ぬーじボンボンZ 串カツ☆黒カレー部 繊細な“ガテン系男メシ”! 普段使いできる気軽な昼飲み食堂

 

 

「ガテン系男メシって感じです!」

 

第一声で元気よく、こう告げてくれたのは、ぬーじボンボンZ 串カツ☆黒カレー部店主、奥間朝樹さんだ。店のメニューをめくってみると、カレーやハンバーグ、串カツ、メンチカツに牛皿と、いかにも男性の好むものが多く並ぶ。期待に違わず、ボリュームも申し分ない。しかし、ただ量さえあれば満足という男メシとは、全く違う。

 

 

真っ黒な色が印象的な“チーズ黒焼きカレー”は、一口食べれば、そのコクの深さに思わず唸る。「昔ながらの洋食屋さんに憧れて」と言うが、気軽な街の洋食屋というより、高級ビストロを思わせる奥行きのある味わいだ。

 

「コクの秘密は、牛バラからじっくりだしをとってるからですかね。塊肉のまま炊いて、だしをとった後は、それを刻んでカレーに入れています。あ、カレーにゴロンと入ってるのは、また別の牛バラです。刻んだ分はほとんど溶けてしまっていますね。じっくりと3,4時間は煮込んでいますので。それとたっぷりの玉ねぎですね。刻んで、飴色になるまで炒めてから加えています。それにフォンドボーやワインなんかも入れてます。その黒い色もコクの秘密ですけど、これはちょっと教えられないです(笑)」

 

深い深いコクは、牛バラ肉を余すことなく使い、たっぷり玉ねぎの甘みを充分に引き出しているから。奥間さんは、じっくりと時間をかけて丁寧に手作りする。

 

カレーはルウだけでなく、トッピングにも手を抜かない。チーズ黒焼きカレーには、半熟の卵とチーズ、フライドオニオンがトッピングされている。ナイフを入れるとトロリと溶け出る卵、よく伸びるチーズが、スパイスの効いたカレーをまろやかにしてくれる。そこにサクサクのフライドオニオンの香ばしさが加わる。スプーンですくう場所によって、トロリ、サクサクと歯ごたえが異なる。たっぷりのコクとボリュームだけど、歯ごたえに変化があるから、最後まで飽きずにペロリとたいらげてしまう。

 

上から時計回りに、アスパラ、山原豚ロース、マッシュルーム、かぼちゃ、レンコン、エビ、じゃがバター酒盗添え

 

店の看板メニュー、串カツも、沢山食べられるよう衣にこだわった。

 

「串カツは、軽さを出すようにしました。メンチカツとはまた違う衣で、細かくて薄い衣にしています。まず素材に粉をつけて、次に“ねりや”という、小麦粉や溶き卵なんかが入った液体にくぐらせるんです。“ねりや”の配合は、試行錯誤しましたね」

 

薄い衣からはサクッと軽い音がする。ほんのり甘みを感じる衣は優しくて、油を吸ったようなギトギト感はまるでない。

 

 

そもそもカレーに、とんかつではなく串カツを合わせたのも、最後まで美味しく食べてもらいたいとの配慮から。男メシならば、カレーにはとんかつを合わせてカツカレー、となりそうなものだが。

 

「元々カレーに揚げ物って、鉄板的に大好きなんです(笑)。でも、どんなに旨いとんかつでも、でかくて途中で飽きちゃうんですよね、僕。カレーに、サイズの小さい、味の違う揚げ物がトッピングできたら面白いかなと思って」

 

お店で一番人気の、“お好み串カツ黒カレー”は、プレーンカレーに好きな串カツ3本を選べる、お得なセットだ。選べる串カツは20種類以上。レンコンやかぼちゃなどの野菜から、豚ロース、エビなどの定番もの、シウマイ、ハムカツ、ラフテーの変わり種まで、バラエティー豊か。単品で追加もできる。好きなソースで食べられるのが、また嬉しい。

 

「カレーと串カツのセットであれば、カレーにトッピングしてもらうのもいいですし、串カツ単品の場合でも、カレーソースで召し上がって頂けます。友人を集めた試食会で、『カレーで食べたほうが旨いじゃん』て言われたのがきっかけで、黒カレーをそのまま小皿で出すことにしたんです。レモンだけ絞ってとか、塩だけでとか、シンプルに楽しんでもいただけます。手作りのソースも2種類付けています。バーベキューソースと、和風ソースですね。それからホタテや牡蠣などの串によっては、タルタルソースもお付けしています」

 

バーベキューは、バルサミコ酢やウスターソース、マスタードやケチャップの入った、食欲をそそる組み合わせ。和風は、和風だしに大根おろし、お酢の入った、さっぱり醤油ベースだ。奥間さんは、「種類があったほうが、単純に飽きがこないでしょ」と朗らかに笑った。

 

 

「僕、こう見えて、心は乙女なんです。自称ポップな乙女(笑)」

 

最後までおいしく食べてもらいたいとの繊細な配慮は、奥間さんが女心をわかっているから。なるほどガテン系男メシというが、男臭い感じがしない理由は、ここにある。奥間さんの乙女心は、そこかしこにチラリと見え隠れする。

 

