fireworks(ファイアーワークス)量より質の花火のセレクトショップ。大人が楽しめる花火でそれぞれの花火大会を

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見たことのないような花火の色合いとデザインの美しさに思わず見とれる。
無意識に、この花火を生み出したデザイナーは誰だろう?
こだわりのショップのオリジナル商品だろうか? などの考えが頭をめぐる。
 
「これらはごく普通の日本製の花火。僕たちがデザインしたわけでもないし、おしゃれなセレクトショップのオリジナル商品でもありません」
 
「花火のセレクトショップ」をコンセプトとするプロジェクト「fireworks」をプロデュースする山田遊さんの言葉にはっとした。氏が代表を務める会社「method(メソッド)」の主要業務の一つがバイイングであることを思い出したからだ。
 
「花火のカタログを見てるとすごくきれいで素晴らしい見た目のものが沢山あるんですよ、もともと。だから僕らは企画も何もしてないし、花火ブランドを立ち上げたわけでもない。既製品をバイイングしているだけ。だから『花火のセレクトショップ』と言いきっているんです」
 
山田さんはインテリアショップ「IDÉE(イデー)」でバイヤーとして活動した後独立、クリエイティブ・ディレクション事務所「method」を立ち上げ、代表を務めている。
 

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– – – 「夏はヒマだから何かやろう!」がきっかけ
 
普通、バイヤーは当然独立するときに自分の店を持つことが多いのですが、僕はあえて店を持たずにフリーのバイヤーとして様々なお店の店のプロデュースや雇われバイヤーをしています。
 
花火のセレクトショップをやろうと思いついたきっかけは、夏はわりとヒマだから(笑)。
僕らは小売店さんに仕事を依頼して頂くことが多いのですが、店のオープンはだいたい3月か9月なので春と秋は忙しい。また、冬は年末商戦やクリスマスがあるから忙しい。でも、夏は結構ヒマなんです。それで「何かしよっか?」と(笑)。
 
うちのスタッフの中に、もともと素敵な線香花火を売っていた社員がいて、打ち上げ花火の免許も持っている。それで色々聞いたり、調べていくと、特注でオリジナル花火を作るとなると最低でも1万本ものロット(ロット:一回で製造できる最小量)になるようで。こだわり抜かれた少数の花火が色々なお店に置かれ始めたことは知っていたし、良いことだとも思っていたけれど、販売が始まって3年以上経ってもまだ広がりが乏しいように僕は感じていました。
 
でも、僕らはデザイナーでもメーカーでもなくバイヤーですから、オリジナル花火を作って販売するのは違うな、と。そこで花火の総合カタログをくまなく見てみました。それこそ千種類以上の花火が載っていたと思います、種類がものすごく多くて。ただ、その中にすごく素敵な花火があったんですよ。普段僕らが目にすることがないようなデザインの花火が。
 
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僕らが日常的に見ている花火って、基本的にはスーパーやコンビニでパックでセット売りされている姿ですよね。色々な種類の花火が沢山入って1,000円〜2,000円で販売されていて、量と値段が勝負。僕もそれまではそういうお店で花火を買ってたんだけど、初めてカタログを見て、こんなにシンプルで大人っぽい花火もあるんだなと驚きました。
 
そういう花火がどこで売られているかというと、花火問屋さんで単品売りをしているんです。花火問屋さんは、東京だと浅草の近くの蔵前というところあたりにあります。でも、花火を買いに問屋街まで行く人なんてほとんどいないですよね。
だから、「こういう花火が身近な店でバラ売りされていたら楽しいだろうな。夏はヒマだし、やってみるか!」 って思ったのがきっかけですね(笑)。
 
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– – – みんなが楽しめる商品なのに子どものみを対象としたブランディングに疑問
 
また、夏に販売する商品をどれにするか決める際、「1年を通して販売はしたくないな」とも思っていました。普段の仕事では商品をプロデュースして卸すことは余りしたくないんです。あくまでもバイヤーですから買う側。売る側になるのはあんまりよくないと思っていて。それに1年中売っているとどうしても本業が疎かになってしまう。売ることに忙しくなって自分たちの仕事に手が回らなくなると本末転倒になってしまうから、1〜2ヶ月の間で売れるものにしようと。
花火ってだいたい1〜2ヶ月で売れなくなっちゃうんですよ。冬に花火って殆ど思いつかないですもんね。
そういう季節感も大事にしたかったんです、風物詩的なものを売りたいなと。夏から連想するものを5つ挙げるとすると、だいたい花火って入ってきますよね。
 
それに花火って、日本に住んでる方なら老若男女問わずほぼ全員やったことがあって、事故に遭ったとかいうことでもない限り、基本的にはポジティブな気持ちをみな抱いていると思うんです。つまり、夏になればそれだけ多くのひとが花火を楽しんでいるということ。
 
