つきつめれば、塩

写真・文/D’spec沢岻 久子

 

ディ・スペック

 

ディ・スペック

 

いろんな場面で、素材を楽しむという提案を見かけるようになりました。

 

例えば料理であったり服などでは、身近に遭遇する事が出来ます。

 

料理の場合は、素材を切って加熱しただけというものから、そのままの形で出される場合もあるし、それこそ生のままで食べる事がかえって贅沢にとらえられたり、嬉しかったりもします。

 

服だと、無漂白の生成り生地だったり、動物の毛をかるくよっただけの毛糸もあるし、大きな生地を体に巻きつけるだけでも服として成りたつものです。

 

同じようなことが、道具や機械でもみられます。いわゆる家庭用と業務用という仕分けがいちばんわかりやすいもの。家庭用は誰が使っても安全なように、やさしい素材や柔らかなデザインに仕上げ、至る所に注意書きが表記されていて、過剰包装。一方、業務用は既に使い方を知っているであろう前提で、機能性を重視。丈夫な素材を採用し、最小の力で最大の力を発揮するよう設計され、無駄を省いたシンプルなデザインに仕上がっています。

 

どっちも理にかなっていて、どっちも正しい。業務用と家庭用のそれぞれのマーケットがあるのだから、いろいろなパターンが存在していてほしい。これって、賃貸建物にも言える事だと思うんです。

 

不動産的に置き換えると、「住宅用」と「事業用」そのどちらの要素も欲しいし、両方で使いたい。客人が生活臭を感じないように、倉庫的な空気感や隠れ家的な雰囲気があるといい。でもしっかり生活できる設備はほしい。

 

そんな秘密基地であり、アジトであり、俺の部屋と言える賃貸アパートが沖縄市美里に完成しました。

 

ディ・スペック

 

まだ更地の時から「面白い建物をつくるよ~。楽しみだな~。」と予告していたオーナーから、建物が出来たとの連絡をいただき、はりきって現地に向かうと、遠目に見てすぐにそれだとわかりました。

 

県道沿いに連立するヤシの木の間から見えるそれは、アパートらしからぬ独特な形のコンクリート打ち放し。斜めに立て込んだ壁がジグザグに並び、手前の緑地帯にある沖縄市のシンボルマークも手伝って、公共施設のようにも見えます。

 

早速、1LDKタイプのドアを開け、例によってぐるりとする間もなく、異変に気づきます。玄関扉はむしろ普通なのですが、玄関床が土間でもなく、タイル貼りでもなく、工事現場や仮設階段、側溝の蓋などで良く見かけるグレーチングが敷かれています。その日は、業者や役所の立ち入りもあった為、養生中かと思いきやこれが完成形。入って早々に男前な素材に迎えられ、ますます期待は高まります。

 

続いて、バスルームを見て衝撃です。両手をめいっぱい広げたら壁に触れる程の細長い空間に、青いモザイクタイルのバスタブが設置され、突き当りの壁が赤色にペイントされています。主役の主張する赤と青の両方に、一瞬目が眩みながらも、映画のセットのようなこのお風呂に浸かるとどんな感じだろうかと、興味をそそられます。当然にタイルの数だけ目地も多く、それこそお掃除は大変とは思いますが、これぞ秘密基地。アジト。改装屋敷。

 

そして、メインのLDKと洋室は大きな引き戸で間仕切れるつくり。開け放てば大きなワンルームにもなり、仕切れば1LDKになります。うん、確かにSOHOでも利用できるな、とようやく仕事モードにスイッチ。少しずつ心拍数が平常時に戻るのを感じながら、メモを取り、写真撮影を始めます。

 

室内壁はコンクリートに白の直ペイント。柱と梁と仕切り壁はコンクリート打ち放しで、白とグレーのツートーン。洋室と廊下の仕切りは、杉板を並べ立てて壁を造り、床も同じく杉板に塗装を施しただけのざっくり仕上げ。照明は、ソケットに差し込んだ大きめの裸電球そのまんまで、大きなクローゼットには特注サイズの扉が2枚。室内の建具はすべて既成品を使わず、床から天井までピッタリサイズの造作建具。開けた時の開放感と閉じた時の引き締まった感じが、より個性ある空間に仕立てています。

