「Gabbehの上のしあわせ」

 

写真・文 田原あゆみ

 

 

いつからだろう?
部屋にGabbehを敷いて暮らせるようになったのは。

 

昔から布や、Rugが好きでたくさん集めて持っているくせに、敷くのは寝室のみでそこに犬は入れていなかった。
リビングに敷くと、自分も犬も公にRugの上でごろごろできるのに、私の愛犬のぽぽもジャイちゃんも外で土を掘るのが大好きだったから、私のGabbehが汚された上に掘られてボロボロになってしまうのじゃないかしら?と、リビングから片付けて、寝室のベットの横に一枚だけを敷いていた。

 

もちろんそこに寝転がることもなく、ベットに移動するときにたまに一足ふんずけるくらい。ということは長いことクローゼットの奥にしまっていたのではないかしら

 

私、ケチすぎないかい?

 

 

 

 

現在私の住んでいる住環境は2階建。1階には広いフローリングのリビングとキッチン。2階にはなんと懐かしいカーペット敷きの寝室が2つとバストイレ。私が選んだ寝室は壁紙に青にピンクとミント色の花があしらわれているではないか。人生初の花柄の壁紙。それが意外と結構気に入っている。

 

古い物件なので、青いカーペットもいい具合に擦り切れているので強烈な色目はどこにもない。

 

最初のうちは中型犬でおばあちゃんのジャイちゃんがこのカーペットの上で歩き回ったり、ゴロンとしたりそのまま寝るのに抵抗があった。
賃貸なのにDIYをしてフローリングにしようかと悩んだりもした。

 

どこかで犬の匂いや汚れがついて臭くなったり、粗相したり汚されたりするんじゃないかと気になったからだ。毛がこびりつくのも嫌だった。

 

が、しかし。
実際にジャイ子をどこに入ってもOKにしてみたら、意外といけたのですよ。そんなに汚れないことがわかったのです。もちろんお掃除しているからというのはありますが、足やお尻を拭いてあげて清潔にしていたら、そんなに汚れないということがわかってきたのです。ウールは天然の獣脂で覆われているので、汚れが染み付きにくいのです。

 

ジャイ子はおばあちゃんなので、かじったり悪さをすることもそんなにありません。おトイレの粗相も今の所大丈夫。

 

これは敷物もOKなのではないだろうか?!
なんと今まで勿体無いことをしてきたのだろう。

 

 

 

ということで、寒い冬がやってきた11月末ごろに恐る恐るお気に入りのIsurael産のRugを敷いてみたのでありました。
猫もそうだけれど、犬も何にもない床の上に何かを敷くとそこの上に座ったり寝転んだりする。本能的に気持ちいいことを知っているのだ。
私のデスクの下に敷いたらそこは彼女の格好のお気に入りの場所と相成った。もちろん私も生活のほとんどをこのデスクの前で過ごしている。

 

そして気がつくと、今やこのRugの周りが私たち家族の憩いの場となっている。

 

 

 

 

このRugは2012年からお付き合いのある小野善平氏から購入したものだ。
彼は日本に初めてGabbehを紹介した人として知られている。
その辺のことは私が以前書いた記事に掲載されているのでぜひ読んでみてほしい。

 

2013年8月3日 「人から人へ 手から手へ Gabbehの魅力」
https://calend-okinawa.com/interior/shoka/ryokouki201308.html

 

2015年9月17日 「ジェントルマンとParis」
https://calend-okinawa.com/life/aessay/paris201509.html

 

小野氏がこの仕事をして36年。彼曰く、「Gabbehに出会ったお陰で、この絨毯が僕をいろんなところへ連れて行ってくれて、たくさんの人々と出会うことができました。そして、こうして生活ができるようになったのもGabbehのお陰です」

 

まさしくGabbehは彼にとって魔法のじゅうたんだったのだ。

 

 

 

小野さんの背後にかかっているGabbehの色のグラデーションの美しいこと。
草木染めの色はカラフルでもどこか牧歌的で優しい。まるでクレーの絵のようだ。

 

私は今までどちらかというとこうったカラフルなものをインテリアの中に取り入れたことがなかった。どうしても生成りや、無彩色系のものを選んでしまうのは、冒険できない気質もあるんじゃないかとこの頃思う。

 

海外のインテリアを見ていると、美しい青や緑色、グリーンや赤が生き生きとコーディネートされていて、見ていてなんだか豊かさを感じずにはいられない。世界には色が溢れているのだから。

 

いつか絶対に美しい色のRugを買って部屋の中央にドーンと敷こう。
きっとそのRugを目にする度に、充電できるようなそんなRug。
引っ越しをしたので、Rugを買うのはしばらく我慢。なので、どなたかきっとこの美しさに震えた人がきっと持って行ってくれるでしょう。

 

 

 

