『 ゆきだるま 』冬の静謐な雪景色を堪能させてくれる、文字のない絵本


レイモンド・ブリッグズ 作・絵 評論社 ¥1,365/OMAR BOOKS 

 

ここ数日、天気予報では各地で雪が降ったことを伝えてくれる。
雪の降らない沖縄にいる身としては気分だけでも、とその雪景色を憧れを込めて画面に見入るようになった。
そのせいもあってか、今回紹介したくなったのはこの『ゆきだるま』。
知っている人も多いだろう。

 

日本では1978年に初版の『ゆきだるま』が出て以来、現在は『スノーマン』というタイトルでも出ていて、今でもこの季節に読まれる人気の絵本。巷ではスノーマングッズもかなり出回っているけれど、元はこの絵本からきている。

 

イギリスの絵本作家のレイモンド・ブリッグズは『さむがりやのサンタ』で一躍知られるようになり、この『ゆきだるま』でその地位を確立した人。1980年代にこの作品がアニメーション化されて、当時、映画賞にノミネートされるなど世界中で人気を得たようだ。

 

暖炉に火が燃えた冬の暖かそうな室内と、雪がしんしんと降りしきる屋外。
この絵本の特筆すべきことは、文字がないこと。絵を説明したり、ストーリーとなる文章が一切ない、文字のない絵本なのだ。

 

その効果もあるだろう。
ページを一枚一枚捲っていると冬の静謐な世界に自然と引き込まれていく。
たとえ言葉がなくても、絵コンテのようにカット割りされているので、描かれた絵を追っていくとストーリーはなんなく想像できる。
読み聞かせで使うとすれば、オリジナルの言い回しでどんな風にも読めるから読む人はきっと腕の見せ所。
また、子どもならより面白いセリフを考えてくれそう。

 

真夜中、ゆきだるまと手を繋いで主人公の男の子が空を飛ぶクライマックス。見開きいっぱいの、眼下の街に音もなく雪が降り積もっていく絵がとても美しい。
周りが寝静まったあと、子どもが家を抜け出して空を飛ぶ、という設定はときおり他の物語で見かけることがある。
その風景は国籍問わず、私たちの中に原風景として刻み込まれているのかもしれない。
この季節にぜひ手にとってほしい絵本です。

OMAR BOOKS 川端明美




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