KRAMP COFFEE STORE(クランプコーヒーストアー)GOOD COFFEE & GOOD CAKE 毎日飲みたい「疲れない」コーヒー。

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「最近は、酸味の強いコーヒーが人気なんです。でも僕はどうしても飲み疲れてしまって。最後まで飲みきれないことが多いんですよね。なので、疲れずに飲み干せる味を目指しました。すっきりしているけど、豆の味はしっかり残っているというバランスで淹れてます。すっきりしている分、量は多めにしてるんですよ」

 

そう言いながら、KRAMP COFFEE STOREの久高哲哉さんは、慣れた手つきでコーヒーをドリップしてくれた。

 

味はたしかに苦すぎないが決して物足りないわけでなく、コーヒー豆本来のコクを感じる。その上で、口あたりはすっきりしているというバランス。なるほど、この味ならこの量をなんなく飲み干せる。「疲れない」とはこのことか。

 

哲哉さんの理想とするコーヒーは、確かに美味しく飲みやすい。だが、自分のこだわりをお客に押し付けたりはしない。

 

「もちろん常連のお客様で、好みを把握している場合は、その味でお淹れしますよ。僕のこだわりよりもお客様の好みが一番ですから」

 

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エスプレッソの淹れ方には特にこだわりがあるという。酸味を出さないよう、深煎り豆をブレンドする。毎朝一番にその日の温度や湿度を考慮して、豆の挽き目や湯温を調節する。さらに、一般的なエスプレッソ一杯の量に対し、豆を多く使う。などなど。

 

「酸味を出さないようにするのは、やっぱり僕が酸味ない方が好きだから(笑)。豆を多く使う理由は、最初の方で抽出されるスペシャルに美味しい部分だけを味わってほしいからなんです。後半には、あまり味の良くない成分も出てきちゃう。それを混ぜたくなくて。味が落ちる直前を見極めて、パッとカップを引くんです」

 

豆はふつうより多く使うのに、抽出量は少なめ。お店としてこれを続けるのは、きっと容易なことではない。

 

「どれだけ豆を使っても、値段はもちろん同じです……。一律380円(笑)。量はシングルとダブルの中間の、20〜30mlくらいです。僕の淹れ方だと一杯の量にばらつきが出るんですけど、やっぱり美味しいところだけを飲んでほしいから。量ではなく、あくまでも味にこだわっているのでそうしています」

 

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哲哉さんのこだわりは、コーヒーだけに収まらない。カフェラテ用のミルクも然り。エスプレッソで淹れるカフェラテは、ミルクたっぷりにもかかわらず、一番に感じるのはほろ苦くすっきりとした豆の味。もちろんエスプレッソは、それだけで飲むのと同じく「美味しい部分」だけを使っている。そしてその次に、主張しすぎないミルクの自然な甘みを感じる。

 

「カフェラテ用のミルクもすごく探しました。あれこれ買い集めて、スチームさせて、全部を味見。牛乳として飲むと乳臭さが美味しさになるものでも、スチームしてコーヒーと合わせた時にはその個性が立ちすぎてしまうことがあるんです。コーヒーの味をじゃませず引き立ててくれるものという観点で選んでいます」

 

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主役はあくまでもコーヒー。これがKRAMP COFFEE STOREのコンセプト。だから他の全ては、自然とコーヒーに合わせることになる。

 

コーヒー以外のメニューを引き受ける奥さまの由衣(ゆき)さんは、コーヒーと同じく「疲れない」ケーキを目指した。

 

「チーズケーキを重すぎず口の中で軽くほどけていく感じにしたのは、やっぱりすっきりしたコーヒーと合うことを一番に考えてのことです。チーズの味はしっかり感じたいので、3種のチーズをブレンドし、ベイクドにすることでコクを出しています。食べ終わってももっと食べたいって思ってくれるケーキにしたくて、『濃いのだけど、濃くない』というのが理想です」

 

チーズケーキだけでなく、上にこんもり載った生クリームもこれまた「疲れない」。

 

「泡立て具合を工夫しているので、見た目ほど重くないのも一因だと思います。重く感じるようになるすんでの絶妙なタイミングで止めています」

 

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その、由衣さん自慢の生クリームをたっぷり使ったショートケーキは、意外な人気を呼んでいる。

 

「生クリームが苦手な人も、うちのショートケーキなら食べられると言ってくれるんです。ショートケーキが苦手という方が、ホールケーキを注文して下さったこともあるんですよ。食べられなかった人に、美味しいと言ってもらえるのが一番嬉しいです」

 

フォークを刺すと、中からオレンジの果肉がごろっと出てきた。ショートケーキはイチゴのみと知らず知らずのうちに思い込んでいたけれど、嬉しい発見をして思わず頬が緩んでしまう。常時4種のフルーツが挟まっていて、今の季節はイチゴ、オレンジ、キウイ、ブルーベリーが。

 

「フォークでどこを刺しても、その一口の中にフルーツが入るようにしています。スポンジ生地もふわふわにしてありますが、フルーツが一緒になればさらに軽さを感じられるので。これは軽さとはあまり関係ないかもしれませんが、切り分けた一人分に、必ず4種のフルーツが入るように並べているんですよ」

 

 

哲哉さんは、自分の店を持つため、22歳の時に名古屋へ修業に出た。とはいっても、明確なイメージはまだ持っていなかったという。カフェで働き始めたことで、飲食店にしようと決めたものの、コーヒー店にするかフードにも力を入れたカフェにするかは、これまた決めかねていた。

 

コーヒー店にしようと決意したのは、今からさかのぼること3年、ある店との出会いだった。

 

