「お邪魔しま〜す。」と、声をかけるも、
この家に玄関はない。
いや、この巨大な窓と縁側こそが、玄関。
家主の特等席からは、さちばるの大パノラマをのぞむ。
縁側の対面は岩壁!
「よく自宅でイベントを開くので、ここが舞台になったりします。」
なるほど、リビングには打楽器の姿も。
奥様が「おうちの中で一番好きな場所」という、キッチン。
センスの良い道具類なら、見える収納でも美しくまとまる。
外にカウンターを置き、昼間はカフェ、夜はバーに。
「友達が来ると、ここでのんびり飲むことが多いですね。」
豆から挽いたコーヒーを手に、視線の先には海。
なんと贅沢な時間。
天窓には十字に柱が渡されて。
降り注ぐ光を受ければ、十字の影が落ちる。
「真上を通る月が、リビングに座ったまま綺麗に見えることもあります。」
リビング奥の「隠し部屋」。
本棚に挟まれた通路の先に、身をかがめなければ入れない小さなスペースが。
机と椅子の置かれた小部屋。
まるで秘密基地のようなたたずまいに、心躍る。
ベッドルームへはなんと、外階段をのぼって。
カーテンをつけていない大きな窓からも、穏やかな海が見える。
「星空もまた、素晴らしく綺麗ですよ。」
さらにさらに、広〜い屋上まで!
「夏にここで呑むビールは・・・」
美味しいでしょうねえ、もちろん!
タイル張りのエキゾチックなバスルーム。
大きな木につりさげた、これまた大きなブランコ。
大人だって乗りたくなる。
「もとは木の地の色だった外壁を、友達を呼び集めてみんなでペンキを塗ったんです。」
「あれ、楽しかったよね〜。」
「夜はみんなでご飯を食べて。ねえ?」
よく人が集まるというのも納得の、リビングを中心にした、遊び心でいっぱいのおうち。
広い広い玄関が、「いつでもどうぞ」と言ってくれているようで。
あの・・・また遊びに来ても良いですか?
「もちろん。実は、キッチンをもう少し広げようかと思っていて・・・」
家主の遊び心は、とどまることを知らない。
写真・文 中井 雅代