さよなら2016年 「最後に小噺」

写真・文 田原あゆみ

 

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内緒にしたい話。
公にするので、これは今年最後の小噺。

 

今年の半ば、都内はたいそう暑くて刺すような日差しを避けることもできず私はただひたすら目的地へと足を運んだ。アスファルトから照り返す鈍い光と、角を曲がるたびにムンとした室外機の熱風に包まれる。それでも、非日常へと続く道は楽しかった。

 

私はたまにとっちらかった自分の頭の中や、様々な方向を向いている欲望を整理すべく「不思議な人」の元へ足を運ぶ。
だいたい友人からの紹介で、ある人とは一年に一度を6年ほど。またある時にはショートな関係を結んだり。
私の日常からかけ離れた世界に住んでいる占い師という職業の人の元へ行くのはたいそうワクワクするものだ。

 

そう、今年の半ばはとても久しぶりに、友人から紹介された人の元へ向かっていたのだった。

 

 

「田原さん、あなたはこれからどんどんいろんなものがわかるようになってきます。見えるというか・・・
感覚が研ぎ澄まされてきて、そうですね、11月後半からは特に新たなステージが始まりそうです」

 

『ええ!?何が見えてくるんですか??
私とっても怖がりなんですけど、変なものが見えるとか、そういうのだったらいやです~~~~~』

 

「いや、田原さんは変なものは見ないですよ。こういろんなことがはっきりとしてくるんです。それが新しい展開につながってくるのです。これからずっと気になっていたことや、昔かじったことを本格的に勉強しなおすという時期に入ってきます。一年ほどそんなことをするうちに次のステップが見えてくるはずです」

 

『怖くないんですね??
一体どういうことだか今は全くわかりませんが、怖くないんですね?』
私は念を押さずにはいられなかった。

 

 

 

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今思い出しただけでも、体が静かに震えるような気がするのは、私がとても怖がりだから。そして、知らないことの中にはある魔力が宿っているように感じられるから。

 

それと、昔友人から聞いたことのある「カミダーリー」の話が印象に残っているからかもしれない。急に舌がだらりと伸びて口に納まらなくなり、目は宙を見つめ焦点定まらずという状態の女性が、友人宅のカミンチュのおじいさんに助けを以てめてやってきた、という話。

 

インパクトがありすぎて、思い出しても血圧が下がる。見えないことが見えるようになる、と言われるとそんなことが浮かんできてしまうのだ。私も「カミダーリー」になってしまうのではないだろうか?と。

 

 

話を戻そう。
今あの夏の日に占い師の元へ急いでいた自分のことを振り返ると、当時整理したかったことなど今はつゆほども覚えていない。
きっと時間とともに勝手にふるいにかけられて、整理され、起こることは起こり、心配していたことはいつの間にか霧散したに違いない。

 

 

私は信心深い方ではないけれど、たまにこんな風に非日常的な観点から私の人生を誰かが覗いて、勝手に読み解いてくれることをとても面白くありがたく感じるのだ。ほら、全く別の見方があることで抱えている現実がすごく軽くなるような気がするから。
当たっているとか当たっていないとか案外どうでもいいのだ。

 

だからそこでなんと言われても、普段あまり覚えていないしだいたいいいとこ取り。うまい具合に彼らが話す言葉を自分流に翻訳して、頭を整理、気分転換して都合のいいことや大事なことだけが記憶に残し、後は記憶の川をさよならと流してしまう。

 

 

2016年の前半は、ロンドンやイギリスの田舎へ足を運んだり、南フランスへ足を伸ばしたりと仕事の合間に旅日記。さて、その占い師のところへ行った後の後半はというと。

 

 

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*今年の後半に出会ったワンコさん。後半に子犬が来るかもと期待していたけれど、それはまた来年へ。*

 

 

 

「それまで見えなかったことが見えるようになる」

 

まさかユタのようになるのではないかしら?サイキックのような感じなのかしら?と、ぶるぶる震えながらも少し楽しみでいたけれど、全くそんな能力が開くことなく年の瀬。

 

な~~んだ、という気持ちもあり、それでもホッとしています。

 

今年の後半は、仕事漬けでたのしくもいそがしい毎日が続いたためか、9月後半くらいから身体がいうことをきかない数ヶ月。重くだるい感じが続き、風邪をこじらせたり、傷んでしまった歯を抜いたり、憩室炎を起こしてしまって大事な企画展の初日に病院へ行ったりと、なんだかこれどうなっているの?と。

 

結局今まで元気で、あまり身体を壊したことのない私が「人生身体が資本」ということに甚く気づいたのでした。好きなところへ行き、好きなものを食べ、大好きなワインや日本酒をしたたかに飲んで無邪気に遊んでいた時代は過ぎ、精算の時代へ突入していたのでした。

 

 

初めて血液検査というものをして、驚愕。
悪いんじゃないの?これ・・・・何でも、お酒のみの人に現れる悪い兆候が数字に出ていたのだ。

 

私がそれまで全く顧みることもなかった私の健康状態を血液検査の結果から読み解いてくれた方が申すには、
「田原さんの身体の中に貯蔵しているタンパク質(アルブミン)は入院中のおじいさん並みですよ」

