浮島ガーデン老若男女が集い行き交う、島野菜料理とオーガニックワインのお店

 

目にも嬉しい5種類の料理が並ぶ「かりゆしプレート」。一つ一つが珠玉のアート作品のような華やかさ。どれから箸をつけようかしら、迷っちゃう〜!と、思わず嬉しい悲鳴。贅沢なプレートのお供は、化学肥料や農薬を使わずに作られたオーガニックワイン。

 


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きぬさや、ひじき、トマトと共にあえられているのは「キヌア」という穀物。「NASAが “21世紀の穀物” と呼んでいるアンデス産の雑穀です。一粒の中に栄養素がパーフェクトな状態で入っているんです。」見た目も、そのぷちぷちとした食感も数の子に少し似て、ひじきから漂う潮の香りとの相性もばっちり。

 

「動物性食品であるゼラチンは使わずに寒天でよせています」という、島野菜のテリーヌ。一列に並んだ丸い野菜は島にんじん。「一度干して太陽の恵みを取りこんでいます。甘みが凝縮されるだけでなく、水分が抜けて身が引き締まるので程よい歯応えも。そのまま使う場合とはまた違った美味しさが出てきます。」にんじん、ブロッコリー、茄子。口にいれた瞬間に、野菜そのものの味がしっかり広がる。まったくクセがない上に、素朴な甘さもつまっているので、「もっともっと」と箸が進む。

 

 

味噌のように見えるのは、にんじんとドライフルーツを炊き合わせたもの。砂糖不使用とは思えない甘さ、しかし確かに砂糖のそれとは違う、しみじみとした甘み。「甘みは甘酒やドライフルーツから取り入れているんです。」クラッカーも手づくりだ。「国産の小麦に発芽玄米と酒粕を入れてます。」固めの歯応えが嬉しいクラッカーをしっかり噛みしめると、次第に鼻の奥からふ〜っと抜けてくる、チーズのような香りがたまらない。

 

 

 

フードデザイナーの中曽根さんはもともとはテレビやラジオ番組の放送作家だった。東京での生活は忙しいの一言、寝ずに働く日が続くことも珍しくなかったという。

 

「あまりの忙しさに身体が悲鳴をあげたのでしょう、原因不明の微熱が続いたんです。入院して検査しても異常は見つからなかったのですが、逆に、原因が分からないことで不安に駆られました。」

 

母親から食事を変えるようアドバイスされたものの、すぐに食生活を変える気にはならず、それから3年微熱が続いてやっと、「これではダメだ、ちゃんと勉強しよう」と思い立ち、雑穀料理の第一人者・大谷ゆみこさん(現在「ゆみこ」に改名)の教室の門を叩いた。

 

「雑穀を使ってハンバーグ、ミートボール、フィッシュフライなどに似た料理が作れるんです。それがまた美味しくて。先生から教えて頂いた食生活を続けて一年が経った頃、頭と顔に膿を持った発疹が出てきて、病院では原因が分からなかったのですが、大谷先生にお会いしたら、私の顔を見てすぐに『あら、きちんと排毒してるじゃない』って。『薬とか絶対飲んじゃダメよ、どんどん出しなさい』と言われ、これが排毒か〜と。本当のデトックスってこんなに強烈なんだと驚きました。」

 


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左:島豆腐や波照間島のもちきびなどを使ったキッシュ。生地にはたまねぎが練り込まれている。卵、バター、牛乳を使わない、素朴な味わい。
右:泡盛の酒粕から起こした酵母種や、パッションフルーツなど島の果物から起こした種を作った自家製パンに、豆腐をチーズ風にしたペーストを。作った自家製パンに、豆腐をチーズ状にしたペーストを。無農薬で作られたハーブが力強く香る、ワインにぴったりの大人のおつまみ。

 


吹き抜ける風が心地よいテラス席も人気

 

発疹は3ヶ月ほどでおさまり、今の中曽根さんはぴかぴか美肌の持ち主だ。

 

「排毒はその期間も出る場所も人によって違うらしいんです。溜めこんできた毒の歴史によっても変わるんですよ。私はアトピーもあったのでステロイドを長く使っていましたし、お菓子が大好きだったので白砂糖の毒も溜めこんでいたみたいです。」

 

お菓子で毒がたまるとは、耳の痛い話。

 

「発疹が出ていた期間は、いつおさまるんだろう? という不安はありましたが、こういう食事をたった1年続けるだけで人の浄化力ってこんなに向上するんだと自分の身をもって学んだので、この料理法で間違いないんだという確信にも繋がりました。」

 

変わったのは身体だけではなかった。

 

「心の浮き沈みがなく、イライラすることもなくなって。忙しくても以前のように甘いものを食べなきゃ我慢できない!と、思うことがなくなりました。あと、お茶碗をうっかり割ることがなくなりましたね。」

 

お茶碗?