 

ディ・スペック

 

秘密基地感、倉庫風と言ってもきちんと生活は出来なきゃ困ると言うことで、キッチンはしっかりシステムキッチンを採用。コンロは当然のことながら、食器洗い乾燥機、吊り戸棚も昇降式になっています。よくあるデザイン性の高い賃貸住宅は、キッチンが簡易的であったり、オリジナルにこだわるが故に使い悪かったり、お手入れが大変だったりする事も多いのですが、これなら思い切り料理が出来ます。

 

ディ・スペック

 

ようやく心拍数は平常通りにおさまり、こなれた感じで洗面室のドアを開けると、再び心が高鳴りました。洗面台の正面で、あの強い赤壁と対面することになったのです。まさかこんなにコンパクトな空間で、ほの赤い空間に包まれるとは思ってもなく、うかつにも「うわ」と声を漏らしてしましました。洗面台も四角い陶器の深型で、よく理科室や実験用に使われるあのタイプ。いちいち秘密基地という文字が頭をよぎります。

 

ひと通り空間を体感したところで、もし私ならと、そこに身置いた自分を想像してみます。初対面の空間ではインテリアを配置して生活空間を造り上げてみる。自分に置き換えて暮らしてみる。それこそがこの仕事の楽しみであり、醍醐味でもあります。

 

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さて、次はお楽しみのメゾネットタイプの2LDK。ドアを開けてすぐに、三度目の心拍数上昇です。待っていました、床全面が土間仕上げです。これまで数多くの空間を見てきましたが、さすがに生活空間すべてが土間仕上げの賃貸物件は初です。

 

この賭けにも近い大胆すぎる仕様は、オーナーにとっては大きな決断であった事でしょう。しかしながら、隅々まで遊び心が満載です。楽しんで作り上げた様子がひしひしと伝わってきます。この勇気ある決断に、その心意気に男気を感じずにはいられません。

 

よくぞこういう空間を作って下さいました。私共ディ・スペックの大好物でございます。そして、沖縄不動産文庫を閲覧してくださるお客様の大好物に違いありません。

 

ディ・スペック

 

土間に黒の半ツヤの塗装仕上げ
ゴツゴツのコンクリートそのままの壁
フラットバーを縦に横に伸ばしたオープンな鉄の階段
無機質な空間に差し込むトップライトの優しい光
木の造作扉
モザイクタイルの浴槽と赤いペイントの壁
シンプルなスイッチプレート
杉板をドットに繰り抜いた玄関の目隠し板

 

 

素材を楽しむ。まさにそれが賃貸空間として形になりました。
住宅でありながら、事業用とも言えるこの空間はSOHOでもおすすめしています。

 

いろんな肴を食べた結果、たどり着いた最高の酒のつまみは、塩。
空間も同じく、突き詰めると素材にたどり着くのでしょう。

 

ディ・スペック

 

名づけて「ザ・俺の部屋」。
普通のお部屋に飽き飽きしていた。秘密基地の様な空間を探していた。余計な贅沢はいらない、けどオリジナルにこだわる方。我こそはこの空間にふさわしい。この空間が大好物。ピンときた。出会ってしまった。と思った方、是非手を上げて下さい。

 

予約制の見学会を行います。
男気あるオーナーが作った、男前空間に暮らしませんか?
「ザ・俺の部屋」見学会
2月21日(土)と22日(日)
11:00~16:00

 

お問い合せはメールにて info@dspec.jp まで
※詳しい場所や質問などもメールにてお問い合わせ下さい。

 

 

ディ・スペック株式会社
沖縄不動産文庫 Okinawa Real Estate Library
http://www.dspec.jp
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