「この服には、祈りを感じる」
Little Eagle(リトル イーグル)の洋服を前にしてそうつぶやいた人がいたと、オーナーの Kaorico(カオリコ)さんは言う。
自然素材を美しく染めたワンピースは、さらりとした肌触りと、からだの線を美しく見せるラインが印象的だ。
身にまとうと確かに、少しずつ神聖な心持ちになってくる。
「 Kaorico の作る服はとてもエレガント。着ているとリラックスするし、自然な自分でいられるの。優しい色合いも素敵でしょう?
ステージに上がるときは、彼女が作った服を着ることが多いのよ」
アーティストのアリシア・ベイ=ローレルさんはそう言って微笑む。
ナチュラルなライフスタイルを提案したベストセラー「地球の上に生きる」の著者であるアリシアさんは、1970年代のヒッピームーブメントを牽引したカリスマ的存在でもある。
デザイナーとアーティスト。
もともと洋服を通じて知り合い、仲を深めていった2人がコラボレートした展示会「LIGHTS AND DARKNESS(光と陰)」が開催されている。
Kaorico さんは、アリシアさんと知り合う以前に彼女の著作を読み、大きな感銘を受けたと言う。
「ヒッピーとしてコミュニティで生活していた時の、アリシアの体験を元に綴った本です。自然と共存して生きていくための具体的な方法がたくさん記されていて、とても興味深く読みました。
文章だけでなく、彼女のイラストもまた素晴らしかったんです。
シンプルな線から成る絵は、優しくて、温かみがあって…。
まるで子どもが読む絵本の挿絵のようだけれど、決して子どもっぽいわけではない。
ただ可愛いというだけではなく、描き手の性別を判別するのが難しい、中性的な力強さもある。
それまでに見たことがないタッチに不思議な魅力を感じました」
Kaorico さんがデザインした服にアリシアさんのイラストをプリントするというコラボレーションは、2009年から行われている。
「ぜひ実際に着てみて!」と Kaorico さんに勧めてもらい、ロングワンピースを身につける。
鏡の前に立って驚いた。
「あれ? 私って、こんなに背が高かったっけ?」
小柄な私が、普段よりもすらっとして見えるのだ。
締めつけ感がなく、着心地の良い Little Eagle の服の魅力は、サイズ感や素材の良さだけではない。体型もしっかりカバーできるよう、考え抜かれてデザインされているのだ。
「小柄な人は背が高く、ふくよかな方はすっきりと見えるようなデザインを心がけています」
ナチュラルな装いと聞くと、身体にフィットしないゆったりとしたラインを無意識に想像するので、鏡に映った自分の姿は意外だった。
ナチュラルだけれど、エレガント。
まさに、アリシアさんが形容した通りだ。
そして、ナチュラルライフを切り取ったアリシアさんの伸びやかなイラストが、更なるオリジナリティを加える。
新作をまとった Kaorico さん。アリシアさんも「私はこのワンピースが一番好きよ」とにっこり。
新作の中でお気に入りをたずねると、「パッチワークのようにイラストを繋ぎ合わせたワンピース」と、アリシアさんは即答し、 Kaorico さんもそれに同意した。
「私はもともとリメイクなどのリサイクルウェアを作ることから始めたので、はぎれを継ぎ合わせて服を作るのが好きなんです。
一方、アリシアはパッチワークウェアが好き。二人とも似たようなところがあるんですね。
このワンピースは、アリシアのイラストを様々なページからピックアップし、生地の上にパッチワークしていくような気持ちでデザインしたものです。
アリシアとのコラボが決まった時、どういう風に作ればいいか悩みました。
著作にも表れているような、アリシアのナチュラルな生き方をどう表現すればいいかずっと考えていたんです。
それで、インドで夫婦が営む、小さなオーガニックの生地工場に協力をお願いしました。
そこは、染めに使う水を完全にリサイクルして使うというほど、小さいながらも環境への配慮が徹底した工場なんです。
薄いガーゼのような肌触りの生地をオリジナルで織ってもらい、イラストのプリントは草木染めで行うことにしました。布全体を染めることはあっても、プリント部分だけを草木で染めるのは私たちも初めての試みでしたが、オーナー夫婦の努力の甲斐あって成功しました」
世界的なベストセラーとなった「地球の上に生きる」と、その姉妹篇。
「伸縮素材を用いているので、妊婦さんにもおすすめよ」
アリシアさんがイラストを描く際、最も重視しているのは「ノープランで、のびのびと描くこと」だと言う。
「日本の墨絵と一緒ね。私は下描きというものを一切しないんです。
まっさらな紙の上に、ダンスをするように筆を走らせるのが好きなの」
「地球の上で生きる」は、世界的なベストセラーではあるものの、特に日本で多くの読者を魅了している。
その理由が最近になってわかってきたと、アリシアさんは言う。
上質なコットンや麻は風通しが良く、沖縄の気候にもぴったりマッチする。
「私が求めるスタイルは、日本文化にとてもフィットしているの。
例えば、季節を楽しむ心。
春になれば桜を見たり、秋になれば紅葉狩りをしたりするでしょう?
