『ラブソング』忙しいとき、束の間の解放感を。世界の端っこに行ってみませんか?

ラブソング
石津ちひろ・詩  植田真・絵  理論社 ¥1,300(税別)/OMAR BOOKS
 
― 世界の端っこに ―
  
大きく広がる白い地面に、飛んでいるかもめ(たぶん)。
遠くの切り立った崖の上には小さく明かりの灯った灯台が立っている。
黒い空には煙のような薄い雲。
表紙の絵の、日本ではなく異国のような風景は見る人をどこか遠くへ誘う。
 
今回紹介するのは、左中央に金色で『ラブソング』と慎ましく打たれた、小さなこの詩画集です。
 
絵本作家で「リサとガスパール」シリーズの翻訳も手がけている石津ちひろさんの繊細な詩に、透明感あふれる絵が魅力のイラストレータ-・植田真さんの絵が並ぶ。
 
まず表紙の灯台に目を引かれた。
灯台と言えば海の端にあるもの。
先日も端っこが好きという方にお会いしたばかりで、だいぶ前にお客さんで灯台と名がつくものや絵や写真が入ったものを集めているという灯台コレクターもいらした。
周りにも灯台好きがいたりするから、人は「世界の果て」みたいな場所に魅かれるところがあるんだな。
そこには何があるんだろう、という好奇心と
この先はもうないという安心感などがあるのかもしれない。
 
ページを開くとなだらかな細い線で描かれた丘の上に少女なのか少年なのか、大人なのか子どもなのか分からない人物がぽつん、ぽつんと佇んでいる。
彼らのつぶやきのような言葉がそれに重なる。
 
「あるく」というただ何をするでなくひたすら歩くだけという詩や、「シリウス」という孤独がきらっと光るような詩などが35編収められている。
気分のいいときにメロディを口ずさむように、それらは紙の上を滑るように流れていく。
その上を、下を、自由自在に飛翔する白い鳥たちがいくつも描かれているのを見ているうちに、ほんの少しいろいろなことから解放されるような気がしてくる。
 
忙しい仕事の手を休めてこの本を開いてみてほしい。
束の間でもせわしない日常から解き放たれる時間を味わえるはず。
 
誰もが心の隅に持っている心象風景のような絵本。
ちょっとひと休みして、世界の端っこに行ってみませんか?

OMAR BOOKS 川端明美




OMAR BOOKS(オマーブックス)
北中城村島袋309 1F tel.098-933-2585
open:14:00~20:00/close:月
駐車場有り
blog:http://omar.exblog.jp