NO BORDER, GOOD SENSE仕事場を訪ねてⅡ「大人の愉しみ」 木工デザイナー三谷龍二

文・写真 田原あゆみ

 
 
 

 
「NO BORDER , GOOD SENSE」
 
5月11日(金)から10日間の企画展のタイトル。
木工デザイナーの三谷龍二氏・陶作家の安藤雅信氏・ミナペルホネン チーフデザイナーの皆川明氏の3人のコラボレーションによる初めての企画展。
 
 
三谷龍二
職人たちとの共同作業により、普段使いの木の器を作る木工デザイナー。
全国で個展を多数開催する。「クラフトフェアまつもと」「工芸の五月」の発足当初から運営に関わっている。
 
 
 
 
 
ピアスの金属が冷えて耳が痛くなるほど、しんしんと冷え込む松本の1月。
松本はぐるりと山に囲まれた、小さな町。
町のどの道からも、くっきりとした山並みが見える。
町のサイズが心地がよくて、魅力的なお店がまた行きたいな、と思わせる位の件数あるのもいい。
散歩が似合う町だ。
 
 
この日は「NO BORDER, GOOD SENSE」の打ち合わせと、取材のために木工デザイナーである三谷さんの工房と、2011年にオープンした三谷さん主催のギャラリー「10センチ」を訪問した。
 
10センチはこれはまた小さなお店で、店主である三谷さんをはじめとしてもの作りをしている仲間達との企画展を年に何度か開催している。
企画展の内容も「10センチにまつわるもの」「ピクニック」など、遊び心をくすぐるものばかり。
 
 
 
 
三谷さんには、向き合う相手の緊張をほぐしてくれるような柔らかさがある。
気負わない、とても自然な空気感が伝わってくる。
静かなのだけれど、まるで遊びの延長のような感覚で楽しそうに仕事をしているように見える。
 
 
 
 

 
10センチ 4月12日(木)~18日(水)
「ノコリ ノ アツマリ」 ミナ ペルホネン  
 
ギャルリ百草  4月21日(土)~5月6日(日)
作りの回生Ⅱ ミナペルホネン +百草 安藤雅信+ミナペルホネン+安藤明子コラボレーション企画展
 
Shoka: 5月11日(金)~20日(日)
「NO BORDER, GOOD SENSE」
陶作家 安藤雅信 + ミナペルホネン チーフデザイナー皆川明 + 木工デザイナー 三谷龍二 企画展
 
 
 
関連する作家たちの企画展が、それぞれが主催するギャラリーでこの春に開催される。
その3箇所でスタンプラリーをするのはどうだろうかという案が、その前日に皆川さんから出たことを伝えると、こんな感じが良いね、とさらさらと絵を描き始めた。
 
 
 
 

 
 
線を描きながら、その線がなぞらえている向こうにあるもの、
どのようなものになるのか、その内容や、空気感や、関わる人達と出来ること、そんな景色を紙の上で探っているようにみえる。
 
 
「感じていることを形にする」
思考や、湧き上がってくる情報たち、線を描きながらそれらが静まって、直感で一つになる瞬間を待っている静かな儀式。
三谷さんの日常風景の片鱗。
 
 
 
 
そうやって感覚をスケッチしながら、ふと顔を上げると「ジャバラになっていると良いね。ほらこれは先日届いた百草からのKIMAWASHIのDMなんだけど、こんな感じで」と。
私にも三谷さんの頭の中が平面から立体になって見えてきた。
 
 
そのことをメールで皆川さんや安藤さんに伝えると、「いいですね、それでいきましょう」と。
とんとんとん、と進んでゆく。
 
 
なんて受け取り上手な人達なんだろう。
なんて作るということに素直なんだろう。
信頼していて、迷いがないのだ。
 
 
 
だからこそ、普段使いのシンプルで美しい道具が生まれてくるのだろうな、と腑に落ちてゆく
 
 
 
 

 
三谷さんが淹れてくれたお茶が入っていたのは、漆で仕上げた木のカップ。
木のぬくもりがすっぽりと手に収まる。
その軽さと、熱くならない木の肌合いのやさしさが嬉しくなる。
 
