『おおきな なみ ブルックリン物語』みんなが言う幸せが本当の幸せなの?少女ハティが最後に見つけた答えとは

 
バーバラ・クーニー/さく かけがわやすこ・やく  ほるぷ出版 1470円/OMAR BOOKS 

 
― 海辺で想う、女の子の幸せとは? ―

  
今回も引き続き絵本をご紹介。
夏にふさわしい絵本ということで、バーバラ・クーニー作『おおきな なみ ブルックリン物語』原題はHattie and the Wild Waves。

 
表紙はエメラルドグリーンがかった海に向かう一人の少女の後ろ姿と一匹の黒い犬。
この女の子がひと昔前のニューヨーク・ブルックリンに家族と暮らす主人公のハティー。
彼女の目を通して、周囲の大人や成長していくニューヨークの街や当時の暮しぶりなどが描かれている。

 
この絵本、特に女性に読んでもらいたい!なぜならこの本のテーマの1つが「女の子の幸せとは?」だから。

 
ハティーには事業で成功した父親と専業主婦で芸術肌の母親と、母親のように幸せな結婚を夢見る姉のフィフィ、父親の後を継ぎたい兄のヴォリーがいる。絵を描く事が好きな彼女は自分を取り巻く周りの人々をよく見ていて、「自分はどんな大人になりたいんだろう?」と自問自答している様子が言葉はなくても伝わってくる。

 
彼女が魅力的なのは「みんなが言っているようなことは本当に幸せなのかな」と周りの言うことを真に受けないところ。
夏のバカンスで家族と訪れた海辺でも、一人砂浜を歩きながら海に向かって問いかける。 

 
姉フィフィのようにお裁縫をしたり着飾ったりして、素敵な結婚が唯一の幸せ、と世間一般から見た幸せの図を否定はせずとも、ほんとにそうなのかな、と。
彼女はいろんな大人の生き方を見ながら成長していく。

 
著者バーバラ・クーニー(ブルックリン生まれ。現代アメリカでよく知られる絵本作家。他作品に「ルピナスさん」などがある)自身がモデルとも言えるハティー。
彼女が最後のページで出す答えにハッとさせられます。

 
原題にあるWild Wavesって言うのはたぶん「人生」とか「時代の波」という意味で、その中で流されず自分の結論を出すハティーに共感する女性も多いはず。ついつい拍手したくなる、胸のすくようなラスト。

 
またこの絵本の魅力は、当時のニューヨークのなんとも優雅なお屋敷の室内の様子や、戸外の自然が丁寧に描かれ、全編淡い色合いが美しい。とりわけ海辺の景色が。

 
「いつまでも、いつまでも夏が終わらないといいな」とつぶやくハティ―。
潮の香り漂う、海の近くに行きたくなる一冊。



OMAR BOOKS 川端明美



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