» フォトスタジオMr.MOOK(ミスタームック)映画界で得た技と親心への共感で撮る、”ウチの子らしい”表情

提供/Mr.MOOK

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「カメラ目線にはこだわってないんです。僕たちが撮りたいのは、自然な写真。泣き顔やクセとかも含めて、子どものありのままを残すようにしています」

 

写真館ミスタームックのカメラマン鈴木陽祐(ようすけ)さんが狙うのは、子どもの飾らない表情やしぐさ。それは無造作に撮れるものではなく、丹念に引き出していくものだという。

 

「ただ、『ハイ、笑ってー!』って言ったって大人でも難しいですよね。ニィーって作った笑いになっちゃう。だから少しだけカメラを向けずに『おかあさん、どんな顔してる?』って声をかけてみると、ふっと何か抜けて素の顔が出るんですよ。僕たちはそんな風に自然体を作りこむというか、その子らしい表情が出るための演出をするんです」

 

奥さんの菜菜恵さんが続ける。

 

「演出といえば、問題を出すのはよくやりますね。ちょっと開けるのが難しいオモチャの缶を渡して、『これ、開けられる?』と聞くとか。それを頑張って開けて、『できたよー!』って教えてくれる時ってすっごく自然な顔してるんですよ。今ってケータイにもカメラ付いてて、もうみんな小さい頃から撮られ慣れてるから、ちゃんと止まってニコッって作れちゃう子が多いんです。年齢が上がるにつれて特に。だけど、そういうおりこうさんの上手な表情をどう崩してあげようかって」

 

表情だけでなく、自然なしぐさを引き出すための演出もある。

 

「1才前後のあんよとか。せっかくのあんよ、靴履いてお座りしちゃうのはもったいないから、お母さんに少し離れて立ってもらって『おいで~』って呼びかけてもらって、あんよ待ちしたりもするんです。寝返り、お座り、ハイハイ、あんよ…あと1ヶ月早くても遅くても見られないしぐさってたくさんありますよね。それもちゃんと残しておきたいんです」

 

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赤ちゃんの小ささをより際立たせるため、あえて大人の手を入れる”演出”も。「比べる対象があると、赤ちゃんの手ってこんなに小さいんだ!って伝わりますよね」

 


 

演出をひとつひとつ積み上げ、撮影はたっぷりと時間をかけて進む。子どもがオモチャの缶を開ける様子を見守ったり、赤ちゃんのしぐさを待ったりと、のびやかな光景だ。必然的に、一日に撮る人数は限られる。陽祐さんは言う。

 

「1日に2組ですね。最初は4組いけるかなと思ったんですけど、すぐに無理だと気づきました。4組だと1組あたり2時間ぐらいしかないから、お子さんが慣れる前に終わっちゃう。2組なら3~4時間かけられるから、3人兄弟が七五三で同時に撮影でも大丈夫ですし、ゆったり貸切ですから、赤ちゃんが途中でコテッと眠っちゃうぐらい落ち着いて撮れるんです。それで起きてる顔、アクビした顔、寝顔って3コマ漫画みたいな連続した写真が撮れることもあって」

 


 

ひとりひとりにじっくり向き合い、ストーリーさえ感じられる写真に仕上げる。また、引き出した自然の表情やしぐさが映えるよう、舞台装置にもこだわった。写真館では、なにより太陽光がたっぷり入る大きな窓に目がいく。

 

「自然体を撮るのに、背景に奥行きがなかったら現実的でなくなる気がして。だから、背景紙が上からササーっと降りてきて、その前で撮るというのではなくて、自然光の中で窓の外の景色も含めた奥行きのある場所で撮るようにしてます。ここの建物は窓が大きいのが良くって決めたんです。この階段みたいなセットなんかも僕たちで足場組んでトントンカンカン作りました」

 

ミスタームックの写真には、どれも立体感があることに気づく。それは対象の子どもそのものだけでなく、背景や光までも自然体にこだわっているから。

 


 

そんな舞台には、センスの良さと子供の好みを兼ね備えたオモチャなどの小道具が並ぶ。写真館周辺の人々の協力もあって揃ったものも多い。

 

「コラボというと少し違いますけど、周りの方々にも本当に助けられてるんです。ウチの右隣はリッチエピさんってカフェで、バースデー撮影で小道具的に本物のケーキがあったら良いかもと思って相談したら、『ケーキだとグチャグチャになっちゃうけど、ワッフルなら手に持てるし見た目も可愛いよ』って期待以上の答えをくださって。これはバースデー撮影の時に、オプションで付けられます。向かいは、木のオモチャ屋カーサマチルダさんで、こちらも『子どもが夢中になるオモチャって?』と相談したら、ボールを落として遊ぶオモチャを紹介してくださって。これは下を向かずに遊べるから、遊んでる姿をそのまま撮れる理想的なオモチャなんですよ。そして左隣の保育園からは園児の賑やかな声が聞こえてきて、撮影中の子どもの緊張をほぐしてくれるんです(笑)」

 

 

演出や舞台、小道具。すべては、自然で広がりのある一枚を撮るための技。それは2人が、映画の世界から学んだもの。

 

「僕は以前は映画の仕事をしてたんです。撮影効果業といって、カメラを載せたクレーンを操ったり、カメラ移動車のレールを敷いたりと特殊機材を動かすパートですね。後は特殊効果‥雨や雪を降らすのもやってました。今の写真とはまた違う世界ですけど、今も前も何をどうしたらどんな絵が撮れるかを常に意識する仕事ではありますね」