 

結構堪える一言。

 

おじいさんと、な・・・・・。性別も超えてしまっていて、身体もショックでガクガクしてきたのでした。

 

筋肉質だと思っていた私の身体は、いつの間にか筋肉が言葉にしたくない物質に打って変わり、ぼよぼよと広がって・・・かさを増し、筋肉が保持しているはずのアルブミンはかつかつに減少していたらしい。私たちは、タンパク質とカルシウムと水で出来ていて、そこに生命が宿っているのだそうだ。その材料が不足して、かつかつの状態の私は、早急に手を打たないといけない状況だと警鐘を鳴らされたのだ。

 

私の生命は、宿っている器がポンコツになってきたので、SOSを出したのだろう。私はガクガクとその結果を重く受け取り、身体への投資が始まったのがこの10月。

 

『それまで見えていなかったことが見えるようになる」
確かに私たちは、手を動かすという意識もないままに便利に手が動いたり、食べたものが知らないうちに消化されエネルギーとなって知覚嗅覚、温度調整、内臓が働き、思考し、動く。これはみんな私たちの見えないところで様々なことが動いているという結果なのだ。

 

このことだったのか・・・・。

 

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数ヶ月はだましだましサプリメントで栄養を補っていたのだが、運動をして筋肉をつけないといけないことはどこかで納得していた私。
この12月から仕事の合間をぬって、パーソナルトレーナーのいるジムに通い、トレーナーが推奨する体内の炎症を取る食事療法に挑んでいる。
2週間が経った。

 

今まで顧みなかった私の身体はどんどん変化してきた。

 

それまで取れなかった筋肉の張りやコリ。良質なタンパク質をちゃんと摂るようになってから(断酒も効いてる)コリが取れ、ふわふわの柔らかな筋肉になってきた。炎症を起こした頃から続いていたお腹の充満感も、醜いセルライトも消えてきた。

 

身体を顧みるようになってから、体重も4キロ減。
見えなかったことに取り組んだら、見えるところが変わってきたのだ。きっと見えないところで何兆もの腸内細菌たちも活躍しているに違いない。

 

「見えないもの」というはどうやら、見ようとしなかったこと、見ないふりをしていたことだったらしい。

 

 

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*知ってたにゃ~ん*

 

 

今まで気にも留めなかった身体のことに取り組んでから、なんだか楽しくて私の気持ちはふつふつと燃えている。きっと脂肪も燃えてゆくのだろう。そう願う。

 

私たちは、身体があってそこに精神が宿っているのだ。
精神があって、宿る身体を探していた時期もあったかもしれないが、それはもう私の身体に決めて宿っているのだからこの身体こそが依代。健全な精神が淀れるように大切にしなくてはいけないのだった。変えは聞かないんだもの・・・。

 

 

そんな大切なことに気がつくことができた2016年。倒れたり、苦手な事務関係の指導が入ってストレスマックスになったり、お別れやいろいろあった。けれど、最終的にそこから何か得るものも必ずあった。
だからつくづくいい年だった、と感じている。

 

自分に合った健康へと続く道を見つけ、大切な出会いあり笑いあり。

 

そして、最後に大きなプレゼントがやってきた!

 

憧れて、ずっと乗りたかった旧式の形の白いジープ。それが私の元へやってきたのだ。
レンジローバーのディフェンダー、白。
友人の遺品で、錆びてボロボロになっていたのを、やはり友人が1年余りかけて修理してくれた。イギリスから部品を取り寄せ、錆びて落ちたステップは知り合いに作ってもらったらしく、なんとも破格な値段で綺麗にしてくれたのだ。

 

現実世界こそ夢に満ち溢れ、たくさんの人の気持ちがつながっているところにこそ奇跡は起こるんだなあ、と思う年の瀬となった。覚めないから現実っていいものです。
2017年も現実こそが良くなるように、地に足をしっかりつけて、見えない心と体の細部を意識して身近な友人仲間たちと手をつないで生きて行こう。

 

12月26日クリスマス明けの朝日を眺めながらここに誓う。

 

 

皆様、今年もお世話になりました。
来年もどうぞ宜しくお願いします。
素敵な年の瀬と、新年をお迎えください。

 

 

Shoka: 田原あゆみ

 

 

 

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次回の企画展

 

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濱野太郎の布展

 

2017年最初の企画展は言葉にし難い色合いを織りなす男性の織物作家「濱野太郎の布展」。

 

濱野太郎氏はイラストレータ、画家を経て織物の作家となった。

 

縦糸と横糸が機織りで出会って布はできてゆくのだけれど、彼の織り方は創造性に満ちていて、意図を超えたインスピレーションの連続の中で、色が出会ってゆくような、そんな織り方をしているのです。ウールと色と糸が出会って一枚の絵が織りあがってゆくような彼独特の布たち。

 

この世界にたった一枚の布を手にする喜びを、私たちも彼と一緒に味わえたらと思います。

 

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暮らしを楽しむものとこと
Shoka:

 

http://shoka-wind.com/
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 11:00~18:00