写真 D’spec我喜屋若子/文 D’spec沢岻久子
宜野湾市以外の物件もありますか?
これは、来店されたお客様によく聞かれる事のトップ3に入る言葉かもしれない。
そして答えはもちろん、イエス。
私たちディ・スペックが取り扱う不動産を選ぶ基準は、事務所からの距離や地域ではなく、物件としてグッとくるかどうか。その基準を満たすならば、北は国頭村から南は糸満市まで広範囲に取り扱います。
北や南の端っこに物件がある場合、移動にかかる時間や距離を数字だけで見ると、とんでもない手間です。行き帰りだけで1日作業になる事も少なくありません。それでも取り扱いたいと思える物件は、匂いがするんです。面白い予感がして、誰かが喜ぶ絵が浮かぶんです。
繰り返しになりますが、私たちディ・スペックの仕事は不動産情報を提供する事。土地や建物を提供する人と、欲する人をつなぐ事。
気に入ってもらえるなら、これ以外はありえない、と言うぐらいのお気に入りになってほしい。野球で言うならば、ちいさな当たりの内野ゴロじゃなくて、どんぴしゃな当たりのクリーンヒットを狙いたいのです。
そんな訳で、今日もせっせと、本島中部の宜野湾市から東村の高江まで行くのです。思い立ったが吉日、とばかりに「今日は晴れてるね。予定は空いてる?今から行くか」とディ・スペック代表の古謝が言い出したのは、ミーティングを終えた午前11時。
「今・・・から?」と瞬きしながらも、すぐさま行き帰りの移動時間と、滞在時間を含めた所要時間を割り出す。今すぐ出れば、18時頃には戻って来られると踏んで、大急ぎで準備をし、5分後には車に乗り込み出発していました。
実は私、この東村高江の物件に一度は行ったことがあるのですが、そのとき自分で運転していなかったが為に、道のりに自信がありません。
住所を入力しても、グーグル・マップはポイントしないし、県道からの細い進入路には目印もない。どうにかこうにか川付近まで行けたとしても、その先のジャングルを徒歩移動するという、なんとも心細い行程が待っている。仮に、それら全てをクリアしても、帰りの道を無事車で脱出できるだろうかと不安が残ります。
というのも、その進入路は車がギリギリ通れる程度の道幅で、岩や石でガタガタな上に、湿った落ち葉が敷き詰められている。帰りはその坂道を上るので、タイヤが空回りし、絶叫マシン並にエキサイティングなのです。
思いつきなのか、気まぐれなのか。古謝の突飛な発言にも、即座に飛びついたのは、その不安要素を全て解決する条件が揃っていたからです。道のりを記憶している人がいて、見た目はおもちゃの様でも四輪駆動車があり、カメラを持ってる人がいる。幸いにもまだ午前中で、なにより天候は晴れ。この絶好の高江日和を逃すことは出来ないのです。
高速道路の最終インター「許田」を下りても、ここからが長い道のり。ちょうどお昼時ということで、おなじみの「宮里そば」で先ずは腹ごしらえとしました。名護市役所並びにある、大きな三角屋根の食堂は本日も大盛況。迷わずソーキそばを注文し、見知らぬ方との相席にも抵抗なく、琥珀色のかつおダシをじっくり味わう。うーんやっぱり美味しいな、と噛みしめて食べたつもりでも、滞在時間はせいぜい20分だったでしょうか。目的地の東村が待っているので、早々に移動します。
どこをどう通ってきたのか説明出来ないままに、いちばん目印となる東小中学校を過ぎた辺りで、県道から茂みに入ります。でこぼこと揺られながら、川に向かってそろそろと下ると、これぞジャングルという景色が広がったところが、第一ポイント。
久々に訪れた東村高江の緑の森は、記憶していたそのままの姿で、静かにそこにありました。
頭の上まで枝葉が生い茂り、水面が鏡のように緑を反射して、辺り一帯緑色のグラデーション。湿度を帯びた環境では、苔やシダ植物が生き生きとしています。普段よく見る植物が、とんでもないサイズにまで成長し、私の背丈を超える高さから見下ろしてきて、まるで自分が昆虫になったかのようです。
目的の建物は、まだまだこの先。通常の二輪駆動車ならば、ここで駐車して、山手の獣道を徒歩で移動します。四輪駆動車ならば、この川をずんずん突き進んでも行けるようですが、本日はここから徒歩で移動します。
今は静かなこの浅瀬の川も、大雨や台風後は水かさが増すので、この先は車での侵入が出来なくなります。同じく山手の獣道も、大雨の後は土がぬかるみ、歩くのもままならなくなるので、自然と上手く付き合っていかなくてはなりません。
