『 万葉集 Manyo Luster 』古代の人の喜怒哀楽。読んで耳で楽しみ、言葉を目で楽しむ歌のヴィジュアル・ブック。

 

リービ英雄・井上博道・高岡一弥 著 ピエ・ブックス ¥3,800(税別)/OMAR BOOKS

 

学生の頃に、古典とされる作品を読んでもぴんと来なかったものが、ある程度年を重ねるとその良さが、突然「分かる」ことがある。
時間というものが、経験という形に変えて翻訳してくれるのかもしれない。

 

今回ご紹介するのは『万葉集 Manyo Luster』。
日本最古の歌集といわれる『万葉集』を、学術的な専門書ではない、という断りがあるように、アートブックや写真集のような感覚で楽しむことが出来る。

 

朝霧に煙る山間の家々。
霜の結晶に縁取られた落ち葉。
京都や奈良を中心とした日本の美しい風景とともに、古代の人の歌とその英訳によってページは自由に構成されている。
読むだけでなく、言葉を目で楽しむ歌のヴィジュアル・ブック。

 

自然と人の営みに向けられた透明な眼差し。
歌に詠まれた地を踏んだこともないのに、ページを捲っていると、内に眠っていた懐かしさにも似た気持ちを呼び起こされる。

 

万は万(よろず)、 葉は言の葉を集めた意味であるなど、万葉の意味については諸説あるよう。名もなき人の歌も、高貴な方の歌も人の喜怒哀楽を歌にする、というのであれば、今に生きる私たちにも共感できるはず。
人生の酸いも甘いも味わえば味わうほど、古代の人々もまた同じように悩み苦しみながらも、生を謳歌していたということが歌の背後に透けて見えてくる。

 

言葉の意味は分からなくとも、声に出して読んでみるのもいい。
思いの外気持ちいい。音の響きや目に入る文字の印象でも詠んだ人の心が伝わってくる。大人になってから久しく古典から離れていた、という人にもぜひ手にとってもらいたい一冊です。

OMAR BOOKS 川端明美




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