フルーツをふんだんに使ったスムージーが、健康に良いことは知っている。知ってはいるが、たまにフルーツ特有の酸味が胃にくることも。そんな経験から少し構えて飲めば、予想に反して、やわらかい口当たり。きちんと瑞々しいが、まろやかに仕上げられている。
「基本的にスムージーは筋や繊維もまるごと飲むので、つっかえるような感じがするものもありますよね。でも、私たちのスムージーは試作に試作を重ねて、とにかく飲みやすいことを第一に作りました。失敗してオェーてなったこともありますけど(笑)、ベストな材料と配分を見つけ出したんです」
そう話すのは、グリーンリーフのオーナー上地亮一さん・ゆきさん夫妻だ。
「スムージーに入れる果物や野菜は、農薬や化学肥料を使わないもの、または有機栽培で採れたものにしています。こういう育ちのものって、味が全然違うんですよ。“レモネード”に使ってるレモンも切るとフワッて、香りからして違うし、元気で力強い味がしますね。一番人気の“ベリーベリースムージー”には、質の良さで話題のトルコ産のストロベリーやカナダ産のブルーベリーを使ってます。ベリー類は有機栽培のものがなかなかないんですけど、信頼できる業者さんが見つかって、そこから取り寄せてます」
スムージー、ジュースとも着色料は一切使われていない
瑞々しい味は、選び抜かれた果実がもたらすもの。では、まろやかさの理由はなんだろう。
「甘みのあるスムージーには砂糖じゃなく、グッと喉に詰まる感じがしないアガベシロップという甘味料を使っています。植物由来で、上白糖の1.3倍の甘さがあるのにまろやかに仕上がるんですよ。それに、摂った後の血糖値の上がり方が上白糖に比べてすごく緩やかなので、身体にも良いですね。血糖値が上がるとインシュリンが分泌されて、シミ・シワの原因にもなるので女性は気にされる方が多いんですけど、これはそういう心配もあんまりしなくていいですし」
それに・・・と、ゆきさんが打ち明けるように続ける。
「実は、豆乳が入ってるものもあるんです。豆乳って、スムージーの定義からするとあんまりよろしくないんです。豆乳はタンパク質だから、栄養を吸収する時に、酵素を取り入れにくくしてしまうんですね。でも、身体に悪いものではないし、味がマイルドになってスッと飲みやすくなるので。美味しくなくて飲めないよりいいかなって」
理論に縛られることなく、いたって合理的だ。さらに、上地さん夫妻の言う”飲みやすさ”には、味だけではなく、価格も含まれている。上質の素材を使う割に、スムージーはどれもワンコインでお釣りがくるのだ。
「ちょっと寄って飲んでくかって時は、手軽なお値段じゃないと手が出ないですよね。なので、価格も一生懸命がんばってます。たとえば、ニンジンやゴーヤのジュースなどに使う野菜は、農家さんのB品C品を仕入れてるんです。形が悪いだけで、無農薬ですし、ポストハーベストも使っていないし、味は良いものなので。それがごっそり捨てられちゃうのはもったいないというのもあって」
誰もがとっつきやすいスムージーには、オーガニックな暮らしの扉を開ける存在になってほしいとの願いがこめられている。
「このスムージーが入口になってくれたら良いですね。ココ、あえてちょっとカフェっぽい感じにしてるんですが、ドリンクだけふらっと飲みにくるのも大歓迎なんです。その10人に1人にでもいいから、『あ、ココは野菜や果物とかも売ってるんだな』って知ってほしくって。それに、『オーガニックってなんじゃろ?』って人が、スムージーを飲んで、『あれれ?なんか味が違うぞ』って感じてもらえたら、それがオーガニックの食べものについて興味持つキッカケになるかもしれないですし」
そう、グリーンリーフは、オーガニックの食品を中心に扱うお店だ。野菜やフルーツ、加工食品、お酒、果てはオーガニックコットンに至るまで、ゆうに1000種類以上が並ぶ。世界各国の認証機関、有機JAS(日本)、BIO(ドイツ)などが定める基準を満たしたものばかりだ。
