「オープンハウスを開いて、たくさんの方にこの家を見てもらったんですが、やっぱり皆さん、『変わったお家だね』とおっしゃってました(笑)。
私たちが理想とする家は、やっぱり私たちだけのものなんだなって思います」
家族は5人。家は二階建て。なのに、部屋はたったの2つ。
キッチンは、まるで使っていないかのように何も置かれていない。
コンロ上にあるはずの換気扇すら見あたらない。
道路に面した窓ガラスは白い磨りガラスを使っていて、外が見えない。
洗濯物干場は室内で、シャワー室はガラス壁で丸見え。
トイレに至っては、なんとその壁もない。
床は一般な木のフローリングでなく、店舗や事務所で見かける長尺シート。
これらのことが「変わってるね」と言われるゆえんだ。
だけど、その一つ一つにはしっかりと理由がある。
ワンフロアワンルームという究極にシンプルな間取りにしたのは、いつも家族一緒に過ごしたいから。
「子どもたちは、きっとすぐに大きくなって自立していっちゃう。だから今だけは、何をしているときも近くで見守りたいんです。寝るときだって、大きなベッドで5人が並んで寝ています」
キッチンを生活感の無いほどに片付けているのは、スッキリとした空間が好きだから。
ケータリングサービスをしたり、お料理教室の先生として働くおりえさんは、実は人並み以上に器類や調理道具を持っている。
キッチン奥の壁は一面収納棚になっていて、なんと冷蔵庫までもがそこに仕舞われているのだ。
頭上に換気扇を付けなかったのも、やっぱり空間としての魅力を大切にしたかったから。
家を建てる前から、友人たちや親類を招いてのパーティーをよく開いていたという。
その時の中心となるのがやはりキッチン。
おりえさんはキッチンを料理が出来る場所というだけでなく、集まった皆が気持よく過ごせる場所にするべく、換気扇を頭上からコンロ奥に移動させた。
「オーダーシステムキッチンのMOVの方も、新しいことをしたいと、色々と一緒に考えて下さいました。この小さなガラスの板が換気扇だなんて分からないですよね。
普通の大きなダクトのようには湯気や油を吸ってはいないのかも知れないけど、私たちにとっては気持ちの良い場所であることの方が大事なんです。
部屋は汚れたと思ったらその時に掃除をすればいいと思ってます」
磨りガラスを多用したのは、光の降り注ぐ部屋にしたかったから。
那覇という土地柄、窓から見えるのはお隣さん家と道行く人。
外からの視線を気にしてカーテンを閉め切っているくらいなら、いっそ磨りガラスにした方が、結果明るい部屋になる。
その代わり比較的見晴らしの良いベランダ側は、大きく窓を取り全て透明ガラスにした。
目隠しも兼ねてグリーンの壁を作ろうと、ハゴロモジャスミンの成長を待っている最中だ。
ベランダの一角に設けた作り付けのテーブルは、グレーチングの屋根と相まって内とも外とも取れる場所を作っている。
おりえさん夫婦は、夜にはよくここに座り、晩酌をしながらおしゃべりするのだという。
「昼は、正午を外せば光が調度よく差すんです。目隠しのために壁を立てて、光は上から。これで上もしっかり閉めちゃうと暗い小部屋になっちゃう(笑)」
同じ考え方が洗濯物干場にも応用されている。
洗濯ものはベランダにではなく、この寝室とつながった洗濯室で乾かす。
天井はガラスにし光を取り込み、壁に付けたルーバーから風を通す。
こちらも半分外、半分内のような空間だ。
「実はこの光を上からという方式は、設計をお願いした団設計工房の得意とするところなんです。
建築士さんの自邸で実験済みなので、安心して室内乾燥室を採用できました」
「バスルームとトイレには皆さん決まって驚かれます。でもこの方が気持ちいいから。
私たち夫婦は、利便性よりもかっこよさの方が大事みたい(笑)。
床材を長尺シートにしたのもそう。
冬は冷えるとか色々あるんですが、『土間みたいにしたい』という自分たちの気持ちの方を優先。
その結果寒くてもいいんです(笑)」
階段の壁一面を黒板にし、創作の好きな娘さんが自由に使えるキャンバスにしたり、映画好きの夫婦が大画面で映像を楽しもうと、子供の勉強机を取り外せるようにしていたり。
おりえさん一家のライフスタイルから自然と生まれた工夫は、ここかしこに見られる。
他の人にしてみれば理由を聞いても不可解なものかもしれない。
でもだからこそ、フルオーダーで家をつくる意味もそこにある。
新築で建築士を頼んで家をつくる醍醐味は、自分の描く理想の暮らし方を手に入れられること。
おりえさんはS-HOUSEでそれを叶えたのだ。
団設計工房
沖縄県那覇市久茂地1-8-19
TEL 098-863-2355
FAX 098-863-2359
メール dan@cronos.ocn.ne.jp
HP http://dansekkei.jp
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