 
 

 
その日は10センチはお休みの日。
三谷さんお気に入りの自転車(健在)の看板は出番待ち。
 
 

 
 
元は古いタバコ屋さんだった物件を改装した10センチ。
私たちはそこをあとにして、山の方へ20分ほど移動して三谷さんの工房へ。
 
 
 
 
 
 
山の麓の小さなりんご畑のとなりにある、同じく小さな工房へ到着。
 
 
 

 
 
 
空気は澄んでいて清々しい。
植物も気温も、人の生活を取り巻く環境は沖縄とは全く違うけれど懐かしいような気持ちになる。
 
 
工房へ入ると、そこはとても三谷さんとしっくりと来る空間だった。
暖かくて、手に自然に馴染むラインと質感が感じられる。
尖ったところがまるでない。
 
 
 
そう、三谷さんの器のように。
 
 
 
 
 

 
 
 
仕事場は持ち主そのものが表れる場だ。
その人が自分の求めているものを形にする空間。
その人の動線が見えてくるような道具の置き方と、それらが納まった様子。
そこに座って、仕事をしている様子が容易に浮かんでくるような空間。
 
仕事をする場所と、ゆっくりと思索する場所が自然な形で溶け合っているのがとても三谷さんらしいと感じる。
 
 
ここは愉しむ為の空間なのだろう。
 
 
 
 
 

 
 

 
 
 
 
 
誰かとお茶を飲んだり、語り合ったり、ご飯を食べたり、思索し、感覚を使っていいと思うものを作る、誰かが使うことに思いを馳せてみる。
 
 
 
そんな、人が楽しく時間を過ごすことが出来る要素がぎゅっと詰まった空間。
 
 
 
 
 

 
棚には、三谷さんが作った小さな10センチが。
 
小さいのに、中で色んなことが起こっているような気にさせる。
 
 
 
 
 

 
 
三谷さん作の器たちは工房で使っているもの。
オイルフィニッシュの木の器や、白漆をかけた大皿、お歯黒染めの黒漆の皿など。
この皿たちを使って、たくさんの人が様々な料理をいただきながら楽しい時間を過ごした様子が浮かんでくる。
 
 
そしてこの器たちは沖縄までやってくることになっている。
 
 
愉しみが人を繋げてゆく。
東京・松本・岐阜・沖縄と、距離に関係なく人は愉しみを共有することが出来る。
 
3人の大人達が自分の境界線を越えて、自由にもの作りをする今回の企画展は、3人だけでは終わらない。
参加する私たちも、その愉しみを共有し、日常の中でさらに広げてゆくことが出来る。
 
 
日常を楽しく過ごしている人から生まれる、感覚には境界がない。
 
 
 
 
 
 
 
今回は、三谷さんの仕事場があまりにやさしくて、静かに楽しさが広がってくるようなたたずまいが感じられて、写真を削ることがなかなかできなかった。
 
この感じはなんなんだろう?
軽やかな小春日和の散歩道。
小川のほとりのピクニック。
 
まるで三谷さんはピクニックを楽しんでいるかの様に暮らしているんじゃないだろうか。
 
 
 
 
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「NO BORDER , GOOD SENSE」
2012/05/11(fir)~20(sun)
12:30~19:00
 
木工デザイナー 三谷龍二 + 陶作家 安藤雅信 + ミナペルホネン チーフデザイナー 皆川明
コラボレーション企画展
 
Shoka:
 
 
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Shoka:の次回の企画展
「2年ぶりですね mon Sakata展」
 
4月20日(金)~29日(日)
初日には坂田敏子さん在廊予定
12:30~19:00
 
素材を手でしっかりと味わって、「この素材ならどんな風な形が良いかなあ」と服作りがスタートする、mon Sakataの服。
逆さまにしたり、重ねたり、自由な着こなしが自分流に楽しめる。
2年前に買った田原のパンツは、クローゼットで休む暇がないくらい着ています。
洗ってくたくたになってからがまた気持ちがいい。
自由な発想、自由な着こなし。
2年ぶりのmon Sakataが楽しみです。
 
来週は関根がmon Sakataの記事をアップします。