5分程歩いた先に、ようやく見えてきた目的の建物は、築50年程の木造コンクリート瓦の古民家。川との距離感と高低差が絶妙で、川からは古民家が見えて、お庭からも川が見渡せると言う最高に贅沢なロケーション。
不動産的につまんない事をいうと、河川には地番がないので所有する事は叶いませんが、この距離感はもはやお庭。そう簡単に立ち入る人もいないので、プライベートリバーと言っても過言ではないでしょう。
よく見ると、こんな山奥にもちゃんと電柱があり、電気も電話回線も引き込まれています。さすがに水道管は設備されてはいませんが、水道の蛇口をひねると冷たい自然水(山水)が出るので、エコ生活を存分に楽しみましょう。
母屋に小さな建物が増築され、2つの三角屋根が連なります。母屋には、畳間が2間と、改装されたフローリングが1室。それと、土間部分に台所と、洋式トイレと、浴室があります。増築された建物には、フローリングの洋間が1室のみで、3面ある窓はアルミサッシで、明るく開放的。
前住人が全体的に改装を施しているので、天井材や壁板はどちらかと言えば、新しいぐらい。
コンクリート瓦屋根の、古いんだか新しいんだか分からない、桜と星モチーフの鬼瓦が気になります。
さて、この古民家をどうリノベーションしようか思案します。これだけ魅力的な環境なので、古民家の特徴を引き出す程度でいいのかも知れない。下手にあれこれいじくり回すと、かえって残念な事にもなりかねない。かと言って、このままでは、不便一辺倒になってしまう。
さて。さて。さて。
前住人の忘れ物と思しき、濡れ縁下の大きな鍋。何か用をなしているのだろうか、まさに縁の下の力持ちの絵面にシャッターをきる。
敷地面積もスケールが違います。およそ900坪の敷地の形は、ブーメラン状に建物裏手にぐるんと伸びる。隣家もなければ、敷地境界に塀があるわけでもなく、ただただ緑の景色がどこまでも続きます。
敷地内にはシークワーサーの木が幾つもあり、たわわに実った果実が自然落下して、あちこちに散らばっています。
そうか、そういう風にして肥やしとなり、栄養いっぱいの腐葉土ができるんだな。とやり過ごすわけもなく、そこはちゃっかり収穫しちゃいます。古謝の長身を持ってしても届かないところは、手鎌を持ちだして枝ごとカット。タイミング良く拾った残置物のホーロー容器に入れていきます。
小一時間は居たでしょうか。ひとりは写真を撮りまくり。ひとりはまじめに建物や敷地をチェックしたり、通風したり。ひとりは小川で大はしゃぎ。見たことのない虫がいるだの、川がきれいだの、シークワーサーが美味しいだの、ひとしきり自然と戯れたところで「帰るよー」の声に我に返る。
そうだ、仕事中なのだった。
帰りしな、名護市安部の川辺で見かけたカヤック集団に目が止まり、少し寄り道してみる事にしました。近くに寄ると、どうやらそれは中学生ぐらいの生徒さん達で、「やんばる自然学校」のコーチらしき男性に、カヤックの乗り方のレクチャーを受けているところでした。しばらく見学した後、集落の方へ目を移すと、昔懐かしいのどかな風景と防風林の先に見える海に、吸い込まれました。誰もいない静かな海と細かくてきれいな砂浜に、四輪駆動のパンダ号も大はしゃぎ。
なんだかんだで、事務所についたのは18時前。宜野湾市から東村まで往復すると、やっぱり1日作業になってしまう。遊んでいるように見えるかもしれませんが、いえいえ、やる事はやりました。道を知ることは不動産業にとって重要な事で、地域の特徴を把握する事も大切な業務。あれも、これも全部仕事です。
リノベーション計画中物件までの道のりや場所も理解したし、建物現状や敷地状況も確認し、環境を体験し、空間も体感しました。私達の仕事は、物件のリアルな情報を、言葉や文字や写真でお伝えする事。写真で見た情報や、人伝えの情報で伝言ゲームにならないように努めます。何より、自分自信がその物件を気に入っている事が大切。自信をもっておすすめできる物件であれば、嘘のないセールスができるのです。
何度も通っている古謝と、2度目の私と、初めての我喜屋の感じ方はそれぞれ違うし、初めてのインパクトを味わった彼女のはしゃぎっぷりに確信しました。
間違いない!この物件、匂いがします。誰かが喜ぶ絵が浮かびます。
リノベーション古民家、乞うご期待。
ディ・スペック株式会社
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tel:098 893 5015 Fax:098 894 2285
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