tituti(ティトゥティ)OKINAWAN CRAFT今日からすぐに使いたくなる工芸品を。作家本人に会える店


 
琉球松で造られた箱のふたには、
紅型や織物といった沖縄の布地があしらわれて。
思わずそっと、心を込めて触れたくなるような繊細さ。
大切な人への贈り物をこの箱に入れて。
あなたのうむい(想い)が、より温かみを持って伝わりますように。
 
「うむい箱」
と名付けられたこの箱は、
沖縄の工芸作家6名によるコラボレーション作品だ。
 
木工・西石垣友里子
漆芸・謝敷眞起子
紅型・金城宏次、田中紀子
織物・長池朋子
陶芸・金城有美子
 
いずれも名だたる工芸作家の名が連なる。
 

(クリックで拡大します)
琉球王朝時代から受け継がれるロートン織の風呂敷、ブックカバー、ペンケース

 

 
「沖縄工芸を普及させたい」という想いのもと、
デザイナー・金城博之さんの呼びかけに工芸家達が集まったのが2005年。
沖縄県内にとどまらず、
県外でも積極的に展示販売を行なった。
 
「展示会ではお客様の顔が見えるので、発見も多かった。
市場の要望もダイレクトに汲み取ることができますし。
そこで、使い手の声を元に商品開発できたら良いなと思うようになり、
お店を持とう、と。」
 
2010年7月、国際通りからほど近い場所に路面直営店をオープンさせた。
 
tituti直営店が他の店と大きく異なるのは、
作家自身がシフト制で店に立つという点だ。
 
「そうすればお客様が作家に会って直に話を聞けますし、
逆もまた然り。
両方メリットがあるんです。
作家はお客様の声を聞けるし、反応も自分の目で確かめられる。
そこにはリアリティがあります。
お客様の要望はきちんとお伺いして、情報としてしっかり残しています。」
 
商品を店に卸しているだけでは、
買い手の反応をダイレクトには受け取れない。
 
「お店の方は売れ筋商品の事しか話してくれなかったりしますからね。
作家が作りたいものと売れ筋商品は違うことも多いですから。
職人さんは別ですが、沖縄ではどうしても作家が工芸品を量産することはできません。
また、経験を積むにしたがって、作りたいものも変ってきます。

そこで、商品そのものだけでなく、その背景まで見えるようにすればどうかと。
物のストーリーが伝われば、お客様の生活の中にまでもっと入っていけるんじゃないかと思って。」
 
工芸品というと、どうしても敷居が高いイメージがある。
日用品として使うことをためらうような高級品を想像する。
 
「もっと身近に使って欲しいんです。
例えば、おうちの食器棚を開けると、どうでしょう?
量産品が多かったりしませんか?
沖縄にはもっと良いものがあるのに。
そういう地物(じもの)がもっと普及したら良いなと思っていて。」
 
金城さんと同じようなジレンマを抱えた工芸作家は少なくない。
同じ想いを持った作家達が、自然と集まって来た。
それが、今のtitutiメンバーだという。
 


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沖縄ならではの強みもある。
 
「本土にももちろん素晴らしい工芸品はありますが、
作家さんにはなかなか会えません。
でも、沖縄って会えますよね?
『ああ、あの人は◯◯にいるよ~』と聞いて、
行けば会えちゃうという環境(笑)
物の魅力はもちろんですが、人の魅力というのも沖縄の良さではないでしょうか。
本土で可能な量産や価格帯に太刀打ちしようとしても、
沖縄は絶対敵いません、競争できないんです。
だから、そういう価値観にとらわれず、沖縄の考え方でやったらどうかな?と。
小っちゃなマーケットかもしれないけど、
そういうところから始めても良いんじゃないでしょうか。」
 
titutiの想いは、沖縄県民にもしっかり届いている。
 
「お客様のうち、約4割を県内の方が占めています。」
 
地元の方が買ってくださるというのは、やっぱり・・・
 
「ええ、すごく嬉しいです。
若手がこういうことをやってるのが嬉しいとおっしゃってくださる方もいて。
リピートして買ってくださったりも。

titutiでは、いわゆる売れ筋商品というのが無いんです。
半年や1年を通じて見ると、動かない商品が無い。
必ず、ゆっくりとですが動いています。
ですから、縁なんでしょうね、きっと。お客様と商品との。」 
 