 

菜菜恵さんも続ける。

 

「映画はもう全てが作りもの。監督がいて、脚本があって、役者がいて、照明や衣裳とかプロフェッショナルが集まってワンカットごとに作りこんでいく。そんな中で、私も作りこむことをしてきました。たとえば、船が沈没する場面があるとしますよね。台本には『ガタガタ揺れる船』としか描写はないけれど、じゃあどうやって恐怖感を作ろう、船内の食卓にポタッポタッと飛沫を付けていったら怖くない?とか、たった一瞬の場面のために、たくさん考えて演出するんです。今も色々作りこんで、自然体の子どもを撮るってことではドキュメンタリーに近いのかもしれない。映画の現場で学んだことはすごく活きていますね。演出だけじゃなくて、今、衣裳ひとつ選ぶのでも、衣裳のプロとチームで一緒にやってきて、それこそ現代だけじゃなくて時代劇もファンタジーもやってきたから、こんな場面にはどんな衣裳が映えるのか、こんな着方が合うというのは感覚で分かるんです」

 


衣裳もよりすぐり。「GENERATORのスーツは本当にシルエットがキレイなので、着られちゃってる感がないんです」 蝶ネクタイは作家さんにリクエストして作ってもらったもの。

 

そんな映画の世界で生きてきた2人が、写真館を開くことになったきっかけがある。

 

「私たちも、娘が3才の時に七五三の写真撮ったんです。昔ながらの写真館で、白い背景があって、その前で撮るような。そうして撮った中に、娘が『きをつけ!』じゃなく『バンザーイ!』ってしてる一枚があったんですね。せっかくのお着物だけれど、大はしゃぎしちゃった!みたいな。でも私たちはそれが一番ウチの娘らしくて、可愛くて。写真館の方には『もっとちゃんとした写真のが記念になるんじゃないですか?』って言われたんですけど、私たちはそれを迷わず選んだんです。だから写真館を始める時は、こんな風にその子らしい写真を撮ろうって決めていたし、娘が小さい時にも欲しかった、あったら良かったなってことをやろうって」

 

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一児の親としての経験と共感が、個性的な撮影プランにも繋がっている。

 

「『月刊ウチの子』ってプランがあるんです。平日限定ですけど、今月はウチの子こんな感じだったよっていうのを残そうってものです。月刊といっても1ヶ月ごとじゃなくて、しぐさごとの場合もあって。『お座り始めたら、また来ますね~』みたいな。これは1回2800円とリーズナブルに設定してます。それに、マタニティ写真も1回だけ撮るところは多いんですけど、うちでは毎月毎月、おなかが大きくなっていく過程を撮るプランもあります。うちは2014年の春にオープンして、まだそんなに経ってないから、お客さんと話しながら『こういうのあると嬉しい』と教えてもらったアイデアを取り入れたり、いろいろ考え中な部分もあるんですけどね」

 

日常使いできる写真館。シンプルなプランを採る背景には、こんな想いがある。

 

「写真館ってお誕生日や七五三とかのイベントで気合入れて来る場所、しかもそれで何万円とかかっちゃうイメージですよね。だけど私たちはもっと気軽に、大切な記録を残してほしいんです。衣裳は持ち込みも大歓迎ですし、料金プランもシンプルにしているので、寝返り成功記念だとか、仲良しのおともだち同士で撮りたいとか、もういろんな時にここを使ってくださったらと思ってて」

 

大切な記録、それは克明な記録とも言える。ありのままを留めた写真は、一瞬で記憶を呼び起こしてくれるから。菜菜恵さんが言う。

 

「ウチの娘はもうだいぶ大きくなっちゃって、もっと小さい頃って何が得意で何が嫌いで、何で笑って、何でイヤイヤ言ってたんだっけ、あの子の1才らしさ、2才らしさってどんなだったかなって忘れちゃうんですよね。毎日濃すぎて。だけど写真を見たら思い出せる。そんな写真が残せたら、すっごく嬉しいし、将来大人になった子どもに渡して一緒に笑えたら楽しいだろうなって」

 

2人の想いは、お客さんにもしっかりと伝わっている。

 

「皆さん、初めはお子さんが衣裳やメイクした姿見て、『わぁ、ウチの子じゃないみたい!大変身だ!』って驚かれるんですよ。でも、写真を確認していくと、『あ、これすっごくウチの子らしい顔…!』って喜んでもらえますね」

 

どの写真からも、写真のこちら側に子どもを包み込むような2人の温かいまなざしを感じる。

 

我が子と過ごす日々はめまぐるしい。必死過ぎて上書き保存が追い付かず、忘れかけてしまう記憶も正直ある。そんな時に、全てを映しこんだ一枚があったなら。

 

作り笑いも肩に力が入ったポーズも、それはそれで思い出。でも、我が子らしい自然な表情やしぐさ、情景までも伝わる写真ならば、「そういえば、あの頃…」と鮮明に当時が蘇るよすがになる。ミスタームックの写真を見れば、菜菜恵さんが言う通り、『ウチの子』という唯一無二のドキュメンタリー映画を観ているような気になれる。

 

「写真集の完成までには1~2ヶ月かかるのですが、お渡しの際にはぜひお子さんも一緒に来てほしいです。どの撮影も思い出深いから、この少しの間にまた成長した姿に会えると嬉しくって」と菜菜恵さん

 

文/石黒 万祐子(編集部)

写真/青木 舞子(編集部)

 


フォトスタジオMr.MOOK(ミスタームック)
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