大豆でできたチーズ。味は実際のチーズと変わらない。ヴィーガンのひとたちからのリクエストにより置かれることになった。トランス脂肪酸ゼロ。
横文字の添加物が一切入っていないソーセージ。材料は豚肉、塩、ハチミツ、香辛料のみといたってシンプルだ
抗生物質や薬品を一切与えられない無投薬で育てられた宮崎県産の鶏のもも肉
「『健康食品って、おばあちゃんが買うサプリとかかと思ってたよ』なんて方も覗いてくださるんですが、そういうイメージを変えたいんです。うちの店の一番の特長は、身体に良いものならなんでもあるってことですね。こういうオーガニックのお店だと、植物素材が中心になるので、肉や卵は置かないところも多いんですが、うちはありますよ。もちろん、自分の目で実際に見て、『これだ!』って納得できたものだけですけどね」
誰でも来やすいように間口は広く、だが、目に適ったものだけを。たまごももちろん自身で足を運び、厳しく選び抜かれたものだ。
「たまごは、“命卵”というんですけど、沖縄県で唯一、発酵させたエサで育ってるニワトリのたまごなんです。実際に見せてもらったんですが、鶏舎が全く臭くなくてビックリでした。ここはニワトリが口にするものは自分たちが口にするものだという意識で、自分達も食べられるような食材を使ってるんです。普通だと、エサに抗生物質とか防腐剤とか着色料とか、もういろんなものが混ぜられますからね。それに、平飼いでのびのびと育ってて。これも珍しいんですよ。狭いゲージで、身動とれない中でたまご産まされるところ、多いですから。他では、ここまで徹底した飼育方法って見つからなかったので、こちらをお願いすることにしました」
このようにひとつひとつ吟味された商品は、一度食べてみれば違いが分かるという。
「いろいろ食べ比べてみてください。オーガニックのものはニンジンひとつとっても、すごく甘くて、アクがないんですよ。だけど、オーガニックでないものは、エグミがなんか舌に残る感じがするんです。実はこれって農薬の味じゃないかと思うんです。オーガニックでもやむを得ず、農薬を使うこともあります。ただ、石灰や食酢など天然由来のものを農薬として使うので、やっぱり味が変わってくるんですよ。そういう違いを味わってほしいですね」
ただ、有機栽培のものは自然であるがゆえに難しさもある。安定した供給はできないのだ。
「この間も、農家さんに『明日、お野菜お願いできますか?』って電話したら、『ごめんなさい。虫が入って全滅しちゃった…』って言われて。農薬まいちゃえば簡単なんですけどね、無農薬だとビニールハウスに蝶が入っただけでダメになっちゃうんです。卵を産みつけられて孵った幼虫が葉っぱ食べちゃうから。だからもう手作業で虫を一匹一匹取り除いたり、手間がすごくかかるんですよ。だけど、皆さん、自分が食べて安全なものを信念持って作ってるんです。そういうものをこの店で紹介していきたいですね」
ヴィーガン弁当。お客さんとのコラボ商品もある。ヴィーガンであり、常連さんでもある、平野紫映さんが作って持ってきてくれるヴィーガン弁当は生野菜が多く、酵素がたっぷり取れる。完全予約制
自然で優しいものを身体に取り入れてほしい。そして、続けてほしい。そのための取り組みがある。瓶のリユースだ。
「どんなに良いものでも、価格が高かったら続かないですよね。でも、それじゃ意味がないので。このアカベシロップは、1296円なんですけど、瓶をそのまま捨てずに持ってきてもらえれば、割安で同量を詰め替えるようにしてます。アガベシロップは、オリーブオイルみたいに空気に触れて酸化しないからできることですけどね。エコにもなりますし」
また、ポイントカードのシステムもお客さんのためのもの。
