丘の上に建つ姿を目にする度ずっと来たかったこの教会、
外観を間近に見られたことだけでもうれしかったのですが、シスターに中もご覧になられますかと、思いがけず案内していただけることになり、軽い高揚感に包まれながら、建物のことやここでの暮らしのエピソードをうかがういました。
聖堂からつながる廊下の先の扉を開けていただくと、まずちいさな居室が並んでいました。
静かで穏やかな空気、差し込む木漏れ日、シスターのやさしさ、つつましやかな暮らしぶりには、心をうたれました。
簡素ですが、温かみのある調理室や食事室。
風が抜けるので夏はさほど暑くないけれど、冬は寒いんですよとシスター。
床には現在は滑り止めのシートが張られていますが、当時はコンクリートの床が湿気を帯びるとそれはそれはつるつると滑ったそうです。
滑らないように歩くことが鍛錬のひとつでしたと笑ってお話されていました。
中庭を囲むように回廊があり、窓越しにはよく手入れされた広い中庭があります。
鉄筋のような模様の鉄製の手すりも昔のまま。
昔の鉄筋を利用してつくられたのでしょうか。
階段を降りた場所に洗濯室やシャワー室。
洗濯室にはかわいい床の模様!
ざらざらとしていてちゃんと滑り止めになっています。
聖堂や修道院に降りそそぐ雨を地下にある貯水槽に貯め、トイレや洗濯などの生活用水をまかなっている。
この目盛りを見ると現在の貯水量が一目で分かる仕組みに。
今年の様に大雨が多かった時には何度もこの部屋に目盛りを確認しにきて、溢れる前に放水するんです、昔から変わらずずっとこの方法なんですよとシスター。
きっと大変だと思うのですが、この装置になんだかワクワクしてしまいました。
水色と黄色の床のタイルがかわいかったシャワー室。
窓際の小さなテーブルにかけられていたテーブルクロス。
小さなところにもひとつづつ愛情や感謝を感じます。
何度も塗られたであろう階段も美しい。
終始あまりにも良い表情をされているので、お願いして撮らせていただいたシスターのやさしい笑顔。
年末のお忙しい中、ほんとうにありがとうございました。
ステンドグラス越しに明るい光が差し込む開放的な聖堂へ。
この建物にたくさん使われている、もうつくる事が出来ないという鉄製の窓枠は、しっかりメンテナンスがされていてとても大切されています。
網戸の枠は当時は木で出来ていたそうですが、年月とともに腐ってしまいアルミのサッシに、なるべくデザインは変えないようにつくりなおされたそうです。
窓枠のみに限らず建物とそれをとりまく環境全てに慈愛の心を感じる場所でした。
昭和33(1958)年創立、築54年に。
聖堂では静な祈りが捧げられていました。
花ブロックもところどころに使われていて、この建物の印象的な一つの要素となっています。
エントランスの床にも滑り止めの模様。水玉なのでかわいく見えて仕方ないのですが、何か理由があるのかもしれませんね。施工した人の遊びごころ?
皆、扉を閉めるときもそっと。
中庭のシマサルスベリのうねっている様はここの歴史を物語っているような気がします。
庭の植物ひとつづつに手入れが行き届いていて愛情を感じます。
教会の建つ丘の上からは与那原の市街地が一望でき、東海岸まで見渡せる。
もともとはこの丘のすぐ下まで海だったそうです。
愛情をかけ、大事にされている場所や建物にふれると、心が洗われるような気がします。
日々の生活で蓄えてしまった贅肉を落とし、本当に必要なものを見極め、大切にしていこうとあらためて感じた年の瀬の一日でした。
来年の抱負でもあります。
皆様よいお年をお迎えください。
文・写真 葉棚達也・葉棚由真
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