「うちのソーセージの材料は肉、塩、砂糖、香辛料の4つだけ。
健康な豚を飼育している養豚場を厳選し、県産豚100%で作っています。
また、形もサイズも均一じゃないというのも特徴の一つ。
天然の羊腸を使っているので、その状態によっても太さが微妙に変わりますし、ひとつひとつ手づくりしていますから」
一般的なソーセージは、商品の品質や保存可能な期間、重さなどを均一にするため、羊腸ではなく人口皮に詰め、添加物を入れることが多い。
「当店では、添加物は一切使用していません。
お客様には安全なものを、安心して食べていただきたいので」
オープン当初はソーセージを中心に商品販売のみをおこなっていたが、足繁く通うファンからの要望に応え、ホットドッグなどのメニュー提供も始めた。
「周辺にお勤めの方がランチを買いにいらっしゃることも多いですね。
最近ベーコンの販売を始めたので、厚切りベーコンのサンドイッチなどもメニューとして考案中です」
自家製の加工食品が人気のプカプカプーカだが、代表的メニューであるソーセージを始め、作り方はすべて独学だとオーナーの麻衣子さんは言う。
2005年に宜野湾市嘉数にオープン、2012年1月に浦添に移転した。
「子どもに安全なものを食べさせたい」
7年前、麻衣子さんがプカプカプーカをオープンさせるきっかけとなったのは友人たちのこの言葉だった。
「当時、子どもが生まれたばかりとか、まだ小さいという友人が多くて。
みんな、『ソーセージやハムは好きだけど、原材料の欄を見るとなかなか買う気になれない』と言うんです。
原料の肉は1kgなのに、販売するまでには様々な添加物が入って結局1.5kgになっている、という話も。
それまでは飲食店の厨房で働いた後、独立してケータリングサービスをしたりオードブルを作ったりしていたのですが、ケータリングは大量の器材を持ち運ぶので体力がもたず、オードブルは予約制なので毎日注文が入るとは限らない。
そこで、毎日お出しできる商品はないかな?と考えていたんです。
オードブルの中でも自家製ソーセージが人気だったこともあり、それじゃあソーセージのお店をやってみようか、と」
それまでの作り方は自己流だったが、よりクオリティを高めるべく、三重県や北海道の食肉加工工場まで出向き、見学したり製造を体験したりして研究を重ねた。
しかし、最初のうちは失敗の連続だったと言う。
空気が入らないよう、肉を詰めていく。「1日20kg、600本ほどのソーセージを作ります」
想像を超える羊腸の長さにびっくり。草食動物の腸は肉食動物よりも長いという。
一本ずつ、丁寧に腸に詰めていく。
「オードブルの時のように少量ではなく一度にたくさん作るとなると、思った通りのソーセージがなかなか作れなくて。
何度作っても食感がパサつき、どうしてできないんだろう?と悩みました。
たまに、何かの拍子でおいしいソーセージができあがると、
『今日、何したっけ?!』『えーと、まず冷蔵庫を開けて〜』
と、一つ一つ手順を追ってみたりして(笑)。
失敗してもうまくいっても、どちらの原因もよくわからない時期が続きましたが、結局、温度が大事だということに気づいたんです」
ソーセージは、肉、脂肪、水を乳化させた食品だが、肉の温度が上がるとタンパク質が変成し、しっかり乳化させることができない。そこで、温度上昇を防ぐために原料の肉を氷で冷やす過程が必要になる。
「その乳化のコツをつかんでからですね。商品としてお出しできるソーセージを作れるようになったのは」
無添加というこだわりを崩すことなく、おいしいソーセージを作ることに成功したのだ。
スモーカーにつり下げた時にベストの長さになるよう、微妙に調節しながらソーセージをひねり、互いをくぐらせ、形を固定していく。
オープン当初使っていたスモーカー。「こんな小さな箱のなかで燻していたんです」
今では3倍近くの量が同時に燻せる、オーダーメイドのスモーカーを使用。「この中に毎日ぎっしりソーセージが並びます」
その味と品質は口コミで評判となり、飲食店から注文が入ったり、通販や小売りでも注文が続々と入るようになった。
忙しさが増し、麻衣子さんは商品の製造を工場に依頼しようと考えた。
「でも、当店のレシピと作り方を先方にお伝えしたところ、『こんなレシピでは作れない』と言われたんです。乳化剤をはじめとして添加物を一切加えないレシピなのですが、『こんな作りかたではパサパサしたソーセージしか作れないよ』と。
でも、実際私たちが作っているソーセージにはそういう現象は一切見られません。工場だと大量に作るということで、温度面などの勝手が少々異なるのかもしれません。
工場に断られたからといってレシピを変えるつもりはなかったので、結局今もこうして、ひとつひとつ毎日手づくりしています」
お中元やお歳暮の時期は大忙し。こだわりのソーセージやベーコンは、贈り物としても最適。
ヴィルー社のオイル漬など、安全でおいしい瓶詰め商品も多数揃っている。
我が子を想う友人らの言葉がきっかけでオープンした店には、やはり子連れで訪れる人が少なくない。
「『こういうのが食べたかったんです』『安心して食べられます』と言っていただけることが多く、とても嬉しいですね。
また、新商品のヒントはお客様からいただくことも。
新発売のベーコンもそう。
『良いベーコンを探してるんだよ』というお客様の声がきっかけで開発しました。
今後も新商品をどんどん作っていきたいと思っています。ハムも作りたいし、ポーク缶も!
安心して使えるポーク缶があれば、うちなー料理が変わるんじゃないかという期待もあります」
原材料だけでなく、スモーカーで使用するチップにもこだわっている。
「沖縄の桜の木で作ったチップを使えないかと模索中です。チップひとつで味がガラリと変わるんですよ。
また、桜の木のチップスでスモークしたソーセージを、桜のワインのつまみとして出したらどうか?などという風に、他業種の方々とのコラボも企画中なんです。
色んな方面の方と手を取り合い、ともにさまざまな可能性を追求していきたいと思っています」
朗らかな麻衣子さんだが、昔の話をするときには声のトーンが少しだけ落ちる。
「本当に大変だったんです。もうやめちゃおうか?っていう話が何度も出たくらい」
専門店で修業を積んだわけではなく、スタッフと試行錯誤を繰り返し、ようやく今の味に辿り着いた。
カフェやイタリアンレストランの厨房で働き、オードブルのメニューすべてを作ることができる麻衣子さんなら、一般的な飲食店をオープンさせることも可能だったはずだが、その選択肢は頭になかったと言う。
「レストランだとどうしても厨房とお客様との距離が出てしまうのが寂しくて。
初めてイベントに出店したとき、すごく楽しかったんです。お客様に直接お渡しできるし、食べた感想も聞こえてきて。その点は、今のお店も同じですね」
心から求めていることがはっきりしていて、その実現のためには苦労をいとわない。
つまずいても、すぐに成果が出なくても、決してあきらめない。
その姿は時に不器用にも映るが、「麻衣子さんが作るものなら」という安心感にも繋がる。
プカプカプーカが作るポークやハムは、一体どんな味?
ハムエッグ、ポーク玉子、チャンプルー…今まで作ってきた家庭料理の味わいを、どれだけ変えてくれるのだろう?
そんな私たちの期待に、プカプカプーカはしっかりと応えてくれるはずだ。
写真・文 中井 雅代
プカプカプーカ
住所 浦添市仲間1-2-2(105)
電話 098-911-6043
営業時間 11:30〜19:00
定休日 日曜日
HP http://www.pukapukapu-ka.com
ブログ http://puka.ti-da.net