shiraho家cafe(しらほいえカフェ) 自然とともにある、昔ながらの白保の生活を伝えたい。石垣ハーブを堪能できる、おうちカフェ

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「ここでの暮らしは、昔にタイムスリップしたみたい。自然とともに生きてきたいい時代の生活が残っていたんですよね」

赤瓦の家にフクギ並木、琉球石灰岩の塀が並ぶ石垣島は白保地区。その懐かしい風景に魅せられたのは、自宅を開放してshiraho家cafeを営む柳田千晶さん。千晶さんが東京から移り住んできたのは、約16年前。住むうちに風景だけでなく、その昔ながらの生活に魅力を感じたと言う。

白保で昔から飲まれているのが、”みなが”のお茶。白保の土地の恵みをいただくお茶だ。

「”みなが”っていうのは白保の方言で”お庭”という意味なんです。お庭で摘んだハーブをブレンドしたお茶です。この辺のオバアは、自宅の庭にハーブを植えて、摘み集めて縁側で乾かして、お茶にするんです。この辺りには緑茶もさんぴん茶もあまりなくて、毎日飲むお茶といえば、こういうみなが茶。ヤカンいっぱいに沸かして、ホットのままだったり、冷たくしたり、ペットボトルに入れて凍らせたりして飲まれてますね」

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検査機関で調べたところ、みなが茶はポリフェノールが豊富で抗酸化作用を期待できるとか。

shiraho家cafeで出されているみなが茶は、月桃、グアバ、レモングラス、ニシヨモギに、琉球よもぎと言われているハママツ(本島のハママーチ)、よく民家の壁に這っているオオイタビカズラという野草のブレンド。全て、この白保地区で見かけるもの。千晶さんが、近所のオバアに話を聞いてブレンドを繰り返して作り上げた。

その味は、ハーブティと聞いて連想する西洋の小洒落たものでなく、どこか懐かしく、おばあちゃんちで出されるお茶のよう。縁側で緑を眺めながら一息入れたくなる、ほっと安心する味。

白保のオバア達にとっては、ただのいつものお茶。”ハーブティ”という概念自体、ないのかもしれない。けれど、毎日の飲みものを、身近なもので手間をかけて自分で作る。便利ではないのかもしれないけれど、豊かで贅沢なのは間違いない。

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カフェでいただける、みなが茶、月桃茶、グアバ茶、カンパラ茶などは、併設の売店で購入できる。

千晶さんが白保の自然の恵みをメニューにしたのは、みなが茶だけでない。昔から生活に根付いていたハイビスカスの花も活用したいと、シロップに変身させた。

「ハイビスカスの花は、シャンプーにしていたみたいですね。その花がいっぱいあるので、何かに使いたかったんです。新聞の記事で、コーディアルというものがあることを知って。イギリスの伝統飲料で、体を元気にする飲み物ってことなんですよね。必ず柑橘系の砂糖漬けを加えるらしくて、じゃあハイビスカスとシークワーサーを使えばいいじゃないって」

そのシロップは、かき氷に。真っ白な氷に、鮮やかな赤が映えて可愛らしい。甘さは控えめで、ハイビスカスの花のほのかな香りの中に、シークワーサーのさっぱりとした爽やかさが広がる。その他、炭酸やヨーグルトやお酒で割った、サイダーやラッシー、カクテルもいただける。

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自家製シロップ。石垣島の有機栽培島レモンを使ったトロピカルレモンレモンと、ハイビスカスハナミツ。 

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島のものでスイーツを作りたいと、石垣島は豊見山豆腐店のおからを使った、島豆腐のおからとレモンのケーキ

自然とともにある白保の生活を伝えたい。千晶さんが、shiraho家cafeをオープンさせた理由だ。

「オバアからこのお茶の話を聞いて、この習慣を受け継ぎたいなと思って。みなが茶を作って飲んでいるオバア、ここ10年で随分と亡くなってしまったんです。今の世代にはあまり受け継がれていない感じがありますね。毎週日曜に開催される白保日曜市も、昔ながらの生活を受け継ぐという意味合いで始まったんです。自分たちの庭や畑で採れたものをそれぞれが持ち寄って、ご近所におすそ分けをするという感じ。私も、主人の作る野菜とともに、みなが茶とかの販売をしていたんです。でも日曜だけでなく、平日でも昔ながらの生活を伝える場があってもいいんじゃないかなと。それで自宅を改装して、このカフェを始めました。ちょうど息子が本島の高校へ行ってしまって、家がガランとしちゃったし」

