『 本は読めないものだから心配するな 』いくら読んでも、忘れてもいい。扉を開き、いくつもの未知へと誘ってくれる一冊。


管啓次郎・著 左右社 ¥1,890/OMAR BOOKS

 

どうやって本を選ぶのですか、と職業柄よく聞かれるけれど、木々が枝葉を伸ばすように、一冊読むともう次に読む本が自然にもう決まっている。

 

今回紹介する『本は読めないものだから心配するな』は作家で詩人、また翻訳家でもある管啓次郎さんの書評集。旅をライフワークとする著者らしく、これまでに訪れた土地や文化や人との出会いなどが、読んだ本の記憶とともに自由自在に綴られている。

 

以前にも紹介したことのある現代アメリカ文学を代表する作家、エイミー・ベンダーの『私自身の見えない徴』の訳者でもある著者。
その『私自身の~』の最後のあとがき(解説)が妙に心に残り、興味を持ったことからこの著者の本に手を伸ばすようになった。
その意味では、エイミーの本を読んだときからもうすでに、私の管さんの本との出会いがもう決まっていたと言えるかもしれない。

 

「本は読めないものだから心配するな」という印象的なタイトル。
読むとまず安心する。本読みのいわば専門家とも呼べるような人たちでも、読んだ本の内容、あるいは読んだという事実ですら忘れてしまう。読んだそのとき、どんなに感動したとしても。
それはあたりまえのことだから、どんどん忘れてまた初めて読むときのように読めばいいと言ってくれる。
そうすればまたあの感動を味わえるから、と。

 

エイミー作品のファンとしては本書の中でも彼女の作品との出会いや交流について触れられているのも嬉しい。

 

紹介される本は古典から難解な本までと、ちょっと背のびして読む書評集。

 

一冊の本はもう次の本に向けて扉を開いている。
この本もまた大きく扉を開き、いくつもの未知へと誘ってくれる一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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