sweets cafe O’CREPE(オークレープ)もちっ。ふわっ。カリッ。米粉100%のシンプルクレープ

オークレープ

 

あれっ? なんだか生地がプルプルしている。クレープってこんなに弾むものだっけ?

 

「モチモチでしょう? 米粉100%なんです。米粉は食感が良いだけじゃなく、クセがないので、中身に包んだ生クリームやチョコレートの味を引き出す力もあるんです。小麦粉よりも油を吸わなくて、米粉そのものに甘みがあるので砂糖の量も抑えられるし、体にも優しいんですよ」

 

種明かしをしてくれたのは、O‘CREPE(オークレープ)店主の比嘉司さん。弾力の正体は米粉だった。そういえば、お菓子やパンなどで米粉入りと謳ったものは多いけれど、100%米粉使用は、なかなかないかもしれない。

 

「米粉100%なら、小麦粉アレルギーのある人でも安心して食べられます。米粉については、もっと極めたくて、今、日本穀物検定協会の米粉食品指導員という資格を取ろうと月イチで上京して勉強中なんです」

 

もっちりとした米粉の確かな歯応えに、キャラメルソースが掛かった生クリームのふんわり優しい口当たり。そして、香ばしいクランブルのカリカリという歯ざわり。生クリームとキャラメルソースだけの、いたってシンプルなクレープなのに、色んな食感がある。

 

「生クリームは3種類を混ぜて作っています。試行錯誤して、風味豊かで形も作りやすい独自の配合を見つけ出しました。それからトッピングには、フロランタンを焼いた時のはじっこを砕いて使っています。普通だとコーンフレークやアーモンドを使うんですよ。でも、この方が食感も面白いし、何より美味しいので」

 

オークレープ

クレープは、キャラメルクランチ、チョコチャンク、自家製ティラミス、季節のフルーツと4種類。

 

キャラメルクランチのクレープには3つの異なる感触があった。チョコレートのクレープはどうだろう。

 

「チョコチャンククレープの“チャンク”は塊という意味ですが、塊のままだと硬過ぎて生地から浮いちゃうんです。かといって、溶け切ってしまっても食感がつまらない。なので、溶けるか溶けないかの絶妙なタイミングを見て、お出ししています」

 

モッチリ生地に、とろっと溶けたチョコ。まだ硬く噛みごたえのあるチョコ。そこに、ときどき添えられたふんわり生クリームを足す。

 

チョコのクレープもキャラメルクランチと同じく、たくさんの食感を持っていた。その、舌で感じる表情の豊かさから、司さんのクレープへの強い思いをうかがい知る。

 

「僕はスイーツなら、なんでも好きなんですが、学生の頃に国際通りで食べていたチョコだけのクレープがすごく美味しくて忘れられなくて……。お店にはケーキや焼き菓子も置いていますが、なかでもクレープには特に思い入れがありますね」

 

オークレープ

カボチャタルト。生のカボチャを裏ごしして作っている。

 

司さんがパティシェの道に進むきっかけとなったのは、家で食べるおやつ、母の手作りの味だという。

 

「幼い頃、母がたまに作ってくれるレモン皮が入ったチーズケーキが美味しくて、甘い物が大好きになりました。でも、しょっちゅう作ってもらえるワケではないし、お菓子をホイホイ買い与える家でもなかったので、それなら自分で作っちゃおうというのが原点ですね。小学校の理科の実験で、べっこうあめを作りませんでしたか? 初めはそういうべっこうあめやホットケーキなど、簡単なものばかりでしたが、お菓子づくりが本当に楽しくて楽しくて。気づいたらパティシエになっていたという感じです」

 

スイーツが好きすぎて店を開くまでになったということか。どれほどの甘党なのかを奥様のわかこさんが教えてくれた。

 

「お店を開く前に、クレープの研究と称して、2人で1日に10軒ものクレープ屋さんを回って食べたんです。クレープ10個ですよ! 私は途中で気持ち悪くなりました。だけど彼は、最後まで嬉しそうに食べ続けていました(笑)」

 

司さんも続ける。

 

「本当は僕、1日3食全てスイーツでも良いぐらいです。でもそれはさすがに栄養的に無理なので……」

 

打ち明ける口ぶりは心底残念そう。ただならぬスイーツ愛を感じる。

 

オークレープ

 

オークレープ

 

O‘CREPEにはクレープの他にも、そそるケーキと焼き菓子がいくつも並ぶ。そしてその全てが夢見るような可愛さをまとっている。パティシェとはいえ、男性である司さんが、ここまで女心をくすぐるものを作れるのはなぜだろう?