こちらは古いもので、ウールの糸にツイストをかけて織り込まれている。この織り方から綿糸にもツイストをかけて現在のふわふわタオルが生まれたと聞いている。
娘の机の下に敷かれたこの子は私が30代の頃に自分のために買った初めてのRug。遊牧民が家族のベッドとして織られたもので、装飾はない。GabbehというよりBerberやトルコのTuluなのではないだろうか。
とてもとても気に入っている。

 

そうそう、思い出した。ジャイ子がうちにやってきた頃、なかなかトイレを覚えてくれなくて、このRugの上にシーっとやってしまったのでありました。
それで私はリビングに敷くのをやめたのでした。

 

その後わかったことは、ウールのRugは洗えるのだということ。しかも外に敷いてホースからジャーっと水を放出してゴシゴシ洗える。この子も外の壁にかけて水でジャーっと洗いましたとも。その後2回くらい大きな洗濯機で洗っています。買ってから20年くらいは経っている。

 

そんなに汚れていない時には外に干して布団叩きでポンポンすればいいので、ひどく汚してしまった時やどうしても気になった時に洗えばいいのだ。
ちなみに、youtubeで「Rug washing」と入力したら皆さんしっかりと水で洗っているのがわかります。

 

私のお気に入りは、ブーツで踏みながら人間の力で洗うこのやり方。

 

Shoka:では2月9日(土)一杯まで小野善平氏が選んできたGabbehの展示をやっている。DMには2月3日となっているが1週間伸ばしてもらうことになったのです。

 

 

 

 

それを聞いて喜んでいるうちのスタッフS。
赤い色は太陽のエナジー。このGabbehを敷いた家は家族みんなが元気で活気のある暮らしが広がりそうだ。なんだか運気も上がりそうな幸先の良い色め。

 

 

 

 

光の具合で色も変化。
自然光の夕暮れ時にはこんな色になるのです。

 

 

 

Yも負けじとGabbehを撫でている。
この二つのGabbehはカシュクリ族の織ったもの。彼らの織るものは、最高級の仕上がりといわれていて、糸が柔らかく緻密で普通より多くのウールが使われているのが特徴だ。
今回のこのブルーのGabbehは藍染。砂漠の遊牧民にとって水はまさしく生命の源。神に近い存在だろうと思われる。その水色のグラデーションはぐっと引き込まれ心が穏やかに澄んで行くのを感じる。他に柄が織り込まれていないのもいい。
ただそこに、美しい藍色から青、水色とグラデーションを眺めながら食事をしたり、くつろいだり。子供がコロンと転がったり、昼寝をしたり。いつか誰かがこの上で暮らす景色を思うととても羨ましくなってきた。
なんて上品で知的な色なのでしょう。

 

 

そして今回、恋い焦がれているGabbehはこの子。1950年代のOld Gabbeh。

 

 

 

おおらかに織られているので、軽めでふかふかした肌触り。シックな色にポイントも色が入っていて、元気も出てきませんか?

 

Gabbehの墨黒や茶色は元々の羊の毛色なのですよ。カラフルな色は白い羊の毛を草木染めで染めています。なのでどんなにカラフルでも毛のふわっとした感触を損なっていませんし、目にも優しい色に仕上がるのです。

 

毎回好きな子ができると別れ難いのですが、今回もまた別れ難い子たちがいくつもやってきています。
あと数日は見ることができるので、皆さんこの機会にShoka:へどうぞ。最近は世の中にたくさんのGabbehが出てきていますが、小野氏が見つけてくるGabbehは上質でいいものばかり。

 

最後に、珍しい人気のあるライオンがらのGabbehをば。

 

 

 

横顔みたいな構図ですが、よく見るとライオンの鼻は真上から見た構図。二つの視点が同時に入ったこの構図はキュービズムの元祖と言われています。ピカソも遊牧民たちのおおらかで牧歌的で、縛られないGabbehの絵柄からヒントを得たのではないでしょうか。

 

 

2019年もいい仕事や、いいものたちを紹介してゆこうと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いします。

 

 

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次回の企画展

 

辻和美+Factory zoomer ガラス展

 

「うりずんの暮らしの中へ」
2019年3月2日(土)~17日(日)会期中火曜日定休

 

ガラス作家の辻和美さんのクラス金沢は日本海側。城下町で日本の色。お互いの春の話をしていたら、海の色は違うし、3月の野の花の色も全く違う。その時に沖縄のうりずんの季節のことを話したら、その言葉に感動して、ぜひタイトルに使いたいと。
天の滋養が雨となって「降り」、地をその滋養で「染む」。そして地上は芽吹き花開く。
「降り」「染む」で『うりずん』。
今回2度目の沖縄での企画展では、うりずんの季節のお野菜や暮らしに寄り添う器たちをメインにFactry zoomerの定番品たちもやってきます。
今や生活工芸の第一人者の一人となって海外でも活躍されている辻和美さん。トークイベントやランチ会も開催予定です。Shoka:HPにてお知らせいたしますのでご覧ください。

 

 

 

 

 

 

暮らしを楽しむものとこと
Shoka: 田原あゆみ
暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http://shoka-wind.com/
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~18:00