『 河童・或阿呆の一生 』一杯の寝酒代わりに、短くも豊かな世界 

河童
(新潮文庫) 芥川龍之介・著 新潮社 ¥420/OMAR BOOKS
 
冬の夜は静かで深い。いつまでもずっと続きそうな気がする。
だから夏よりも、就寝前に本を読むことが多い。一杯の寝酒代わりに。それには短編小説が丁度いい。
長いミステリーも捨てがたいけれど、それだと続きが気になって夜更かしし過ぎたり変に頭が冴えて眠れなくなる。
その点、短編だと好きなところで読み終えることが出来るし、ページの順番通りでなくても読みたいところから読み始めることが出来る。
  
そんな短編小説の魅力について今回はご紹介します。
 
短編小説が苦手という話をよく聞く。
その理由としては、よく分らない終わり方だから、とか物足りないといったようなものが多い。
そんな人にいや、短編て面白いんですよとついついすすめてしまう。
 
ずいぶん前にロバート・アルトマン監督の『ショート・カッツ』という映画があった。
レイモンド・カーヴァーという優れた短編をいくつも残した作家の作品を題材に、一つ一つの短編をパズルのようにばらしてそれを独自につなぎ合わせた映画で、意外な終わり方を見せる。
 
それはそれですごく面白かった。
それは長編と比べると短編小説が「開かれている」からだと思う。
最後の結末は読者に委ねられる割合が大きい。想像の余地が残されている。
それはつまりいろんな読み方があっていいということ。
何で好きなんだろう、と考えてみたらその広がりのある、自由さに惹かれる。
 
また、いい短編作品を読んだ後の余韻は格別。
作家ごとの違いを読み比べるのも楽しい。短いからこそ作品の中に作家のエッセンスがぎゅっと濃縮されている。
 
そこで短編初心者におすすめしたいのが古典。いわゆる文豪と言われる作家たちが残した作品群。
例えば芥川龍之介の短編は誰もが学生の頃に通ってきているはず。
でも大人になっていろんな経験を得て彼の作品を読むと、あの頃読んだ作品と同じだとは思えないほど二倍も三倍も味わい深く感じられると思う。
 
もうしばらく続く寒い夜に、短くも豊かな物語に浸ってみてはどうでしょう?


OMAR BOOKS 川端明美




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