 

「スイーツ好きの気持ちは誰より分かるつもりです。でも、女性の皆様にも喜ばれるようにということでは、妻の意見を聞くことが多いですね。男の僕だけでは思いつかないアイデアをくれるので」

 

そう、O‘CREPEのスイーツの美味しさに、さらなる魅力を足しているのは、妻のわかこさんなのだ。

 

「この間は、ざくざくっとした大きいクッキーをリクエストして置いてもらいました。セサミストリートのクッキーモンスターが食べてるみたいなのがいい〜!って。クッキーひとつにも世界観があったら楽しいかなって」

 

オークレープ

 

オークレープ

 

わかこさんの提案はランチメニューにも生かされている。

 

「私からお願いして、ランチに7種類の野菜と3種類の豆を使った栄養満点のスープも加えてもらったんです。外食だとどうしても栄養が偏りがちになるので、一杯で栄養が補えるようなものを…と」

 

心遣いは、メニューだけに留まらない。店の飲料水には、光龍水という健康に良い水を使い、店内の一角には空気を浄化し、リラックス効果の高いとされる炭を敷き詰めた。優しさにこだわる背景には、わかこさん自身の苦い経験がある。

 

「私は元々ウェディングプランナーをしていて、今はブライダル科の講師をしています。多忙な日々の中で、26歳の頃に一度、ひどく体調を崩してしまったんです。それからはアーユルヴェーダ、マクロビ、玄米食、断食を習ったり、アロマやリンパ健康管理士の資格を取ったり、健康に良いと聞けば片っ端から試しました。でも、いろいろやり過ぎて、混乱してしまって。ある健康法では良いとされている食材が、別の健康法ではダメと言われたりして……。そんな時に救われたのが、断食を習った先生からの、『好きなものを食べなさい。なるべく地産地消でね』という一言です。また気持ちが楽になって、食を楽しめるようになりました」

 

地産地消を実践すべく、県産アグーを使ったサンドイッチや、本部産のアセロラや宮古島のハイビスカスを使ったジュースなど、なるべく沖縄県産のものを取り入れるようにしているという。

 

オークレープ

ランチメニュー「県産アグーのBLTサンドセット」
フォカッチャは自家製。ミニスイーツは日替わり。

オークレープ

 

そして、美しいものが大好きという、わかこさんのセンスがいかんなく発揮されるのが店内のインテリアだ。わかこさんはプリザーブドフラワーのディプロマの資格を持っている。華やかな世界にいるからこそのセンスで集められた花々やアンティークが空間を彩る。わかこさんの作る世界観に惹かれて、空間目当てに来るという人も多い。カメラサークルの人が写真を撮っていったり、美容院のディスプレイの参考にしたいと美容師が見に来たり。

 

「可愛いのはもちろんですが、癒やしの場所、大人の女性が落ち着けるように心がけました。イメージは“森で遊ぶ少女”です。お花が大好きなので、ドライフラワーのアーチには一番こだわっています。こんなにたくさんドライフラワーを使ったものって、あまりないんじゃないかな。アンティークにも目がなくって、どんどん増えてしまうんです」

 

オークレープ

 

O’CREPEのOは、人と人をつないでいきたいという願いからきている。

 

「いろんな人の出会いの場にもなれたらと思って、店内でウェディングのイベントや作品展をやることもあるんです。店の名前は、Oを丸の形に見立てて、美味しいスイーツで人と人を結ぶ店にしたいという想いを込めて付けました」

 

もちろん司さんも想いは同じだ。

 

「僕は沖縄の“ゆぃまぁる”という言葉が大好きなんです。幸せって結局、人と人とのつながりの中にしか生まれないと思いますし、一生かけて取り組んでいく仕事にそれを取り入れたくて。僕の作ったものを食べて、“お”だやかで“お”おらかな気持ちになってほしいというOでもあります。美味しいものにはそういう力があると信じています」

 

オークレープ

 

オークレープ

 

司さんの語り口は穏やかだが、確かなビジョンが伝わってくる。

 

「彼、口調が丁寧でしょう? 私の家族からはホトケって呼ばれてるんです(笑) 自分の母親にもすごく丁寧な口調で話すんですよ。お店は、ほとんどの時間を彼1人で切り盛りしているので、メニュー表にも『マイペースな店主ですが、ゆったりとした気持ちでお待ちくださいませ』なんて但し書きしてるんです。それも含めて、ここでのんびーり過ごしてほしいですね」

 

わかこさんが微笑みながら言葉を添えた。

 

文 石黒万祐子

 


sweets cafe O’CREPE(オークレープ)
沖縄県那覇市松尾2-6-12 2階
098-868-3113
open 11:00~20:00
close 水曜日・第2・第4火曜日
(その他、不定休あり)
http://ocrepe.ti-da.net