黄金色に焼き上がった丸いパイの上には、
このパイを食べるときに欠かせない紙製の王冠が乗せられて。
「良質のバターを使って2日間かけて作るので、本当に美味しいんですよ。自信作です」
と、pour vous(プール・ヴー)の源河さんが胸を張って勧めるのは、ガレット・デ・ロワ。 “ エピファニー ” と呼ばれるキリスト教の祝日(=1月6日)に食べる、フランスの伝統菓子だ。
幾重にも重ねられたパイ生地は、ざくっとした歯応えと香ばしさがたまらない。
中にはアーモンドクリームがぎっしり。
パイ生地とアーモンドクリームというシンプルな組み合わせなのに、食感は不思議なことにジューシーなことこの上ない。
アーモンドクリームのふくよかな香りとしっとりとした歯触り、そして自然でクセのない甘みがじんわりとしみわたる。
クリーム系のケーキだけでなく、焼き菓子の評判も高い pour vous の真骨頂とも言えるパイだ。
このパイ、食べる時に楽しいゲームが行われる。
家族が集まった時に切り分け、小さな子供が配膳。
パイの中には一つだけ「フェーヴ」と呼ばれる陶製の人形が入っており、当たった人は一年間の幸福が約束される。
また、新年の宴における王となって王冠をかぶり、女王も指名できる。
フランスではガレット・デ・ロワを食べなければ新年が始まらないというほど、生活に密着した焼き菓子だ。
その起源は古代ローマ時代にまでさかのぼるという由緒正しい伝統菓子だが、陶製のフェーヴを入れるようになったのは19世紀の半ばを過ぎてから。
本来は空豆を入れていたという。(「フェーヴ」は空豆の意)
陶製のフェーヴはデザインも様々で、「今年はどんなフェーヴが入ってるかな?」と想像するのも楽しいし、その可愛さからコレクターもいるんだとか。
pour vous では誤飲を防ぐためにフェーヴは中に入れず、パイに添えて渡している。
小さい子からおじいちゃんおばあちゃんまで、正月には親族一同が会することの多い沖縄では嬉しい心配り。
「この風習が、もっと沖縄に根付くと良いなーと。
クリームもフルーツもないシンプルなお菓子ではあるんですけど、新年を祝って家族でパイを食べるっていう習慣が素敵だなって。
何よりも、ガレット・デ・ロワが僕大好きなんです。この素朴な味わいがたまらなくて。
もちろん、我が家では毎年食べてますよ」
源河さんは「素朴な味」と形容するが、地味な味わいという意味ではない。
むしろ新年に食べるのにふさわしい、品の高い贅沢な味わい。
素材はシンプルだが、綺麗な丸い形に仕上げるには熟練した技と繊細な心配りが必要。
パイ生地を重ねるとき、生地を伸ばした方向が縦と横で垂直に交わるように重ねなければ、焼く時にちぢみが生まれ、形がゆがんでしまうという。
「ゆがみが生まれると味も少し変わってしまう気がして。
可愛らしい丸型に焼き上がるよう、心を配っています」
フランスでは、1月いっぱいガレット・デ・ロワの味とゲームを楽しむという。
pour vous での販売期間は12月29日から1月22日まで。
元旦のデザートに、
おせち料理に飽きた頃に、
しんと冷える夜のお茶うけに。
「フランスではこうして新年をお祝いするんだって〜」
と、会話も弾むだろう。
ガレット・デ・ロワによって受け継がれる家族団らんの喜びを是非。
一度味わえばきっと、あなたの家の定番になる。
写真・文 中井 雅代
pour vous(プール・ヴー)
豊見城市字上田543-3
098-856-8007
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