 

「何年もこの食事をしている人に言われたんです、『割らなくなるよ〜』って。心が穏やかで気持ちにも余裕があるので、お茶碗も優しくそっと置くようになったからでしょうか。」

 

そんな折、本業の関係で東京と沖縄を行き来する生活が始まった。2年前には沖縄の自宅を開放してベジタリアン料理の教室『べジんちゅ』も始めた。

 

 

沖縄では、県内のベジタリアンレストランを開拓する日々、中でも、西原にある「みぃーむ~ん食堂」がお気に入りで、その野菜料理とオーガニックワインの素晴らしいマッチングに感動。「こんな店が那覇にあったらいいのに!」という想いが、浮島ガーデンオープンのきっかけとなった。メニュー作りには、オーガニックワイン(有機栽培で育てられたブドウを使用して造られたワイン)に惚れ込んだみぃーむ〜ん食堂のオーナー・シェフ、呉屋さんも協力してくれた。

 

「野菜料理をオーガニックワインと一緒に楽しめるお店は、他にはあまり無いと思います。」

 

種類の豊富なオーガニックワインの中でも、島やさい料理に合うものだけをチョイスし、さらにそこから14種類にまで絞りこんで提供している。

 

「使っているぶどうそのものの質が違います。飲めばすぐわかりますよ。すーっと喉を通ってすっきり飲めるので、翌日も全然残りません。アルコール度数は普通のワインと変わらないのですが。」

 

使う食材にもこだわりがある。

 

「野菜は県産、有機・無農薬で栽培している契約農家さんから取り寄せています。土地のものを美味しく食べて欲しいですし、沖縄で誠実に農業に携わっている人を支えたくて。」

 

食へのこだわりは調味料にも。

 

「きちんと醸造された味噌・醤油、塩は粟国の塩のような、すべてホンモノを使うようにしています。そして、ソースやドレッシングなども市販のものは一切使わず、手作りしています」

 

メニューを見るとカルパッチョ、テリーヌ、フリット、コロッケ、つくねにステーキ……一見するとベジタリアン料理とはわからない単語が並ぶが、よく見ると「アロエベラのローゼルカルパッチョ」「島野菜テリーヌ」「ジャガイモのフリット」「ゴーヤのつくね」「島野菜のステーキ」と、肉や魚の文字はどこにも見当たらない。

 

「野菜だけでも満足できる、しっかりとコクのあるお料理を作っています。」

 

かりゆしプレートを堪能したあとでは、その言葉もすぐに飲み込める。

 


趣きのある階段を上がると

広々とした和室が心地良い二階部分

 

中曽根さんのリアルな体験談を伺い、実際に味わい深く豊かな島やさい料理を堪能すると、「よし、わが家でも実践!」と意気込んだところで、肉料理大好きな家族の顔が浮かぶ……

 

「わかります。でも、いきなり毎日実践しなくて良いと思うんです。最初は一週間のうち一日だけそういう日を作ってみて、作る方も食べる方も徐々に慣らしていけば。」

 

気になるのは中曽根さんのご主人の反応、いやがらなかったのだろうか?

 

「それが全然!むしろこの食事の方が良いとすぐ気に入ってくれて。主人は一年365日休みなしの仕事人間ですが、食事のおかげか疲れることは全くなく、健康そのもの。店のスタッフのご主人も最初はお肉がないとイヤ!と言っていたのが、いつしか『俺、もう肉いらない』って。最近、久しぶりにそのご主人にお会いしたら雰囲気もお顔もガラッと変わっていて、すごく柔和で穏やかな感じになっていたんですよ。人は食べるもので人格も細胞も生まれ変わるんですね。」

 

人の心と身体、そしてその人生も、口にするもので大きく左右される。

 

「良い食べものは私たちの心と体に良いエネルギーを与えてくれる。逆もしかり。食材を安いか高いかで判断していると、それは自分の命を値踏みしていることになると想うんですよね。」

 

私たちは毎日何かを口にして生きている。その基本的な「生きるための行為」を、もっと真剣に考えるべきなのかもしれない。自分のために、そして愛する家族のために。

 

「浮島ガーデンはオーガニックワインのお店なのに、なぜかお子さん連れが多いんです。体にいいものを食べさせてあげたいという想いと、お子さんも食べられるメニューになっているからでしょうか。」

 

健康的だから、ではなく、美味しいから、食べに行きたい。家でも実践したい。目指したい食生活の理想が、ここにある。

 


浮島ガーデン
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