「東京の下北沢に、伝説と言っていいお店があるんです。その店で飲んだエスプレッソの衝撃が、僕の進む道を決めてくれたんです。そのお店のエスプレッソはカップの底に舐めるくらいの量しか入っていなくて……。多分5mlくらい……。一口分にも満たない量なのに、飲んだ途端バンッ!ときて。スパイシーな、ダークチョコのような、パンチの効いた味がしてとても驚いてしまったんです。後味も印象深いものでした。口の中がすごく爽やかでさらっとして重さが残らなくて。その店でエスプレッソを飲んでから、もうコーヒーのことしか考えられなくなってしまったんです」

 

 

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「そのお店、14時以降はエスプレッソを出さないんですよ。理由は、14時に電気の供給量の関係で電圧が下げられちゃうからなんだそうです。そのお店はエスプレッソマシーンの圧力を独自にカスタマイズして、すごい圧力をかけて抽出するんですけど、小さな電圧の差で味が変わってしまうということなんですよね。そのオーナーさんと話をしたかったんですけど、行く前からすごい頑固親父だとか、同業者が行ってカウンターの中を覗こうものなら『帰れ』と怒鳴られるとか、写真も撮ったらダメだとか色々聞いてたんで、僕、ビビって声掛けられなかったんです」

 

その店のこだわり、そのオーナーのことや、そのオーナーが書いた本のことなど、とめどなく饒舌に語る哲哉さんの様子から、この店が彼へ与えた影響の大きさがうかがえる。

 

最後には、表情をキリリと引き締めてこう言った。

 

「そのお店が、僕の目指すお手本なんです」

 

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それから哲哉さんの、コーヒーの研究が始まった。有名なバリスタが開くセミナーへ行き、定期的にトレーニングを受けた後は独学で学んだ。同時に、名古屋で出会い当時恋人だった由衣さんと共に、東京のコーヒー店巡りも。

 

「東京は広いから一日に3、4店しか回れないんですけど、気になるお店を全部回りました」と哲哉さんが言えば、「毎回コーヒーを飲んでいたら、夜眠れなくなってしまって」と由衣さんが笑う。

 

美容師だった由衣(ゆき)さんも、それまで特に製菓の勉強をしたことはなかったという。

 

「主人にお店で出すケーキを作ってほしいと言われて、そこから頑張りました。主人が働いていたカフェのパティシエさんに、頼み込んで教えてもらいました。それまでは料理はよく作っていたのですが、ケーキは、家に大きなオーブンがなかったこともあってあまり作ったことがなかったんです」

 

 

その努力の甲斐あって、腕前はケーキがホールで注文が入るまでに。ケーキ以外にもすっかり人気メニューとなったものがある。レシピ作りに苦戦したというレモンスカッシュだ。

 

「レモンスライスの幅や、材料を漬け込む順番で、全く味が変わってしまうんです。失敗作はものすごく苦かった〜。レモンの皮の苦みが前面に出てしまったんです。あと砂糖が全く溶けなかったり。ああでもないこうでもないと試作を重ね、3か月かかってようやく納得できるものに辿り着きました」

 

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カフェの運営について、長年どこかのお店で修業を重ねたというわけではない。それ故か、妥協なく美味しさを追求するという姿勢を強く感じる。

 

「2人がおいしいって思ったものだけをお出ししようと、試行錯誤しながらレシピを決めていきました。私たち、お店の営業が終わって家に帰ってからも、どうしたらよりおいしいものができるか、ずっと調べ物ばかりしています。そしてまた試作が始まるんです(笑)」

 

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味づくりに熱心な2人のお店は、オープンからまだ3ヶ月ながら、すっかり街に溶け込み、近隣の人たちの日常の一部となっている。

 

午前10時、遅い出勤前の一杯をゴクゴクっと飲み干し、颯爽と出て行く自営業の男性。慌ただしいはずの朝をあえてゆっくり、ブレイクファストでリッチに過ごすOLさん。コーヒー好きの老年客も多く訪れる。中には3日連続でやってきた人もいるそうだ。

 

「ある日、ダンディなおじ様が一人でふらっとコーヒーを飲みに来て、次の日には、前日に隣の人が食べていたランチが気になったようで、同じものを頼まれたんです。そしてその次の日には、奥様を誘ってまたいらしてくださった。そして僕達の動きをじーっと見ていて、『君たちのやっていることには、どれも心がこもっている。とても素晴らしいことだね』としみじみ褒めてくださったんです。涙が出るほど嬉しかったです」

 

 

KRAMP COFFEE STOREの魅力は美味しさだけじゃない。新しいライフスタイルの提案があるのだ。

 

「修業をしていた名古屋ではモーニングの文化が発達していて、喫茶店がこぞって朝食メニューを競っているんです。その朝の活気ある雰囲気がとても好きで。沖縄の夜型生活の人にも、朝型生活の清々しさを体感してほしいなと思って。それで朝7時からオープンすることにしたんです」

 

確かに沖縄のお店はオープンが遅く、1日のスタートに出かけたくなるお店はなかなか探せない。そんな朝のお店らしい、2人の好きな挨拶があるという。

 

「店をやってて何が楽しいかってね。お客様たちを送りだすときに、『いってらっしゃい』と声を掛けられることなんです。これがとても僕達には心地よくて。お客様方にも喜んでもらえてるといいのですが(笑)」

 

このお店が近所なら朝寝も減るに違いない。とっておきのコーヒーとケーキ、それに2人の「いってらっしゃい」のエールを思い描けば、布団から元気に飛び出せるから。

 

文 田中えり

 

 

KRAMP
KRAMP COFFEE STORE
沖縄市泡瀬5-32-2
098-938-0833
open 7:00~18:00
close 金曜
FB www.facebook.com/krampcoffeestore