祭りの後

写真・文 田原あゆみ

 

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お盆休みを利用して娘と二泊三日の2人旅。
今年は新盆と旧盆が重なった不思議な時を台北で過ごした。

 

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煉瓦造りの古い町並みはどんどん壊されて、あっという間に建ってしまう近代的なビル群が裾野を広げる台北市内。

 

それでもまだまだ興味深いミックスカルチャーの建物があちらにもこちらにも。
西洋風だったり、日本統治時代の大正モダン風の建物もまだまだ健在。

 

迪化街を歩いていると、改装中のコンクリートの壁が崩れて中から古い古い煉瓦が剥き出しになっていた。

 

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中には木が生えた建物もあって、いいのか?と立ち止まって見てしまう。鉢植えではなくて直に建物の建材に木が根をおろしているのだ。

 

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古い建物にはそれぞれに味があって、じっと見ていると現代と過去の歴史が重なって見えて、膨大な時間が一瞬わたしの思考を止める。くらっとするような景色がいっぱい。
なんだか、知っているような懐かしい景色。人情、任侠、情熱、衝動、殺気、呑気、色香、情動、競争に闘争、そして愛嬌。なんだか昭和を思い出してしまう台北の市場町。

 

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沖縄のお盆と同じく、台湾も旧盆の最終日だった今日は、東門市場は大賑い。人とお供え物、食べ物でごった返していた。

 

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朝の8時から市場を歩き出し、今ホテルのベッドの上に寝転んで記事を書きながら思い出す、今日という日はなんとも様々な匂いと色が流れ込んできた1日だった。

 

生肉の匂い、フルーツの香り、スイカの緑に艶かしいほどにぷっくらむちむちの桃の色。排水のむんとした匂いと、先祖供養の香の香り。夜、街中に下がったぼんぼりの赤。

 

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今晩は沖縄の家族が集まって、15日に迎えたご先祖様の魂をお送りしている夜だから、私たちも台湾でお送りしたいね、と話していたら、娘が見つけた基隆の中元祭情報。
ご先祖様をお送りするために、海に灯りを流したり、様々な灯りで飾り付けた大車のパレードが町中に繰り出す、台湾第二の大きなお祭りが催されるらしいと。

 

調べてみたら、台北からバスや電車で1時間強。車だと片道30分くらいのところに基隆はあるらしい。タクシーはuberを使って見積もりしたら往復日本円で5千円くらいとのこと。

 

夜だし、人のごった返した知らない町で帰れなくなって途方にくれることもあり得る、過去にうっかり事故の多い私たちは協議の末、二人で5千円で安心していけるなら安いんじゃない?と、勇気を出して夜の冒険旅行を決行。

 

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大好きな豆花を食べて精をつけてタクシーに乗り込んだ。運転手さんにどうにかこうにか用件を伝えて出発。

 

夜の台北は色とりどりの光が時に洪水のように押し寄せては流れ、都心を過ぎると海に浮かぶクラゲのようにぽつぽつと、赤や、黄色や青い色が闇に浮かんでは消え、高速で飛ばして飛ばして30分ほどで基隆に着いた。

 

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途中からなんだか静かな町並みに嫌な予感はあったのだけれど、どこにも華麗な光の洪水と言われるパレードは無く、夜の基隆の街はひっそりと暗かった。

 

 

よくよく調べてみると、パレードは昨日までだったんだそうな。

 

アイヤ、がっかり。

 

しばし呆然、その後
私たちは顔を見合って、あははと笑い、「また1つネタが出来たね。思い出が増えたね」と。

 

街の外れのお寺さんに昨日の名残のぼんぼりが下がっていたのでそこにお参り。

 

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満月が私たちを優しく見守ってくれているような気がする。ものの哀れを感じながらお寺の階段を上って、私たちもご先祖様に手を合わせ、赤いろうそくに火を灯す。

 

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私が笑いながら旅を楽しめるのも、こんな風にどこか抜けてしまっているのも、ご先祖様からの頂きもの。
遺伝という一言は、時に責任をご先祖様の脈々と続く膨大なバトンタッチの歴史に委ね、私の罪悪感を軽くしてくれる。

 

 

旧盆の二日間を、まるで子供時代を思い出すような台北の街で過ごせたことに不思議な共時性を覚えながら手を合わす。

 

父と母方のご先祖様に感謝。
それから、私も、娘も、私たちの家族も、そして未来のまだ見ぬ家族たちも、みんながみんな生きる喜びを感じる人生を送りますように。

 

 

今日は家族の日。

 

こんな行事の日に海外にいるのは、私が今年のではない旧暦カレンダーを見てエアチケットを取ったから。

 

来年はしっかりと行事の手伝いをして、沖縄から手を合わせます。祈りはそう締めくくって、帰りのタクシーへ。

 

 

運転手さんは、パレードが無かったことで私たちを気の毒そうに見つめ、ふわっと優しい笑顔でお茶をおごってくれた。
こんなとき言葉が繋がらなくたって言わんとすることは伝わってくるもんだ。

 

 

台湾の人は優しい。

 

 

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こうして今日も生きていることに感謝。

 

お休みの日の旅日記でございました。

 

 

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