初めて自分で建てた家


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「家を建てた経験?…ないですよ(笑)。
これが、初めて自分で建てた家です。」
 
と、あっけらかんと言い放つ家主は木工職人。
器や家具、カトラリーは作ってきたが、
家を建てたことはなかった。
しかし、
土地を買ってすぐに思ったこと。
 
「家くらい建てられるだろう」
 
そして実際、建てることができた。
しかもご覧のように見事に、美しく。
 

 

 

 
奥の部屋の右側は、子供二人のスペース。
 
「屋根が高いので中二階のように作りました。」 
 
はしごをのぼると二つの部屋に分かれていて、
ベッドと机が置かれている。 
 
「娘たちの希望で壁は薄いピンク色に塗りました。」
 

 
床を上に上げて空いたスペースを収納に活用。
 
「普段使いのものも入れてますよ。
さっと出せるのでなんら不便はありません。」  
 

 
収納棚ももちろん手製。  
 

 
洗面所やお風呂も木造り。
 

 

 
「家を建てている途中で困ったこと?
うーん…なかったですね、全然。
自分で建てるから時間がかかるじゃないですか。
だから、一つの作業が終わる前に、次の新しい問題はクリアされてるんです。
例えば、屋根を作ってるときには次の壁を塗る作業のことを考えていて、
さしあたって解決しないといけないことは屋根を作ってる間に解決できちゃうんですよ。」
 
まるで
「なんてことないんですよ」
という顔で話すが、
こちらにとっては腑に落ちないことだらけ。
そんな行き当たりばったりで果たしてこんな素敵なおうちが建つものだろうか?
 
そこはやはり、木工職人である家主の、
木に対する知識の深さ、経験の豊富さが礎となっているのだろう。
 
実際に家を建てた感想を訊くと、
 
「面白かったですね、家を建てるのは」
 
じゃあ、誰かに「自分の家も建ててくれ」と頼まれたら?
 
「うーん…たまに考えるんですけどね。
頼まれたらどうしようかなって。
でも、自分の家を建てるために必要なことだけを調べて建てたので、
また新たな勉強が必要になるでしょうね。」
 
どうやら、やぶさかではないらしい。
 

写真・文 中井 雅代