時間だから。

OMAR BOOKS 川端明美




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