でもそれにしては、今売られている花火の殆どは子どもの遊具みたいにブランディングされちゃっていて、そういう打ち出し方しかされてませんよね。そして基準は量と値段だけ。
みんなでわいわい遊ぶだけならこのブランディングでも機能するけれど、全員に対しては機能しない。少なくとも、大人はそんなに沢山の花火を一度にはやりたいとは思いませんよね。例えば、老夫婦ふたりが花火をやりたいと思っても、あのお得パックは買わないと思うんです。子どもやグループ、ファミリーにしか向いてないんですよ。
 
それに、あまりに量が多すぎて、最後のほうは使い切るために数本まとめて火をつけたりしません?!(笑) だから、あんなにいっぱい詰め込む必要があるのかな? という疑問も感じていて。
 
しかもあれだけ色んな種類がつまっているのに、点火するまでどんな花火なのかまったくわからないことが多い。ロケット花火やねずみ花火のような変わり花火はまだわかりますけど、手持ち花火はほとんど出たとこ勝負。
 
そういう花火に対しての「なんで?」が色々あったんです。
 
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– – – 検証を重ねて選ばれた花火のほとんどが日本製
 
ありとあらゆる種類の花火を実際に遊び、その見た目だけでなく質を確かめました。
動画を撮る人、ストップウォッチを持って時間を計る人、花火の変化のメモをとる人というふうに役割分担し、どういう風に燃え進んで、どういう火花が見えるのか、音の大きさは? 燃える長さは? と細かく検証した上で、30種類弱を選出しました。
 
お客様が何を基準に購入なさるかを考え、販売する際はその基準をお客様に提示するわけですが、商品についてある程度知識がないと基準はつかめない。
花火問屋さんに行けばおっちゃんが教えてくれそうだけど、行く機会はあまりなさそうだし、職人気質のおじさんだと言葉数も少なそう(笑)。だからどういうシチュエーションでどうやって遊んだら楽しいかを自分たちで考えて、遊んでみるところから始めたんです。
 
そうすると、けっこう色んなことが見えてくる。それまでは僕も花火の燃え方を真剣に見たことってなかったけれど、まじめに「この花火は良いね」「これはちょっと…」と選別していくと、結果として殆ど日本製の花火を選んでいたんです。
実際に遊んでわかったことは、日本製の花火は全体的に質がいい。火花がきれいだし、点火してからの流れも趣きがある。日本のものづくりってやっぱりこまやかなんですよ。海外製のものは少し大味な感じの花火が多くて。見た目も含め、全体的にきれいだなーと思える花火は殆どが日本製でした。
 
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でも今、日本製の花火のシェアってすごく下がっちゃってて。線香花火に至っては一時期0%になったこともあるんです。今は少し盛り返したけれど、それでも1%にも満たなくてほとんどが海外製品。
日本製のものはしっかり作られているものが多く、コストがその分かかっているのでパック売りにはなかなかできない。だから、僕らが選んだ花火の殆どはパック売りの花火の中には見かけないようなものばかりになりましたが、これは「すべて日本製に」と意図して行ったことでなく、良いモノを選んだ結果、期せずしてほとんどがすべて日本製になったというだけのこと。
 
とは言っても海外製花火がすべて悪いというわけではなく、例えば変わり花火などは中国の旧正月に使う爆竹に近いので、中国製向きの花火かなぁとも思います。
 
シェアの下がった花火がどういうふうに消費されているかというと、基本的には問屋さんでのバラ売り。でも、一般のひとたちがそういう場所に出向く機会は殆どありませんよね。だから、僕らがセレクトした花火はどれも初めて見たというふうに思われるのかもしれません。
また、そうやってバラ売りされている花火は、パッケージや箱はどれもあまりデザイン性に富んでいるとはいえないようなものだったのでそれらを変え、品番のような名前も取ってしまい、どうやって遊んだら楽しいかをキャッチコピーにして、花火の魅力を端的にお客様に伝えるようにしました。
 
 
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fireworks のホームページ。それぞれの花火をクリックすると、タイトルと説明文が。「B6: はじめての花火」と名付けられた花火には以下の説明文。
「ベランダでも遊べそうな、音も静かで、火花も小さめのスパーク花火です。
燃焼は『シャー』と約15秒。お子様や、海外の方へ、はじめての花火としてオススメです」

 
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– – – 「カップルで」「家族と」。遊び方や燃え方をわかりやすくグラフ化。
 
花火の燃え方って単調じゃないんですよ。長く燃えるもの、音が静かなもの、くるくる回すと宙に光の残像が残るもの、火花が2つ出るもの、光が青白いものなど、特長がいろいろあって魅力も違う。
 