白保の集落に合う家をとだけリクエストして建てた自宅。以前は居間として使っていた横長の部屋を、カフェスペースにした。壁の下半分は開いていて、座るとちょうど外の緑を眺められ、上半分は壁になっているから、刺すような強い日差しは避けることができる。雰囲気と機能を兼ね揃えた空間。

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千晶さんが自宅を開放してまで昔ながらの生活を伝えたいのは、ただ白保の習慣を絶やさないためだけでない。白保の自然を守りたいという思いがある。

「地域の昔ながらの生活を継承していくことが、自然保護につながるんですよね。遠回りかもしれないですけど、昔ながらの生活をすることが、資源を枯渇させないんです。白保には半漁半農の暮らしがあって、ご飯のおかずを捕るために海へ行くんですね。アーサを採ったり、電灯潜りといって夜に潜って、モリで1匹づつ魚を捕ったり。自分達の食べる分だけを海からいただくんです。今は、何でも大量に捕りすぎてしまって、もう色々いなくなってしまってますよね」

カフェをオープンさせたのが、2016年8月。千晶さんは石垣に来るまで、東京で翻訳の仕事をしていた。どこででもできる仕事だからと、南の島への移住を決断。移住してからカフェオープンまでも、積極的に白保の自然を守る活動をやってきた。

「白保の海はサンゴ礁の海として有名で、世界最大級のアオサンゴの群落があるんです。アオサンゴって、見た目はグレーっぽいんですけど、中が青いんですよ。新石垣空港を作ろうとしている時、この白保の海に空港を作るという海上案があったんです。村は賛成派と反対派に二分されて、けれど海上案は、反対派のオバア達が座り込みをして一生懸命抵抗したこともあって免れたんですよね。30年近くも闘争して、この海を守ってきたんです。その頃、地域の環境保全につながる村づくりを提唱していたWWFが運営する”しらほサンゴ村”という施設ができて。私は2年ほどそこの準職員になって、そのサンゴ村で開催される白保日曜市の運営にも関わってきました。今は運営を次の人にバトンタッチしていますが、このカフェで販売している商品の売上の5%を寄付して、サンゴの保全活動に役立ててもらっています」

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珊瑚を守る活動だけでなく、この白保集落の景観を守ることも。

「このカフェの前の道が”神の道(カンヌミチ)”と言って、豊年祭で司が通っていた道なんですよ。この神の道だけでも、家の塀を昔ながらの琉球石灰岩の石積みにしましょうということをしたんです。今から7,8年くらい前なんですけど、この道沿いのコンクリートのブロック塀を撤去して、石灰岩の塀に作り直しました。石工の棟梁に指導してもらいながら、集落の有志で石を積んだんですよ」

昔ながらの街並みや自然が色濃く残り、訪れる者をこんなにも癒やすのは、千晶さん始め、地元の人の努力があってこそだ。

「この白保は、獅子舞とか棒術の伝統芸能や、民具なんかも残っていて、そういうのも素晴らしいんです。この白保という地区があってのカフェで、この白保がお客さんを呼んでくれるかなと思っています。お客さんには、集落のこの雰囲気を味わってもらいたいですね」

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売店では白保出身のテキスタイルデザイナー、MIMURIの作品も販売する。千晶さんのエプロンもMIMURIのテキスタイル。

千晶さんは、昔の沖縄の風情が残る白保の景観だけでなく、その豊かなハーブや海、そこに住まう人々やその暮らし、自然を守ってきた歴史など、全てに敬意を払い愛してやまない。

「私は白保のオバアになって、自然の恵みは素晴らしいってことをずっと伝えていきたいです。伝えることはいっぱいありますから」

写真・文/田中えり(編集部)

shiraho家cafe
shiraho家cafe(しらほいえカフェ)
石垣市白保42-3
070-4207-8080
open 10:00〜18:00 (日 12:00~18:00)
close 火
https://www.facebook.com/shirahoiecafe/