» 「往来記 - 春」

写真・文 田原あゆみ

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

春はあけぼの。
冷たい空気の中に花の匂いが潜んでいて、何かがうごめいているのを感じます。

 

きっともうすぐソメイヨシノが開き始めるのでしょう。

 

春の初めに引っ越し、娘の卒業式、アレヤコレヤの要件と、春の展示会ラッシュで東京と沖縄を行ったり来たり。
年が明けてから何度飛行機に乗ったやら。

 

 

この記事も東京の夜景を見下ろしながら雲の上から書いています。

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

卒業式での一コマ。

 

小さな姪っ子が、高校を卒業する娘に宛てたお手紙付きのお菓子箱。
中には美味しいチョコケーキが入ってます。

 

「そつぎょうおめでとう。ひとりぐらしをするんだね。かれしができたの?たのしいの?」

 

声に出して従姉妹のお姉ちゃんに話しかけながら書いた手紙は、愛らしくて、とても詩的です。
見ていると、胸がきゅんとしてしまう。

 

きっと何より嬉しいプレゼント。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

この道を歩いて去っていった先輩たちは、また会おうね、と言って、会えなかったり、意外なところで思いがけない人との縁が結び直されたり。

 

遠かった人と近くなったり。
親しかったのに、遠くなったり。

 

それは寂しいことではなくて、自然なこと。
変化の中の必然の道。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

それぞれが見上げる希望の空へ飛んで行ってと、作られた後輩たちの気持ちは風船の形に込められた。

 

 

自由とはなんぞや?と、考える機会の多いある学校の卒業式は、卒業生がみんなで歌って歌って歌いまくって、花道を歩く。

 

みんなの飛んで行く希望が空を目指すのではなくて、この社会へ希望を持って降り立ったらいいな。
こんなに素直にまっすぐに歌を歌える若者たちがどうか社会で花開きますように、と。
そんな祈りが心に宿る。

 

見送りの春。

 

 

おめでとうの春。
さよならの春。
また会おう、さようなら。

 

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

帰ってきたらShoka:ではtrippenの企画展。

 

初めて会う人も、
会いたかった人も、

 

再会も、すれ違いも、
偶然ばったりもいろいろあって、みんなが芽吹いた春の道は、様々な出来事が目覚めて出会ってこんにちは。

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

初めて着た、いつもと違うラインの服にドキドキ。
服や小物で人はガラッと変わるもの。

 

どんな自分でいたいのか?
チャレンジするか、いつもがいいか?
私たちは選択することができるのだ。
自分らしさは自分で発見。

 

みんなで一緒にふふふ、とどら焼きを食べて、お茶をすすって近況報告。
甘い約束を交わして笑顔で、またね!

 

進行方向は様々だけど、あっちでもこっちでも道が交錯しあって、会釈をしてはまた次へ。

 

まだ肌寒いけれど、その先の春と初夏へ心は向かう。
素肌にサンダルの季節が来ることを自然に信じている私たちはしあわせだ。

 

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

彼女に会うと、よし!と思う。
すれ違いののちに、やっと会えたかわいい人。
赤い靴が似合って、自分のテイストで服を着崩す、パンチのある彼女。

 

コンポステーラを歩くと決めて、そのシンボルの帆立貝を足首にtattooしちゃった勢いも清々しい。

 

微笑ましい、いとしい青いホタテ。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

trippenのノマドという靴を履きこなして、いい表情に育てたその彼女は、定住時々移動のノマド族。

 

いい表情に育ったこの靴を見ていると、彼女の道が明るくたくましいものであるのを私は感じる。

 

そのノマドに乗って、さようなら。

 

 

久しぶりだね。
会えて嬉しいね。
またね。
ごきげんよう。

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

再会の東京は目白にて。
mon Sakataの坂田敏子さんの5年前の祈りにも似た時間に触れて心が震える。

 

日本が揺れたあの頃に、余震で揺れる部屋の中、糸を巻いてずっと鋏で切っていた。
怖くて、けれど糸をじっと切っていた。その糸くずを集めたコレクションを前に、8年かけて彼女の原点に触れたような気がして、胸が熱くなった。

 

その人になることや、完全に理解することはできないけれど、置かれた状況や、心中を思いやると、共感が生まれる。すると、どこかが重なったようなそんな気持ちになるのだ。

 

言葉にするのは容易ではないけれど、深まったものが私の中に種となっていつか芽吹き、根を張ってゆくのを待とう。

 

育つものを見守る、春。

 

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

 

ああ、様々な出会いと別れの春よ。
来週もまた東京へ。

 

そこにも再会の約束と、新たな出会いが待っている。
出会いの道は、いつかのさよならへと続く道。

 

挑戦と、足固めの春よ。

 

 

 

田原あゆみエッセイ

 

ささっと靴に足を入れ、しっかりと足を履き入れて、さあ行かん。
上ばかり見ると躓くからね、足元と前を見て。
私の目の前の人をちゃんと見つめて、あげられるものはギブアンドギブ。見返りを期待するとわたしゃくるしいよと、呪文を唱えて。

 

相手が差し出すものは、ありがとうと笑顔を添えて受け取って。
ありがとう、さようなら。あなたから受け取ったものは、また誰かに磨いて差し出します。

 

雨が降って、大地に沁みて、その大地から芽吹いたものが雨の恵みにありがとうと花を差し出すよ。
天はその花の無償に開いた美しさにに、ありがとうと光を送る。

 

田原あゆみエッセイ

 

 

 

私たちの歩く春の道が美しいものであふれますように。

 

 

 

 

 

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

田原あゆみエッセイ

 

trippen展 毎日を旅するように歩きたい
2016年3月5日(土)~3月21日(月) 12:30~19:00 (会期中火曜定休)

 

靴は私たちの船のようなもの。なかなかフィットしない船に乗ること 40 年あまり。その放浪の旅路の中で出会った職人魂を持つブランド trippen はドイツ国内の自社工場と、イタリアの限られた工房のみで 作られています。海外生産にしてコストを落とすと、国内の職人たち の技術が失われてしまい次世代に継承できず廃れていくことになるか らです。人間工学に基づいた履き心地の良さと、時代に左右されない デザイン、痛んだ時に修理ができる体制を持つ trippen の靴は、私の 暮らしに安心感をもたらしました。普段 Shoka: に無いデザインのも のもたくさんやってきます。2 足目、3 足目もお試しあれ。  
メンズもやってきます!

 

 

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 

 

 

 

暮らしを楽しむものとこと
Shoka:
http://shoka-wind.com/
沖縄市比屋根6-13-6
098-932-0791(火曜定休)
営業時間 12:30~19:00