西石垣友里子による琉球松の利休箸、金城有美子による箸置き
 

 
titutiのメンバーで、フィンランドへも行った。
 
「みんなで一緒にいくことで、
価値観を共有できるようになるのでは?と思って。
同じ飯を食えば、
『こういうの作ってみない?』
という話になるだろうと。
旅を共有するというのは特殊な体験です。
絆の強さが変わって来る。」
 
帰国後間もなく、陶芸の金城有美子さんが、
titutiと同じ店舗内で販売スペースを共有している
イラストレーターのMIREI(ミレイ)さんとコラボレーションしたいと申し出た。

二人のコラボによる作品の一つ、
陶器のピアスは、すぐに人気となった。
 
「伝統工芸的を否定している訳ではありません。
むしろ、尊重して、続けて行くべきだと思っています。
でもそれだけでなく、もう一つの軸を見つけたくて。
工芸の間口を広げることが大切だと思っています。
 
例えば、紅型の柄をデザインを通じてパッケージに落とし込んだり、
イラストレーターと工芸作家がコラボしたり、
様々な切り口で展開して行きたいですね。
 
異分野の8人の工芸家というのがミニマムな集合体だとすると、
それをいきなり、雪だるまのように大きくしようとしたら、
どうしたって崩れてしまう。
ですから、今の8人の絆をしっかり固めて、
様々な課題をこなし、経験していきたいと思っています。
絆がしっかりと固まったら、
そこからは沖縄全島の他の作家さんたちも集えて、商品も置けて・・・
という場所になれば良いですね。」
 
tituti(てぃとぅてぃ)とは、沖縄方言で「手と手」。
それは、
買手と作り手の「手と手」でもあり、
異分野の作り手同士の「手と手」も意味する。
 



あらためて、家の食器棚を開けてみて、腕組みをして考える。
どうして今まで沖縄の工芸品を買って、日常使いしようとしなかったのかと。


高価だから?


思っているほど高くないし、
しっかりした造りゆえ、長い目で見れば逆にお得なのに・・・


なんだか古くさいイメージがあるから?


様々な作家達が工芸の間口を広げるべく、
魅力的にアレンジして新しい工芸の世界を示してくれているのに・・・


工芸=土産品?
うちなんちゅは、沖縄の工芸品を買う必要などない?


例えば、あなたが友達のプレゼントを買う時、
魅力の無い品物をわざわざ選ぶだろうか?
まさか。
自分でも使いたいと思えるような、素敵な商品を厳選して購入する、
だって相手に喜んでほしいから。


工芸品だって同じではないだろうか。


自分が使いたいと思えないものを、
どうして県外の人にお勧めできるだろう?
これが沖縄の工芸品だと、胸を張れるだろう?

 
しかし、自分のまったく気に入らない商品を
「地物だから・・・」と無理して購入して
嫌々使う必要がないという現実に思い当たり、
私はほっとして、そして嬉しく思う。


沖縄には、
工芸品という肩書きがついていなくとも持ち帰りたくなる、
こんなにも魅力的な商品が溢れているのだから。

写真・文 中井 雅代

 

tituti(ティトゥティ)OKINAWAN CRAFT
open:13:00~19:00
close:水曜日
那覇市牧志1-2-6 MAP
TEL&FAX 098-862-8184


*作家はシフト制で店に立ちますが、
都合がつかない場合はスタッフが立つ事もあります。
下記ブログにてご確認ください。


ブログ:http://tituti.ti-da.net
HP:www.tituti.net
オンラインショップ:http://titutishop.net