四季折々の自然を愛する心が、日本人にはしっかり根付いているように感じます。
また、みんなで協力し合って生きていくという暮らし方にも深く共感しています。
例えば、日本の農業は古くから村のみんなで協力し合って行われてきました。お互いに作業を手伝い合うなど、一丸となって事にあたります。
一方、アメリカの伝統的な農業のあり方は全く異なります。完全に個人で行うので、隣近所のことなど気にも留めません。協力しようという意識がないのです。
私がヒッピーのコミュニティで学んだことを、日本文化は古くから実践しているように感じます」
ファンの声に応えるように、日本各地で展示会を開いているアリシアさんだが、沖縄への想いはまた格別だ。
「沖縄の音楽、踊りを楽しむ県民性、南国の気候、美しい景色…。沖縄はどこをとっても素晴らしく、私はその全てを愛しています。
ここへ来るときはいつも、玉城(たまぐすく)の宿に滞在するようにしているの。数えてみたら、今回でもう6回目よ!(笑)
神社も多いし、神聖な湧き水(垣花樋川:かきのはなヒージャー)もある。百名海岸に祀られているヤハラヅカサ(琉球の祖先神が降り立ったとされる場所にある石碑)や玉城城跡など、私にとってはすべてが魔法のように素晴らしい場所なんです。
沖縄の食べ物も気に入っています。
特に私はもずくに目がなくて。
行きつけのお店ではいつも、もずく天ぷら、もずくの酢の物、もずくスープなどが食べられる『もずくセット』を注文するほど。
ゴーヤも大好きよ。アメリカでは殆ど食べることができないのが残念なくらい。
色んな食べ方があると思うけれど、私はゴーヤ、リンゴ、レモンを使って作るスムージーが1番おいしいと思うわ」
フォークロア、ハワイアン、ジャズ&ブルースなど、様々なジャンルのCDをリリースしている。
ライア奏者でもあるアーティスト・小嶋さちほさんも Little Eagle 愛用者の1人。
展示会初日、アリシアさんの特別ライブが開催された。
そのイノセントな歌声は、深く穏やかなギターの音と調和して、優しく空間を満たしていく。
楽器の調べに身を委ね、気持ち良さそうに歌うアリシアさんに、Little Eagle の服がとてもマッチしていた。
自然との調和。
アリシアさんと Kaorico さんはそれを、洋服というカタチで具現化した。
手に取って身にまとえば、きっと誰もが魅了されるだろう。
写真・文 中井 雅代
-Alicia bay laurel and Little eagle exhibition LIGHTS AND DARKNESS-
2013年7月10日(水)~2013年8月5日(月)
11:30-22:00/入場無料
@CAFE UNIZON(カフェ ユニゾン)
宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F
TEL/FAX 098-896-1060
MAIL info@office-unizon.jp
open 11:30 ~ 22:00
close 火(第1週のみ)
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