例えばこのオレンジとグレーの花火。すごく可愛いんですけど、ただこれ、火薬の量が少なくて火花も小さめ、燃える時間も短いんです。これを大人数でわいわいやっても多分つまらないって思われちゃう。でも見た目もキレイで火花の質も悪くないし、静かに燃える良さもある。だから子どもが初めて遊ぶには最適じゃないかなと思い、「はじめての花火」と名付けました。
 
「カップル」「ファミリー」「フレンズ」というジャンル分けは人数の基準。カップルは二人、ファミリーは四〜五名くらい、フレンズだったらそれ以上の大人数。それぞれのシーンで楽しめる花火って変わってくると思って。
 
静かに上品に燃える花火を大人数でやってもつまらないかもしれないけれど、カップルでしっとり遊ぶと二人の距離が縮まりそうでいい。もちろんその逆もあります。音が大きく派手な花火は子どもがいるときは向かないこともあるけれど、みんなで遊ぶと盛り上がるし楽しい。
だから、花火の魅力って単調じゃない。いろんなよさがあるんだなーと。
そういう魅力をわかりやすく、どこで誰と遊んだら楽しいかという風に30種類についてすべてグラフ化したんです。正直、主観的ではありますが(笑)。
 
こういうのって、実際に遊ばないとやっぱりわからないんですよ。「浴衣女子向け」なんてのもあって、めちゃくちゃですけどこれ、僕が名付けました(笑)。うちの事務所にガレージがあって、そこで花火の検証を社員みんなでやってたんですけど、近所のお店で働いてた知り合いの女の子がきてくれて。その可愛い子がこの花火を燃やしてるのを見て、「浴衣着てこれやってたら超いいかも~」みたいな感じで(笑)。…その子が可愛かったっていうだけの話かもしれないですけど(笑)。
 
あと、花火で遊ぶ時に宙でくるくる回して残像で絵を描こうとするやついません? でも、あれってすべての花火で絵が浮かびあがるわけじゃないんですよ、それぞれ燃え方が違うので。パック売りの花火だと特に、残像が浮かび上がるものが前もって分からない。だから、きれいな残像が残せる花火には「暗闇をキャンバスに」というタイトルをつけました。
 
「ファイヤーボール出せます」という花火は、まさに火の玉が出るんです。花火って必ず「下に向けて持ってください」という注意書きがあるのですが、これを下に向けているとぽとぽととすぐに火の玉が落ちちゃうので全然面白くない。だからこっそり「少し高めに上げて」とアドバイスしています。
 
最初は花火を実際にやっているところを撮影した映像で紹介しようかとも考えたんだけど、お客様が遊ぶ前に結果を見せちゃうのはやっぱりよくないなと。どうしても主観は入っちゃうけど、なるべく言葉で伝えた方がいいと思いました。
 
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– – – 大人に楽しんでほしいから、こだわりの花火を
 
花火ってお祝いに使うようなおめでたいイメージもあるし、パッケージを変えるだけでギフトにもなる。だから最近は、夏のノベルティや結婚式のひきでものなどにも使って頂けるようになり、また、販売する場所も服屋、雑貨屋、インテリアショップ、本屋など多様化してきています。
 
大人になっても、夏になるとやっぱり花火ってやりたくなりませんか? 「fireworks」は大人の方に花火を楽しんで欲しくてやっているようなもの。大人が遊ぶ花火ってそんなに種類も量もなくていいんじゃないかと思うんです。一般的な花火と比べると値段的には安いとは言えないかもしれないけれど、日本の良い花火なんです。3種類の火花がちゃんと見えたり、花火職人さんが「これは質がいいよ」と太鼓判押してくれいてたり。ちゃんと見ていないとわからないようなディテールだけれど、大人はそういう部分にこだわって遊んだ方がきっと楽しめると思うんです。
そうやって、皆さんそれぞれの「小さな花火大会」を楽しんでほしいです。好きな女の子と遊ぶための花火を、気合い入れて男子が選んだりね(笑)。
 
東京だと花火をやれる場所もすごく少なくなってて寂しいんだけど、その点沖縄はビーチパーティーも盛んだし、庭のある家も多い。花火をやる環境としても最高ですよね。
 
僕らは普段は買ったりプロデュースしたりする側なので、販売することもたまには経験しておかないといけないと思っています。
2月、8月はものが売れない時期だと言われていることもあり、8月、つまり夏は花火だ! と、このプロジェクトを始めたのですが、そうなると2月も何かやりたいなーと。あとに残るものではなく消えもので、2月しか売れないもの。
今ちょっと考えてるのはね、温泉のもと!(笑)。「冬はお風呂だ!」と思って。今度は社員みんなでお風呂入りながら検証したりしてね(笑)。
 

写真・インタビュー 中井雅代

 
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