「ポイントカードは、お買上げ頂いた累積総額に応じて、2%、3%、4%、5%…と、どんどん割引率が増えて、それが毎回のお買物に反映されるものなんです。しかも有効期限もなくって半永久的です。儲けを考えたら全然良くないんですけど(笑)、できる限りのことをしたくて」
品揃えを充実させるだけでなく、サポートも徹底的に。上地さん夫妻がここまでする理由は、オーガニックを根づかせたいから。亮一さんが言う。
「僕は昔から食には関心があったんですが、留学や仕事で海外で過ごすうちに、日本はオーガニック的にはずいぶん遅れてるなと気づかされて…。特に、ここ沖縄は昔は長寿県だったのに今は違いますよね。こういうお店を持つことで、地元からもう一度、食に対する意識を高められたらなと思ったんです。それで、お店をやっていくうちに、自分たちが志の高い生産者と消費者をつなぐ位置にいて、うまく循環させないと続けられないんだというのを実感したので、価格面もですけど、続けられるオーガニックを提案しているんです」
接客も担当するゆきさんも、オーガニックの良さは身を持って知っている。
「私は、気づいたらお店に立ってた!って感じです(笑) 完全に巻きこまれましたね。でも、ちょうどお店のオープンと息子の出産がカブってて、自分が食べるものは、子供も食べるものなんだって意識が出てきて、あれこれ勉強するうちに面白くなって。それに食に気をつけるようになったら、味覚も鋭くなったし、太りにくくなって、肌ツヤも良くなったんですよ。そういうのを伝えられたらなって」
実践あるのみで進んできた2人。だが、上地さん夫妻は、あくまで自分たちは初心者の立ち位置にいると言う。
「初心者が開いた、初心者のための店ぐらいに思ってるんです。実際、初めの頃は、アーモンドミルクを作りたいと言うお客さんから、『アーモンドって、そのままジューサーに入れていいの?』と質問されても全然分からなくて、必死で調べて、『それは生なら約12時間、水に浸けてからですね』とか答えてました。もう玄米の炊き方から、ひとつひとつ勉強してきた感じです。でも、だからこそあんまり専門店っぽくなくて、初心者の方にも来やすい空気になってるんだと思います」
そう、グリーンリーフには多くのひとが集まる。ヴィーガンやベジタリアンをも満足させる充実した品揃えは、オーガニック=なんとなく身体に良いものという認識を持つだけの人の興味も惹きつけてやまない。たまごや野菜、甘味料など身近なものから一度変えてみるのもいいかも・・・と思わせるのだ。
食に対して、決して無頓着なわけではない。いつも、それなりに成分表示や産地を気にしたりはしている。だが、どうもオーガニックという言葉を、自分のものにしていない。なぜだろう。健康を謳う人のストイックさに気後れしたことがあったからか。添加物は悪!みたいに、やたらと危機感を煽るものを見かけたことがあったからか。もちろんお財布との兼ね合いもある。
だが、ここでなら、オーガニックをちゃんと自分のものとしていける気がする。上地さん夫妻の姿勢は柔軟で、声高に何かを否定することもない。なにより2人の健やかな笑顔が、身に取り入れるものの大切さを語るかのようだ。
「『ファーストフードでシェイクも飲むけど、今日はここのスムージーにしよう、ビタミンも摂れるし』とか、『いつもの買物はスーパーだけど、週に1度はここも寄ってみるかな』とか、無理なくオーガニックのものを取り入れて頂ければうれしいです。オーガニックコットンだって、24時間全身に着られるわけはないんですよ。でも、いつものものと比べてみて何がどんな風に違うかを知って、感じてほしいですね」
ゴクゴク飲みやすい優しいスムージーは、グリーンリーフの親しみやすさの象徴だ。
文 石黒万祐子(編集部)
ナチュラル&オーガニック食品のお店 グリーンリーフ
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