長年憧れていたというシャンデリアは、店の内装に取り入れた。スタッフTシャツは、店名のロゴにハートの飛んだデザイン。奥間さんがデザイナーに「ハートマークを飛ばして」とオーダーを出したそう。さらに店名の意味もかわいらしい。“ぬーじ”は沖縄の言葉で“虹”、“ボンボン”は“てんとう虫”で、“虹色のてんとう虫”だ。

 

ただ料理に繊細な配慮があるのは、奥間さんの乙女心によるものだけではない。“人が喜んでいる姿を見るのが好き”という思いが根底にある。奥間さんが料理人で居続けるのは、この思いがあるからに他ならない。思い通りにいかないことがあったとしても、ブレることなく飲食業だけを目指してきた。

 

 

 

「立ち上げから関わっていた飲食店のオープンが、直前になって流れてしまったことがありましたね。仕方なく、本土へ行って飲食店に入ろうと思ったんですけど、貯金がなくて。お金を貯めるために、名古屋で液晶パネルを磨く季節労働をやりました。半年間やってお金が貯まったので、住む家を借りて、ようやくレストランに入ったんです(笑)。季節労働をしてる間は、結構楽しかったんですけど、やっぱり飲食店で早く働きたいなという思いはありましたね。接客してお客さんに喜んでもらえるっていうのが、嬉しいから」

 

飲食店で働くも、最初は料理人ではなくホールで接客を担当していた。料理人に転向したのは、ちょっと意外なきっかけだった。

 

「ある日、常連さんに『君の笑顔、ほんと営業スマイルだよね』って言われて。当時まだ若かったから、すっごいショックだったんですよ。打たれ弱いので、『もうホールに出るの、ちょっと怖いわ』みたいになって(笑)。でもこの仕事好きだし、辞めたくないなと思って。それで調理場に入ることにしたんです。これがきっかけで、それから料理をやっていきたいと思うようになりましたね。自分の料理という表現で、お客さんに喜んでもらえるのが嬉しかったです。その店、オープンキッチンだったから、お客さんの様子をほどよく見れました(笑)」

 

 

ぬーじボンボンは、泉崎にある本店と、公設市場近くのここ2号店がある。本店では叶わなかったが、ここでは、調理しながらもお客の様子がわかる造りにした。そんな奥間さんだから、お客の要望は積極的に取り入れる。

 

「2号店は、カレーと串カツに特化した店にしようと思っていて。本店では人気のハンバーグですけど、ここでは当初ハンバーグを置く予定はなかったんですよ。でもやっぱり本店のイメージが強いみたいで、『本店の泉崎は遠くて、こっちは近いから来たのに、ハンバーグないんですか?』って言われると(笑)」

 

旨味たっぷりの、もとぶ牛ハンバーグ。デミグラスソースも絶品

 

 

定食につくサラダには、すりおろし野菜たっぷりの手作りドレッシングがかかる

 

この調子でどんどん新しいメニューが増えている。昼間からお酒を楽しめる店にしたいと、酒の肴になるメニューを考えていたが、飲まない人のために、定食スタイルも取り入れた。カレーには、サラダ、ゆし豆腐、あまがしが付く。ハンバーグやメンチカツ、牛皿には、これにライスも加わる。カレーの種類は、厚切り牛バラカレーや、メンチカツ黒カレーなど5種に増やした。辛さを10段階から選べるようにもした。

 

「僕、東村出身で、田舎育ちなんです。幼稚園から小学校、中学校まで同級生が5名くらいの世界で育ってる。だからか、ビビリなんですよ。いつも『大丈夫かな、大丈夫かな』と思ってる(笑)」

 

心配そうな表情を浮かべる奥間さんだが、お客の要望に応えることに嬉しそうだ。串カツに添えたカレーの小皿を差し出して、「ここにごはん、ちょっと入れて〜」とお客に言われれば、ごはんをよそう。近所であれば、1食からでも出前をする。サービス精神が旺盛なのだ。

 

 

 

「普段使いの気軽な店にしたいんです。だから価格も極力抑えています。みんなが来やすいように」

 

その言葉通り、公設市場近くの雑多な雰囲気に馴染み、市場で働く人達の憩いの店になっている。市場で働く人以外にも、中年男性のグループだったり、若いカップルや、1人でふらりと立ち寄る女性もいる。“ガテン系男メシ”というが、ガテン系男性だけに愛されているのではない。奥間さんの「喜んでいる姿を見たい」とのシンプルな思いと、繊細な心遣いが、老若男女問わず惹きつけてやまないのだ。

 

文/和氣えり(編集部)

写真/青木舞子(編集部)

 

 

ぬーじボンボンZ 串カツ☆黒カレー部
那覇市松尾2-9-6 タカミネビル1F
098-943-7814
open 12:00〜21:00 (LO 20:00)
close 木
http://nuzibonbonwakaokami.ti-da.net
https://www.facebook.com/nujibonbon

 

食堂ぬーじボンボンZ 本店営業部
那覇市楚辺276
098-832-8415
open 12:00〜14:30(月〜日)
    18:00〜21:00(日〜木)
    18:00〜23:00(金・土)
close 火(ディナータイム)